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0145・コタロウ




 順調に道っぽい所を進んで行くと、確かに森っぽい所に差しかかってきた。とはいえ、荷車どころか馬車が通れるだけの範囲の土が剥きだしになっており、誰かが頻繁に通ってるのかと思う程だ。



 「これ、誰か頻繁に通ってんのか、もしくは誰かが整地してる? それぐらい綺麗な道幅に整えられてるんだけど、どうなってんだ?」


 「森の中を続く小道だけど、綺麗な小道になって続いている。人力でコレをするのは大変だから、もしかして魔法? 私達が知らない魔法があるのかもしれない。例えば、そう、土木魔法とか?」


 「それって【土魔法】に分類されると思うよ? それに【スモールピット】で穴を空けてから、雑草だけ取って埋めれば良いんじゃないかな? それだけでも綺麗な道になると思うけど……」


 「まあ、とにかく進んでいきましょうよ。誰が整えていようと楽で助かる事だけは事実なんだしさ。誰が整えてるかは分からないんだし、考えるだけ無駄よ」



 森の小道なんだけど左右は完全に森だから、どんな魔物が飛び出してくるか分からない。なので【精密魔力感知・下級】と【練気感知・下級】で敵を見逃さないように進んで行く。流石にカメレマンのような奴は多くないとは思うけど……。



 ―――――――――――――――


 <ブラックオウル> 魔物 Lv11


 闇夜に紛れる梟の魔物。ただし悪魔の星は常に薄暗いだけなので、そこまで隠れる事は得意ではない。代わりに無音で飛行する厄介な魔物。別名「森の暗殺者」と呼ばれる


 ―――――――――――――――



 最初に出てきたのは何とも厄介な魔物だった。何が厄介かと言えば……。



 「【ドミネイト】! 【ドミネイト】! 【ドミネイト】ーーー!!!」



 トモエが暴走しているからだ。僕が襲ってきたブラックオウルを棒ではたき落とした後、必死になってトモエが支配しようとしてるんだけど、一向に上手くいかない。ここまで駄目なら<魔隷師>には無理なんじゃないかなぁ? 言っても聞かなさそうだけど。



 「トモエさー、多分<魔隷師>だと無理なんだと思うよ? 【チャーム】も効いてるのに、それでも【ドミネイト】に失敗してるみたいだしさ。多分だけど<魔隷師>だと駄目なタイプの魔物だよ」


 「【ドミネイト】! 【ドミネイト】! 何でよーー! 成功しなさいよーー!!!」



 何ていうか魂からの叫びだけど、無理なものは無理だよ。そもそもギンを仲間に出来るのは<魔隷師>だけみたいだし、それぞれの職業で決められてる以上は諦めようか。梟も確かに毛がモコモコしてるけどさ。


 流石にMPが無くなった段階でトモエも諦めた。なので押さえつけていたユウヤが倒したんだけど、トモエは魂が抜けたような顔をしている。よほど梟が欲しかったんだろうけど、大人しく諦めなさい。そう言って歩かせる。


 とにかく歩いてついてきてくれれば良いので森の小道を歩いていると、再び新たな魔物が現れた。



 ―――――――――――――――


 <ミニウルフ> 魔物 Lv4


 小型のウルフ種。室内犬と同じ程度の大きさでしかないが立派な狼である。身を隠しながら獲物を追跡し、素早く牙を突き立てる。小さくとも立派なハンターであり、侮ってはいけない


 ―――――――――――――――



 このミニウルフは素早さと小ささを活かした攻撃をしてきたが、ユウヤの盾に阻まれた挙句、僕に押さえ込まれている。体が小さいだけにスピードは厄介だが、パワーはそこまででもない。



 「【ドミネイト】」


 「ウォフ」


 「一発かよ! さっきの梟は本当に駄目だったんだな。あそこまで連発して駄目で、今回は何の問題もなく一発OKとか笑うわ」


 「ふぉおーーっ!! この毛、思ってるより柔らかーーい!!」


 「あーあー、さっきまでの魂の抜けかかった顔と真逆じゃん。相変わらずだけど、この落差は何とかしてほしいよ。空気が悪い時はとことん悪いからさ」


 「仕方ない。ある意味でいつも全力だからああなる。もふもふの女王は伊達じゃない。あそこまでじゃないと、そう呼ばれたりしないし有名にもならない」


 「とりあえず先へ進もうよ、嬉しいのは分かったから……ね? トモエー、話を聞いてー」


 「あー、小型で可愛いーーー!! 超可愛いーー!!」


 「グル………」 「アキラメナサイ、ソウイウヒトデス」 「メー」 「ニャー」



 何だろう。色々な意味で大変そうだなー、と思う。僕の召喚モンスター達は普通………普通だよね? 流石に僕はトモエの様なおかしい事はしないから、召喚モンスター達も変な影響は受けてない筈だけど。


 うん。とりあえずはトモエを歩かせよう。このままだと日が暮れるまで可愛がってるよ。っと、流石にミニウルフが逃げたらしい。全身をワシャワシャされまくってたけど、やっぱり迷惑だったんだね。



 「むー、コタロウめ、さっさと逃げるとは……やりおる!」


 「誰目線で喋ってるのさ。それより名前がコタロウっていうのもどうなの? もしかして風魔小太郎の事? 本来は風間一族だったとかも言われてる人物だけど、それはともかく………うん、雄みたいだね」


 「今回はちゃんと調べてから名前を付けたからね。ハンゾウと迷ったけど、ここはコタロウで行く事に決めたのよ!」


 「そんな「どうよ!」って感じで言う事か? 後コタロウが微妙な顔で見てきてるぞ。相変わらずだけど可愛がりすぎなんだよな。リアルタイプのゲームだと嫌われるから止めた方がいいのに、何故か絶対に止めないよなぁ」


 「私はもふもふの女王と言われるぐらい、愛を振り撒くからね!」


 「だから嫌われるって理解しようか? 一方的に押し付ける愛はストーカーと変わらないからね? そこんところをもうちょっと自覚してくれないと、本当に嫌われて居なくなるよ?」


 「………我慢する」



 何でそこまで渋々なのか理解に苦しむけど、そろそろ本当に進もうか。こんな事してたら日が暮れても町に着かないよ。


 トモエを急かす形で再び歩き始め、3度目のミニウルフを倒した際にレアアイテムが出現した。手に入れたのはセナなので僕の物なんだけど、女性3人からの無言の威圧が凄い。


 ―――――――――――――――


 <頭防具> ウルフイヤー 品質:10 レア度:9 耐久240


 狼の毛皮のようなシンプルなカチューシャ。装備すると狼の耳が頭から生える。本来の耳もあるので若干おかしな事になるものの、そういう装備品である。音の方向が分かるようになるのと、若干ながら耳が良くなる効果を持つ。しかし、防御力は無い


 ―――――――――――――――



 このレアアイテム、つまり<神の贈り物>を出したのはセナなんだけど、セナは<幸運のウサギ耳>を持っているので興味が無いみたい。召喚主である僕に権利があるんだろうけど、僕はあの3人の圧力に逆らうのは無理だ。


 これでプレイヤーマーケットに流そうものなら、リアルで何をされるか分からない。ついでに貸しにしておいた方が得だという打算もある。なので誰か一人に渡すのは構わないんだけど、誰かを決めるのはイヤだ。怖すぎる。



 「ここは姉である私に権利があると思わない? コタロウとお揃いになる為にもさー」


 「ちょっと何言ってるか分からない。寝言は寝てから言った方がいい」


 「キャットマンのイルには要らないだろうし、あの狼の耳が似合うのは私だけだと思うよ? 2人はちょっと……」


 「「………」」



 男2人は入れません。唯一助かってるのは、激しくやりあっていても喧嘩には発展しない事だ。ナツはともかくとして、トモエとイルは何回も似たような事があったからね。


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