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0017・プレイヤーマーケットと再びゼット町へ




 2000年 7月26日 水曜日 AM8:12



 「さて、朝のやるべき事は全て終えたし、さっさとログインしようっと。昨日のウサギ耳をマーケットに流さないといけないし」



 ようやく全ての雑事を終えてログインするも、シズは既にログインしているので五月蝿そう。それはともかく師匠の家のソファーに座り、目の前のウィンドウを操作していく。その時、師匠が外から入ってきた。



 「ん? コトブキ、起きたか………なんじゃその板は? 空中に浮いておるが……ぷれいやー、まーけっと? ……マーケット、つまり市場か? 訳が分からんのう」


 「えっと、師匠はこの画面が見えてるんですね? まあ、良いのかな? プレイヤーとは稀人の事です。つまり稀人専用のマーケットとなります。姉に昨日のウサ耳を売って欲しいと頼まれましてね」


 「それで、稀人専用の市場を使うと……? 意味が分からん、その<神の贈り物>をどうするんじゃ? コトブキが持っておるのだから、どうにもなるまい。貨幣と物品を交換するから売買が成立するのじゃぞ?」


 「よし、登録完了。で、このウサ耳カチューシャを……っと」



 僕は売買登録の画面を開き、ウインドウにウサ耳カチューシャを放り込む。するとウインドウ内に入り込み、僕の売買リストの一番上に表示された。師匠が「おお!」と言っているが、それは無視して操作する。


 このプレイヤーマーケットでは、ゲーム中の平均価格に合わせて自動的に値段が決まる仕様になっている。なので極端に安くとか、極端に高く設定したりなどは出来ない。これはプレイヤーマーケットを倉庫として使わせない為だそうだ。


 登録しているだけで誰の手にも渡らず、極端な高値にすれば誰も買えない。そういった倉庫とされるとインベントリが制限されている意味が無い為、倉庫代わりは不可能だ。だが1時間だけ売る相手を指定する機能が付いている。これを使えば1時間だけは可能となる。相手が購入しなければ。


 <幸運のウサギ耳>は……ゲッ! 24万デルぅ!? ……たっか! 超たっか!! えっ、こんな値段するアイテムなの? マジで??。



 「何やら妙に驚いているようじゃが、24万ぽっちならオークションでは即座に超えるぞ? <幸運のウサギ耳>は見た目はアレじゃが、着けている者に幸運を齎(もたら)すと言われておる。子供に着けさせたりする貴族も多いからのう」


 「ああ、貴族ならお金持ってそうですもんね。流石に姉はそんなお金持ってないので買えませんね。ちょっと話しておきます」


 『トモエ、聞こえる? 今ウサ耳カチューシャ出したんだけど、値段が24万デルだった。買える?』


 『はあ? 24万なんて無理に決まってるでしょ! もっと安くしなさいよ!!』


 『レトロワールドの仕様で安く出来ないの忘れたの? こっちからは値段を決められないんだから、どうする事もできないよ。大人しく諦めようか? 今回は残念でしたって事で』


 『むぅ!! 仕方ないわね、今回は許してあげるわよ。ふん!!』


 『どこのツンデレキャラの真似をしてるのかサッパリ分からないから切るよ。じゃ』


 「どうやら姉は買えなかったみたいなので、売買をキャンセルします。取り出すだけでキャ……何してるんですか?」


 「うん? そなたの頭に着けただけじゃ。別に似合ってない訳ではないのじゃから、コレで良いじゃろ。そもそも幸運になって損などあるまい? 恥ずかしさなど気にする事もあるまいて、愚かな連中など鼻で笑えばよかろう」


 「いや、まあそうかもしれませんけど……。とりあえず今の内に使える物を出しとくか」



 このゲーム、装備画面で装備しなくても、身に着けた段階で装備した事になってるんだよなー。この辺りはありがたいけど、勝手に着けられても装備になるんだ。気をつけないと呪いの装備とか無理矢理に着けられそう。


 とりあえず鉄のガントレットと鉄のグリーブを外に出してセナに渡す。鉄の胸当ては重いから僕はパス、ファルも重いから着けず。オッサン盗賊が着けていた革鎧を身に着けて、ファルにも革鎧を渡す。


 僕は鉄の槍を持つが、他に使えそうな武器は無い。セナは殴ったり蹴ったりするのが気に入ったらしいので、格闘武器以外は持つ気が無いみたいだ。もう一度町に行って、今度は装備を整えてこよう。



 「という事で師匠、もう一度町に行って装備品を買ってきます。昨日は帰る途中で盗賊に襲われたので、しっかり買い物するような時間もありませんでしたし、今日改めてしっかり買ってきますよ」


 「うむ。ただしメンテナンスの事もあるからの、余っておる短剣や剣などは持っておいた方が良いかもしれんぞ? 武器もメインとサブで使い分けた方が良い場合もある。色々考えて選べ」


 「はい、分かりました」



 確かに槍一本だと壊れた時が怖いな。そんな事を考えつつ外に出ると、師匠から「使わないなら渡せ」と言われたので、石と木の槍を師匠に渡す。すると粉々に破壊されてしまった。何でも錬金術の一つで【粉砕】というスキルらしい。


 その後は歩きだしたセナを止め、革鎧を着けさせたら歩いて行く。鉄の鎧と鉄の斧は要らないから売るとして。残りの剣と短剣はどうしようかな? 僕は剣でも短剣でも使えるけど、ファルの事を考えると僕が短剣を使った方がいいよなあ。


 おっと、町に行く道なのにモンスターが出てきた。昨日出なかったのは偶然だったんだろう。とにか……あーあー、容赦ないなーセナは。ねえ、ファル?。



 「カタ」



 ゾンビが出てきたんだけど、早速右足のグリーブで蹴り飛ばして倒したら馬乗りになり、後はガントレットごとトンファーでタコ殴りにして倒した。マウンティングからの容赦ないラッシュだったね。


 腐った肉も出たし進もう。幸先いいけど、もしかして<幸運のウサギ耳>のおかげかな? まあ、微々たる効果しかないとは思うけどね。レアアイテムも出る時は何故か異様に出たりするし。


 そんな事を考えつつ町への道を歩いていると、後ろから豪華な馬車が来たので道を外れる。いちいち絡まれたり文句を言われるのは鬱陶しい。それなりに離れたのが良かったのだろう、何も言われないまま馬車は通り過ぎていった。


 黒い馬と黒い鎧の騎士が護衛してる馬車であり、実にファンタジーな光景だ。馬車自体は普通だったけど、牽いているのは黒い馬で足先が無かったし、どう考えても偉い貴族だよねえ。スカルモンド伯爵とかいう貴族の可能性もあるし、嫌な予感がするなあ。回れ右して帰りたいよ。


 とはいえ、僕には全く関係ない可能性もあるので、ここは自意識過剰という事にしておこう。そんな事を考えつつ、気付いていないネズミに石を投げると、再びネズミの尻尾が出た。……どうなってんの?。


 近付いてインベントリに収納すると、<ネズミの器用な尻尾>と表示されている。これってもしかして器用が上昇する感じ? 着けなきゃ損だけど……何処の部位に着けるんだろう?


 ……ああ、アクセ枠に入るんだ。良かったー。<幸運のウサギ耳>は頭装備だから、兜なんかと重複するんだよな。今はいいけど、優秀な頭装備が出てきたら悩むんだろう。とはいえ、我慢してでも幸運系を着けそうな気もするけどね。


 一度装備したら諦められたし、今度は幸運という性能を捨てるのは難しいからさ。ドロップへの影響は大きいんだ、ゲーマーなら誰でもそうだけど。


 おっと昨日も居た門番の人だけど……こっちを見て笑ってる? それは横に置いとくとして、さっきの馬車は町を通り過ぎたか、町にもう入った感じだね。あの馬車と関わりたくないから、笑われる方がマシかな。


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