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0143・尋問の結果は?




 ナツとイルから珍獣扱いっぽい感じを受けたものの、僕はスルーして食堂に向かう。食堂には既に師匠とトモエと、何故かマリアさんが居た。昨日カメレマンを引き渡したけど、まだ師匠の家に居たんだね。



 「コトブキは勘違いしておるようだが、マリアは朝から来ただけじゃぞ。一応分かった事の中で妾達に教えてもよい事を話しに来ただけであろう。妾も何の用か聞いておらんからな」


 「<破滅>殿が言っている用件で正しいんだけど、そこまで深いというか、大きな事は無かったわ。いちいち取捨選択しなきゃいけない情報でもなかったし。一つ目はドゥエルト町の話だけど、コレはバカバカしいものでしかなかったわ」


 「ふむ、呆れておるところを見るに、欲を掻いたマヌケが起こしたか?」


 「ええ、実に下らない事でね。簡単に言うと、欲を掻いた兵士長一派が更なる賄賂を要求、それを薬師ギルドのギルド長が突っぱねた。そしてそれを聞きつけた副ギルド長が兵士長一派に近付いた。コレが真相だったわ」


 「実に下らんのう。ギルド長は際限なく欲を掻いてくるので突っぱねた、副ギルド長はギルド長の椅子が欲しかった。兵士長一派は更に都合の良い駒に乗り換えようとした。その結果が事件の真相か……。どいつもこいつも碌な者ではない」


 「そもそも薬師ギルドが不当に薬の値段を上げているのが大問題なのにねえ? まるで副ギルド長に変えれば全て上手くいくかの様に夢想してるんだから、呆れるしかないわ。あまりにも頭が悪過ぎるけど、薬師ギルドという独立組織だから手がつけられなかっただけね」


 「しかし薬師ギルドだけではなく、体制側の兵士長という役職の者まで絡んでおったのだぞ。それに関してはどうする気じゃ?」


 「それは簡単よ、私が書いた書簡を両方に宛てて送っておいたから。ちゃんと手紙には「すぐに正常化しないと潰す」と書いてあるしね」


 「「「「………」」」」



 まさかの力技で解決するらしい。とはいえ、女王と狂信者に目をつけられたとなれば、即刻すべてをただすだろう。そうしないと自分が消えているかもしれないんだ。あまりにも怖ろしすぎて、他に道が無い。ある意味で、正しく悪魔の星の国家だと思う。



 「それで、カメレマンの方はどうなのだ? あちらは【魅了の魔眼】を使ったのだから判明しておるであろう。ああ、国家として言えぬ事は言うなよ、いちいち巻き込まれる気は無いでな」


 「う~ん、どうしよっかなー?」


 「………」


 「ゴメン、うそうそ。怖いからその顔やめて、洒落にならないから。その感情の見えない仮面みたいな顔を久しぶりに見たけど、怖すぎるから本当にやめてね?」


 「それはよいから、はよう言え」


 「ええ。カメレマンに関しては、目的はブルーサーペントの毒殺だったわ。ゼット町は有名な町でもあるんだけど、良質なオーダーメイドの武具を作る町なのよ。その最大の理由が、町に続く水源の湖にブルーサーペントが住み着いているから」


 「良質な魔力金属を作るにも、その武具を作るにも、大量に魔力の篭もった水が要る。あそこの湖はレベルの高いブルーサーペントが住み着いており、そやつから魔力が滲み出ておるからの。それ故に良質な魔力金属を扱える」


 「そうなんですか? ゼット町に行った時に魔力金属なんて見ませんでしたけど……」


 「先ほど言うておったであろう、オーダーメイドじゃと。そもそも表では販売しておらん。それほどに高価な物じゃからのう。それに、まだお主らには早い。もっと実力が上がってからじゃ。そもそも魔力金属にも様々な種類があるでのう」


 「赤系、青系、緑系、黄系、白系、黒系。それぞれ魔銅、魔鉄、魔銀、魔金だけど、色によって様々に分かれるの。更に上の伝説級金属になると錬金術師しか扱えないのよねえ。コトブキ君には期待してるわ。誰かさんは面倒になって放り出したし」


 「当たり前じゃろうが。連日連夜、阿呆どもが妾の所に押しかけてきたんじゃぞ、いい加減にウンザリするわ。だからこそブラッディアに来たのだし、<屍人の森>に家を構えて<薬師>を始めたのだ」


 「伝説級金属ってそんなに凄いんですか?」


 「そうよ。ただし伝説級の金属を作り出せるのは錬金術師だけだし、それを使って最高品質の武具を作り出せるのは鍛冶師だけよ。それぞれが最高傑作を作らないと、最高の武具にはならないの。これは細工物でも変わらないわ」


 「そういえばトモエの細工物ってどうなの? 売れてる? 僕は一度も見た事もないし、聞いた事もないけど」


 「アクセとしては売れてるかな? シャープホーンバッファローの角を使った物は、突きの威力が少し上がるって説明は出たけどね。それ以外は見た目だけのアクセしか無理。今のところは」


 「細工も結構大変みたいだね、それでも見た目で買う人は居るだろうけどさ」


 「そうね、思っているよりは売れてる感じ? 鉄のチェーンの品質が良いからか値段が高いのよね。最近は青銅のチェーンでも良いかなって思ってるけど、難しいところかしら? 効果がハッキリと分からないのが地味に辛い」


 「もっと色々な所で素材を手に入れたら良いんじゃないかな? 今行けるなかで一番魔物が強い所に行っても、良い素材かどうかは別の話だし。それに山の方でも色々探した方がいいかも」


 「そういえば山で思い出したが、シャルロットが支払ってきたからの、もう1つ転移陣を増やしてあるぞ。山脈の東側、ブラッディアの領内と言える場所じゃが、そこにも鉱床があるでな。そこに繋いであるので行くなら好きにせよ。ただし魔物は相当強い、それは覚悟しておけ」


 「「「「………」」」」


 「そんなに強いの? ウチに雪崩れ込んできたりとか……無いわよね?」


 「お主らなら鎧袖一触で済むわ。ただしコトブキ達のレベルだと、ちとキツい。フリーズベアや、スマッシュタイガーが出る。後は厄介なアイススライムとフローズンエレメンタルかの」


 「もしかして万年雪の雪山? あの<豪雪山>と繋いだの?」


 「うむ。あそこの鉱床では<水精石>が採れる。アレは青の魔力金属を作る為に必要な素材じゃからな。繋いでおいて悪い事はない」


 「<豪雪山>に<水精石>があったなんて……って、ちょっと待って。ちゃんと防寒具を買っていかないと凍死するじゃないの。せめてその説明くらいはしたら?」


 「なに、心配せんでも行ったらすぐ帰ってくるじゃろ。向こうは体の芯まで凍るような寒さ、とてもではないが今の薄着では耐えられん。むしろ自分の体で感じた方が早い」


 「結構なスパルタねえ。まあ早いと言えば早いでしょうけど、教えてあげても良いとも思うわよ? それにしても防寒具ねえ……買うならそれなりの場所に行かないと買えないけど、どうするつもり?」


 「自分で見つけてくるに決まっておろう。ブラッディアをウロウロして探してくればよい。流石に<豪雪山>の麓まで行けば売っておるじゃろ」


 「それ、ウチの国の西の端ギリギリなんだけど? そんな事するぐらいなら、バイゼル山を下りた方が早いでしょうに。麓に町でもある筈だから、そこで買ってくればいいのよ」


 「こら、マリア。答えを簡単に教えるでない」


 「どうせ、そのシャルロット? という者が教えるでしょうに。だったら私が先に教えても変わらないわよ。大した違いなんて無いでしょう」


 「まったく、コヤツときたら……まあ、よい。そういう事じゃ、麓の町に行って防寒具を買ってこい。ついでにシャルロットの弟子も連れて行けば良かろう。向こうで一泊して帰ってくる事になるがの」



 どうやらバイゼル山を下りるのも、そう簡単ではないらしいね。


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