0159・運営さん達11
2000年 9月10日 日曜日
『ブラッディアの女王マリアトゥーラがプレイヤー<コトブキ><トモエ><ナツ><イル>に対し、魔力金属と属性金属の情報を話しました』
「ああ、アレかぁ……ちょっと早いけど、特に問題は無いね。魔力金属辺りから値段が跳ね上がるし、仮にプレイヤーマーケットに流しても次の目標が周知されるだけでしかない。それならそれで騒ぐぐらいだろう」
『現在のスキルレベルでは頑張っても品質は1か2にしかなりません。これは【精密魔力操作】を持つプレイヤー<コトブキ>の能力でテストしてもです』
「そういや開発が彼の能力で調査できるようにしたんだっけ? そこまで特別視しなけりゃいけない彼はやっぱり凄いねー。他の一般プレイヤーだけじゃなく、プロゲーマーとすら隔絶した差があるから仕方ないか。ま、一部だけど」
『自身に不利な状況を作られた場合の勝率も、全プレイヤーの中で<コトブキ>が一番高いというシミュレーション結果が出ています。こと戦う事に関しての能力は突出しています』
「ああいう人物って勘も鋭いんだよ。そういう意味でも彼は最後までしぶとく生き残るだろうと思う、それでも飽和攻撃には勝てないだろうけども。問題は一人のプレイヤーに対してそこまでしないと勝てないという現実なんだけどさ」
『<破滅のエンリエッタ>が転移魔法陣を<豪雪山>に繋いだのを、プレイヤー<コトブキ><トモエ><ナツ><イル>に伝えました。少々早いと思われます』
『別に良かろうが。【精密魔力操作】も持っておるのじゃし、魔物が強い所にブチ込んだ方が良い。どのみちレベルは上がらんのだから問題ないうえ、<豪雪山>の素材で色々するじゃろ。まだレベルキャップは外れぬのであろう?』
「まだ無理だね。限界レベルに到達したのが半数を超えてからと決まってるし、経験値の持ち越しは無しと決まってる。代わりにアバターデータを含めた隠しパラメータは限界を設定してないけど」
『魔物の討伐経験と個体の討伐経験か。更に各職業の経験に、スキルの隠しパラメータ。途方もないものが隠されておるのう。これを隠したままとは酷い奴等じゃ』
「言い方。ついでに言うと酷くはないさ、色々なものを経験すればいいだけだよ。このバカなプロゲーマー君達のように、脳死プレイをするのも本人の自由なんだからねえ。何故か<般若衆>は色んな事してるけどさ」
『クラン<般若衆>はイベント時に情けない姿を晒さない為に、様々な事をして強化を図っています。ファンはストイックだと応援していますが、クラン<般若衆>はイベント時にプレイヤー<コトブキ>の敵に回る予定のようです』
『コトブキを倒す為にかの?』
『クラン<般若衆>はプレイヤー<コトブキ>に殺されたい者達の集まりです。イベント時にプレイヤー<コトブキ>と戦う為に鍛えており、戦って倒される為に様々な強化方法を探しています』
「それも自由だけどね……」
『推しの養分になって、私は推しと一体化する。などと訳の分からない事を掲示板で話しています』
「『………』」
…
……
………
『現在プレイヤー<コトブキ>一行はバイゼル山を下山中です。特に迷う地形でもない為、麓の町ルタースには問題なく着くでしょう』
「まあ森は一本道なうえ、それなりに広い道になってるからねえ。リアル過ぎて道が分からないとか、ゲームの意味ないし。最近それで炎上してるゲームもあったけど、何でそんな事をするのやら? 理解に苦しむよ」
『プレイヤー<トモエ>が<ミニウルフ>を支配しました』
「<ブラックオウル>に必死だったけど、アレはサモナーしか無理だからなぁ。っていうかテイマー、サモナー、魔隷師でバッティングしてるんだよね。ネクロマンサーだけが別枠で、そもそもアンデッドを仲間に出来るのはネクロマンサーだけだし」
『プレイヤー<コトブキ>の召喚モンスター<セナ>が出した<神の贈り物>を。何故かプレイヤー<トモエ><ナツ><イル>が取り合っています』
「あれは放っておいていい。それにしても見た目装備は強いねえ。レアアイテムの出現率が通常状態まで落ちてるっていうのに、それでもこうやって出るんだから、幸運装備は仕事をしてるみたいだ」
『プレイヤー<コトブキ>の使い魔ラスティアとキャスティが、大天使と大悪魔ならびにプラネット・コアの事を話しています』
「それに関しては詳しく調べ上げれば見つかるからどうでもいいね。大きな町か各国の首都にある図書館で調べれば分かるし。実際、検証班の一部は知っている事だよ。何故か彼女達は掲示板に書いてないけど」
…
……
………
『プレイヤー<コトブキ>一行はバウンドベアの毛皮を購入したようです』
「バウンド……あー、高いけど<耐寒(大)>が付いてるヤツね。着ぐるみだから在庫処理なのかな? いや、<豪雪山>は厳しいからこれぐらいは必要か」
『プレイヤー<コトブキ>が桃を発見しました。仙桃にする可能性が高いと思われます』
「それは構わない。おそらく彼なら【魔闘仙】を秘匿する方に動くだろうから、プレイヤーマーケットには流さないよ。流しても良い事ないしね」
『プレイヤー<ユウヤ>にウルフマンの酔っ払いが絡みました。<不沈のシャルロット>の弟子イベントが開始されます。翌日に小規模のスタンピードが発生、戦闘に巻き込まれる事が確定しました』
「あらら、御愁傷様。さて、彼らは明日生き残れるのかな?」
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2000年 9月11日 月曜日
『プレイヤー<コトブキ>はネクロマンサーである為、最前線に行かされます。NPC<ドーディオ>の逆恨みイベントが発生しない可能性がありますが……』
「放っとけばいいわよ。別にアレは発生しようがしまいが結果としては変わらないしね。逆恨みイベントが難癖イベントになって、結局町に居られなくなるのは変わらないし。この場合、狩人ギルドのギルド長も断罪されるけど、居ても居なくてもいいキャラだからねえ」
『プレイヤー<コトブキ>がスタンピードの最前線に突撃しました』
「自分から突っ込んで行くとか、本当にもう。普通は正気の沙汰じゃないんだけども、彼だと普通の事にしかならないかー……」
…
……
………
『スタンピードのボスであるサイクロプスの脛を殴って倒した後、股間に振り下ろしました』
「相変わらずだな、彼は。サイクロプス相手でもやる事は変わらんか。容赦の欠片も無く攻撃し、憤怒状態に移行したにも関わらず捌いてるな。召喚モンスターに任せて、彼は回避盾か」
「おお! 足の腱を切った! もしかしたらレアな<サイクロプスの腱>を入手するかもな。そしてやられにくるNPCのバカ夫婦……」
『プレイヤー<コトブキ>の投げた石球が目に直撃しました。隙を突いた形です』
「やっぱり彼は見逃さなかったか。そして暴れまわ、あーあー……鋼鉄の弓で撃ち込んだのか、アレは酷い。サイクロプスも悶絶して当然だろう。そして全員で一斉攻撃か。終わったな」
…
……
………
「ヤンキー君がナイフで攻撃したが、あんなのあったか?」
『プレイヤー<コトブキ>に対しては問題ない為、こちらの権限で実行しました。もちろんプレイヤー<コトブキ>を傷付ける気は一切ありません』
「まあ、事実セントラルが制御していたんだから何の問題もないだろうが……ああ、確実にヤンキー君を終わらせる為か。ここで不要になるNPCだから、絶対にそうなるように仕向けたんだな」
…
……
………
『プレイヤー<コトブキ>が登録されていない武器を作り始めたので、急遽似たような武器を参考にして各種の数値を決めました』
「まさかサイクロプスの腱に皮を巻いて強度を上げ、腱も先に少し分離しておいて弦にするとは……。ちょっとあの弓、強力過ぎない? 大丈夫?」
「品質が低いからそこまで上がってないのと、和弓だから大弓に分類されるしあんな物よ。西洋のロングボウより大きいうえ矢も太くて長いの。アレぐらいの攻撃力と破壊力にしないとバランスとれないわ」
「成る程ねー」




