0142・運営さん達09
2000年 8月29日 火曜日
『プレイヤー<コトブキ>が打刀をプレイヤーマーケットに流しました。レア度が1である事に気付いたと思われます』
「やっと刀を作る人物が現れたかー。それもまた彼だというところが何とも言えないところね。今のところ金属での刀の製作は誰も上手くいってないから仕方ないけど。少なくとも目釘や鎬など、刀と定義する為には必要な部品があるからねぇ」
『刀身を作っただけでは剣としか表示されません。これは開発部が意図的に行った事であり、それ故に作成出来なければスローニンの町に誰かが到達するまで刀が出回らない筈でしたが……』
「相変わらずだけど、刀は細部まで拘る癖に、町の名前には全く拘りが無いのよねー。ウチの開発は。国名もタチバナの国だし、元ネタは源平藤橘の橘でしょ。一番先に失われた名字だからって、あっさり使うってのもどうなのかしら?」
『毎日お菓子を渡しているからか、【純潔】の天使キャスティの好感度も非常に高くなっています。【色欲】のラスティアの好感度も高い為、かなりの速度で好感度が上昇していますが?』
「それは大丈夫よ。大型アップデート時に限界の数値を決めたから、それ以上には上がらないわ。それでも普通なら達成は無理な数字だけど、彼なら達成するかもね。開発もここまで上げるとは思わなかったから、冗談で設定したらしいけど」
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2000年 8月31日 木曜日
『プレイヤー<コトブキ>が<破滅のエンリエッタ>の薬を届けるイベントが開始されました』
「おっ、あのイベントが開始されたか。大したイベントじゃないけど、少しの間勾留されてしまうイベントだ。<破滅>の弟子になったプレイヤーにとっては不幸だけど、そもそも<破滅>の弟子は優遇されるポジションだからねえ。時間を無駄にするのは仕方ない」
『<破滅のエンリエッタ>は、プレイヤー<コトブキ>を碌に鍛えも導きもしていません』
『別にせずとも良かろうが! 自分で勝手に強くなるのだから最低限でよいわ。そもそも今以上に強くしてどうするのだ?』
「まさか<破滅>の正論を聞く事になろうとは思わなかったけど、言っている事は正しい。レベルキャップを含めて仕方なく止めてるけど、彼の場合は敵を強くしても戦えてしまうから、相当レベルが上げられる可能性があるんだよねぇ。装備品の問題で限度はあるだろうけど」
『本来は魔力金属の装備が必要な魔物まで倒しかねんぞ。流石は妾のオリジナルというしかあるまい。βの時以上に色々なものがおかしい数値になっておる。更新はしたが思わず弄りたくなった程よ』
「やめてね? こっちが弄ったら唯の改造になっちゃうからさ、マジでやめてくれる?」
『そもそもセントラルが見張っておるから出来んわ。あくまでもプレイヤーが出来る範囲で、となっとるからこそのアバターデータじゃなからな。とはいえ、コトブキのアバターデータは色々おかし過ぎる』
「まあ、あの<BUSHIDO>愛好家だからねえ、普通の人とは違うんだから考えても無駄さ。それよりも、このイベントが始まるという事は一連の流れが開始されるけど大丈夫かい?」
『特には問題なかろう。そもそもイベントの流れで妾がする事など殆どない故にな。コトブキは……ハッキリ言って心配するだけ無駄じゃろうの』
「どうせ彼がメチャクチャするだけだろうし、今はカメレマンが出てくる辺りまでしか起きない筈だ。ブルーサーペントが殺されるかどうかぐらいだね」
『放っておくとブルーサーペントが毒で殺されてしまい、スカルモンド伯爵が正装で戦いに出ます』
「アレも見たいんだよなー。開発部が散々悩んだ結果、スカルモンド伯爵の元ネタは<ラルフ・C・ベル○ンド>に決まったからね。やはり<伝説>と名が付いているのは大きいんだろう。それに、このゲームは”レトロ”ワールドだからさ」
『しかし元ネタに【火魔法】で燃える炎の鞭なんぞあったかのう……? 聖水に関しては【浄化魔法】の【クリアフレイム】を込めれば問題なかろうがな。……そういえば気になっておったんじゃが、十字架を投げるのは罰当たりではないのか?』
「………全部纏めて”ゲームだから”って言葉で終わらせて良いんじゃないかな? 後、炎の鞭に関しては、伝説の前作で使われてるからセーフじゃない?」
「お前達は何を下らない事を話しているんだ、仕事しろ」
『【純潔】のキャスティに対し、<屍人の森>西のダンジョン、5階のボスオークが過剰反応しています。暴走しているとも思える程の反応であり、正常とは思えません』
「………セントラル、問題は無い。これは【色欲】と共に居るから相乗効果を齎しているだけだ。特に対処の必要は無いし、彼ならその状況を上手く利用する。どのみち起きるのは彼だけだから、全く問題にならない」
「彼なら都合よく利用するでしょうね。相手が何をやってくるか分かれば対処は簡単だ」
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2000年 9月1日 金曜日
『予定通り、プレイヤー<コトブキ>の前で襲撃イベントが起きました。しかしプレイヤー<コトブキ>は積極的に関わろうとはしていません』
「彼の性格なら分かっていないものには近付くまい。何より、積極的に物事に介入して解決していくヒーロータイプじゃないからな。彼はどちらかというと、1人で戦い悪人を虐殺するダークヒーロータイプだ」
『プレイヤー<コトブキ>が動かない為、兵士が無理矢理に関わらせました』
「まあ、そうしなきゃイベントが進まないからなー。こいつら最後に余計な事するから、弟君のヘイトを溜めそうだ」
『予定通り馬車はプレイヤー<コトブキ>に盗賊を押し付けて逃走しました』
「ここからが本番なのだが、このイベントをやっているのが自分だったら腹が立ってしょうがなかっただろうな」
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2000年 9月3日 日曜日
『プレイヤー<コトブキ>が<散魔印>の施されている牢で魔法を使う事に成功しました。これによって【魔力操作】と【魔力感知】が、【精密魔力操作】と【精密魔力感知】になります』
「………冗談でしょ!? 何でそんな事が出来るわけ? いや、<破滅>は出来るけどさ。その元が彼だとしても、何でそんな低レベルでするの!?」
『うははははは!! 流石コトブキじゃ、やりおったわ! はははははは……!!』
「笑い事じゃないわよ! こんなタイミングで習得する想定なんてしてないの!! 色々な物事の想定が崩れるんだから!!」
「声を荒げるな。そもそもこんな事は彼以外、ほぼ不可能だ。いつも通りイレギュラーで問題無い、放っておけ」
「しかしですね、流石にコレはかなり「構わん」広範囲に……」
「彼しか出来んのなら何の問題も無い。もし文句が多ければ<散魔印>の部屋を用意して、同じ事をやれと言えば終わる。一部の者が不当に優遇されているなら問題だが、彼のは努力の結果でしかない。それをこちら側が勝手に踏み躙るわけにはいかんのだ」
「………」
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2000年 9月4日 月曜日
『お知らせします。ただいまプレイヤー<コトブキ>が【精密魔力操作】【練気操作】【仙力操作】【心力操作】を習得した為、種族【魔闘仙】に進化しました。これよりプレイヤーに種族に関する情報の一部を解禁します』
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
「流石は彼だな。想定よりもずっと早いし、<散魔印>を利用した結果とは面白い。どのみち【魔闘仙】になるのは彼しか居なかったのだから、それ自体は想定の範囲内だ。皆、驚いてないで仕事に戻れ。これはタイミングの違いでしかない」




