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0131・精錬と鍛冶




 朝食が終わったので、ナツをベッドに移動させてから師匠の家を出てバイゼル山へ。ユウヤと合流するも、何故か今日はシャルロットさんの鍛冶場で精錬する事に。理由としては僕が高品質で精錬できるからだった。


 昨日ユウヤがシャルロットさんに聞いたらしいんだけど、精錬系は錬金術師の得意分野らしく、鍛冶師の得意なのは加工系なんだってさ。つまり炉の能力とかそういう物が良くないと元々の品質が上がらないそうだ。


 ちなみにそんな炉をシャルロットさんが使っているのは、手頃なのと普通の鍛冶師との兼ね合いらしい。オーダーメイドの場合は錬金術師から仕入れた高品質な金属で打つそうで、ワザとその程度の品質の金属でユウヤに打たせてたんだってさ。



 「昨日聞いた時には膝から崩れ落ちたわ。師匠いわく、その状況で工夫する事こそ鍛冶師の本分なんだってよ。で、高品質の鉄や鋼鉄が欲しけりゃ錬金術師に頼めって言われたんだけど、知り合いの錬金術師ってコトブキしかいねーじゃん」


 「まあ、そうだろうね。そもそもユウヤってバイゼル山から殆ど出た事ないし、後はプレイヤーマーケットの繋がりぐらい? 銅や鉄に精錬するのは良いんだけど、青銅や鋼鉄にするのはどうする? それは炉で一度やった方がいいと思うんだけど」


 「ん? 何で?」


 「錬金術的には、合金にする際に結構品質が下がるんだよね。銅が10で青銅にすると9、鉄が9で鋼鉄にすると8。まあ青銅の場合はそこから武器にして品質は9か8、鋼鉄の場合もそこから武器にして8か7。どうしても一つ工程を挟む毎に低下するんだよ」


 「そうなのか……炉で試してみるのと、コトブキに精錬してもらった物。どっちが良いか比べてみるしかないな。まあ、俺の腕が足りないから品質が低い場合もあるし、結果が出ても参考程度にしかならない気もするけどさ」


 「それでもやらないよりはマシ。何度もやってみて調べるしかないし、そうしていれば品質も上がる筈。………ッ!!」



 イルは鋼鉄のショートボウを取り出して、遠くに居たクソヤギを狙い撃った。【身体強化】をしたその一撃は狙いをあやまたずクソヤギの胴体に直撃し、そのまま吹っ飛んで崖下に落ちていった。


 僕達だけじゃない、撃った本人であるイルまで目が点になる威力だ。しばし呆然としたものの、気を取り直して鉱床へと歩き出す。とはいえ、流石にさっきの一撃には言いたい事があるらしい。



 「いやいやいやいや、何だ今の!? さっきの矢の威力おかしいぞ! あのクソヤギが2メートルほど吹っ飛んでたじゃねえか! いったいそ、うわぁ……その色、間違いなく鋼鉄で出来てるだろ! しかも何だ、そのワイヤーみたいな弦!?」


 「ワイヤーみたいな、じゃなくてワイヤー」


 「堂々とワイヤーって言いきるんじゃねえよ。あ、それ作ったのコトブキだろ! そんな尋常じゃねえ、メチャクチャな物作るのはお前だけだろうしな」


 「確かに作ったのは僕だけどさ、頭のおかしいヤツ扱いは止めてくれる? そもそもそれを発想したのは僕じゃないから! 僕はイルが言う通りに作っただけだよ。どんな物か知りたかったっていうのも、あるにはあるけどさ」


 「まあ、総鋼鉄製の弓だもんなー。クソふざけた威力になるのも普通かぁ。あのクソヤギが矢で吹っ飛んで落ちていくのを初めて見たぜ」


 「もう勿体ないからしない。あれすると必ず矢を損する。お金の無駄なんでやる意味が無いし、あそこまでの威力じゃなくても狩りは可能」


 「そりゃ可能だろう。そもそもさっきのは明らかにオーバーキルだったぞ。あそこまでしなくてもクソヤギは進化もしていない雑魚なんだから、適当な魔法で落とせばいいさ」



 その後はドースやフォグが魔法を放ち、クソヤギを転落させていく。流石に見慣れたからかユウヤも爆笑はしなくなっていた。どちらかと言えば飽きたんだろうね。


 3ヶ所の鉱床を回り、十分に鉱石を集めてきた僕達はシャルロットさんの家の鍛冶場へと行く。まずはユウヤの分の鉱石から銅と錫と鉄を取り出し、僕は【昏睡眠】を使って回復する。その間にユウヤは溶かして合金化。


 鋼鉄に関しては銑鉄をシャルロットさんが買っているらしい。それと僕が作った純度の高い鉄を溶かして混ぜ合わせるそうだ。この方法が正しいかは知らないけど、少なくとも魔力炉で溶かすと鋼鉄になるみたい。


 まあ、ゲームだからね、そこまで厳密にやってたらゲームにならないというのもある。全回復したので起き上がると、ちょうどユウヤが溶かし合わせたところだった。僕はそれを見つつ、今度はトモエの分を精錬していく。


 それも終わって回復し終わると、次はイルの分。その後は自分の分を終わらせて【昏睡眠】。全回復したら、ようやく合金化だ。ユウヤの合金化は終わったらしく確認してみると、僕が作った物と変わらなかった。


 青銅の品質は1つ下がって9。鋼鉄の品質も1つ下がって8。炉では鉱石から金属を取り出す時に品質が下がるみたい。下がると言うより不純物が多いのかな?。



 「あー、成る程な。コトブキは鉱石から取り出す時に他の物が無くなるって言ってたが、そういう事か。師匠もあくまで得意、不得意っていう言い方だったしな。不純物を何とかすれば炉でも品質は上げられそうだ」


 「問題は、それをどうやるかという事。その方法が分かってない以上はどうにもならない。その鍛冶師の師匠はどうやってるの?」


 「師匠が鉱石を精錬してるところは見た事がねーな。もしかした秘伝か何かで、自分で考えろって事かも……。もうちょっと色々工夫してみるかな、もちろん危険の無い範囲で。炉が壊れたりしたら洒落にもならねえし」


 「炉なんて一基でどれだけの値がするか分からないしねえ。危険な事はしない方が無難よ。それに現状だと鋼鉄が一番良い金属みたいだし、品質が5以上なら無理する必要ないでしょ。そもそも買えるプレイヤーもそこまで多くないし」



 確かに鋼鉄は高いだろうね。僕も集中しながら青銅と鋼鉄にしたけど、残念ながら品質はユウヤと変わらず。青銅は刀にしておき、鋼鉄は防具に使う事にする。どんな防具に使うか色々悩んだものの答えは出なかった。


 理由は鋼鉄にすると重くなるからで、動きを損なうからだ。武器でも鋼鉄は重いのに、防具までとなると更に重量が増えてしまう。結局、皆と話し合った結果、防具にするのは見送る事に。しかし余ってる鋼鉄はどうしよう?。


 イルに相談すると笹穂槍にしたら? という答えが返ってきた。どうも蜻蛉切のような槍を見たいだけらしいが、高品質の鋼鉄で作ろうと思っていたので了承。作成して穂を交換する。



 ―――――――――――――――


 <槍> 鋼鉄の笹穂槍 品質:7 レア度:1 耐久410


 鋼鉄で出来た穂先を持つ槍。形状は笹穂型であり、有名な槍と同系のタイプである。刺突も斬撃も出来るタイプの物なので使い勝手が良い

 攻撃力22 破壊力1 


 ―――――――――――――――


 ―――――――――――――――


 <投擲> 鋼鉄の棒手裏剣 品質:7 レア度:1 耐久380


 小さな杭の形した投擲具。通常の投げナイフなどと違い、真っ直ぐに飛ぶように投げないと刺さらない。直打法を練習しよう

 攻撃力15 破壊力2


 ―――――――――――――――



 「十分な攻撃力と破壊力。素早く投げられてこれなら十分過ぎるけど、鋼鉄を棒手裏剣にするのは勿体ない。特に失くした時の事を考えると……」



 僕はセナに渡しつつ、失くさないようにと一応言っておく。それでも投げる必要があれば投げるようにと。余った槍の穂先は包丁に変えてプレイヤーマーケットへ。


 即座に売れたけど、料理人が欲しがったのかな?。


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