0175・第二回公式イベント・昼休憩と荒らし
第3ウェーブ終了後に気付いた者達は人員配置を急いで変更しているが、全員が全員聞く訳じゃない。しかしながら流石は有名プロゲーマー集団<金剛騎士団>の<仁王>だ。ここに来てハッキリと宣言した。
それは、「この戦いに協力して勝とうとしない奴は、全員<最強勇者>と同じテロリストと見做す」そうハッキリと宣言したのだ。これは反発もあるけど上手いやり方だと思う。まず最強勇者どもの煽りを封じこめられる事。
扇動されて煽られたバカが出て防衛陣が瓦解、これは絶対に避けなければいけない事だ。拠点が壊れたところで生き残ればいいんだけど、拠点が無くなると生き残るのが難しくなる。なるべく生き残る為にも拠点は必要だ。
電脳テロリストとも言える最強勇者どもは拠点など気にしないだろう。奴等が目立ちたがりの勇者気取りならいいのだが、連中は完全な犯罪者集団だ。なので邪魔したり破壊したりが目的であり、勇者でも何でもない狡い連中でしかない。
奴等が拠点10の防衛戦に居るかもしれない事を印象付けつつ、この場の全員にイベントに反した事をすれば最強勇者の仲間として掲示板に名前を流すぞと脅しているんだ。だから上手い手だと思う。テロリストの仲間なんて致命的だからね。
面白半分でバカみたいな事をしようとしていた奴も、本物の最強勇者も封じこめられる。とはいえ、本物の最強勇者なら構わず行動を起こすだろうけど。それでも他の悪乗りしようとする奴等は牽制できるのだから、それで十分だ。
僕は皆の所に戻る事なく休憩し、第4ウェーブに備えている。おそらくだけど時間的に第4ウェーブが終われば一息吐けるだろう、お昼ぐらいになるだろうから。そう考えると短いウェーブは30分、長いウェーブは1時間なのかな?。
合間の休憩時間がどれくらいか分からないけど、大体そんな感じで推移していると思う。大凡の時間が分かれば心も楽になる。いつまで続けなければ分からないのは大変だけど、分かっていればペース配分も出来るからね。
「それにしても泥鰌が多いねえ! 皆も出来得る限り泥鰌は倒しておいてほしい。おそらくコイツは拠点を攻撃するタイプだから。僕達なら見つけられるけど、他の稀人もそうだとは限ってないからね」
「カタ!」 「ワカッタ!」 「ブル!」 「ク!」 「ゴン!」
「分かってるけど、こいつニョロニョロで太長くて面倒!!」 「仕方ありません、拠点が壊れると形勢が一気に傾きかねませんからね!」
皆も理解しているようだけど、拠点が失われたらどうなるか分からないんだよね。良くて敵の数が2倍になる。悪ければ絶対に勝てないボスが召喚される。そんな予測も立ててるんだよ。最強勇者どもがやらかすと、絶対に勝てないボスが暴れる恐れがあるんだ。
そうしない為にも仁王達には頑張ってもらいたいところだ。そんな事を考える余裕を持ちつつも、敵を倒し続けていく。【ダークウェーブ】も使い、出来得る限り撃ち漏らさず倒していくが、ふと気になったので鑑定する。
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<イベント蛙> 魔物 Lv11
イベント専用の蛙モンスター。おにぎりかパンか瓢箪をドロップする
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<イベント蜻蛉> 魔物 Lv11
イベント専用の蜻蛉モンスター。確率は低いがチャーハンやサンドイッチや瓢箪をドロップする
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<イベント泥鰌> 魔物 Lv11
イベント専用の泥鰌モンスター。拠点5以降にしか登場しない。確率は低いがパエリアやドリアをドロップする
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パエリアやドリアがドロップするとは思っていなかった。今のところは手に入ってないので残念だけど、そのうち手に入ると思う。しかし予想以上に蛙も蜻蛉も泥鰌も面倒臭い。沼地が整えられていたら、古い時代の田んぼの光景と誤解しそうだ。
結構なMPを消費して広範囲を攻撃していると、ようやく待望のウィンドウが出てきてくれた。
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第4ウェーブが終了しました。これよりPM1:00まで休憩となります。昼食などを終えてログインしておいて下さい。PM1:00までにログインが認められないと、強制的にアバターがワールドに戻されログインが不可能となりますのでご注意下さい
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「おつかれー。それにしても、ここまで大変だとは思わなかったよ。まさか泥鰌なんて厄介なモンスターが出てくるとかさ。拠点に移動するのがメインで、こっちに攻撃も仕掛けてこない。簡易砦の方はどうなってる?」
「おつかれー、コトブキ! 簡易砦なら資材を置く倉庫があるんだってよ。そこに入れたら自動でストックされて、一定時間毎に簡易砦が修復されるらしい。だから<大工>とか<木工師>とか<石工師>なんかは要らないんだと」
「そういう職業の人達は簡易砦の外側に色々作ってる。そこで防げれば簡易砦には攻撃されずに済むから。簡易砦の修復は正直に言って遅い。それは第1ウェーブの時に分かったって書き込みがあった」
「とりあえず皆は昼食とかに行ってきなよ。僕達が残っている方が安全だろうし」
「まあ、コトブキが残ってくれるのが一番安全だわな。すまねえけど頼む。沼の無い所まで戻ったら、速攻で昼食にしてログアウトだな」
僕達は沼地になっていない所まで戻ってくると、すぐに昼食を食べ始めた。とにかく急いで食べ終えて、飢餓度と渇水度をゼロにしておく。水はドロップの瓢箪の中に入っているので問題なし。ちなみに瓢箪だけは何処の方角のモンスターでもドロップするそうだ。
昼食を終えた後、皆はすぐにログアウトしていくのに、何故かトモエは残ったままだ。
「トモエ、何でログアウトしないの? 出来ればちゃんと準備してほしいんだけど?」
「私が料理出来ると思ってるの? レンジで温めるくらいしか出来ないわよ、知ってるでしょうに」
「いや、冷凍食品もあるだろうし、用意なんて簡単じゃん。絶対面倒臭がってるだけだよね? 皆、ユウヤ達を囲むように守ろうか、何か変なのが来る」
僕達は沼地の手前ギリギリで休んでいるんだけど、ヘラヘラした連中10人ぐらいがこっちにやってきた。いったい何の用かは知らないけど、碌な連中じゃなさそうだ。僕とトモエが警戒していると分かったのか、急に話し掛けてきた。
「やー、警戒させちゃった? 実はさ、オレ達の持ってる物と交換してほしくてさ。例えば、こういう物とか、さ!!」
キキンッ! という音と共に、相手が投げつけてきた針のような物を弾く。まさか弾かれるとは思ってなかったんだろう。驚いているようだが、僕はその隙に即座に前に出て喉を一突きし相手を殺す。
「なっ!? テ、テメェ! いきなガブェッ!?」
後ろから白い杭が飛んできて喉下に突き刺さった。仲間達も戦闘態勢に移行したので僕達に隙などない。そもそも警戒した段階で相手の鑑定などしているのだ。
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<ZZZZZZ> 稀人 Lv30
種族:人間
メイン職業:犯罪者
サブ職業:犯罪者
状態:死亡
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最強勇者のクランには入っていないみたいだ。ただし解散した可能性は高いと思う。あんな頭の悪いクラン名を名乗っている時点で論外だし、逮捕者が出た時点でこういうバカは逃げる。
それでもクランから逃げただけで行為は繰り返すんだから、こういう奴は根っからの犯罪者だよ。まともな人間じゃないね。




