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0130・女王の影と食べ物の話




 「確かにラスティアの言う通り凄いですね。<始祖の吸血鬼>を相手にして魅了……まあスキルの魅了ではないのでしょうけど、素の魅力に打ち勝つというのも相当ですよ」


 「その後どこかの誰かは気に入らなんだのか【魅了の魔眼】を使って強引にやったがの。まあ、コトブキが【魅了耐性】を得たから悪い事では無かったが、大人気ない事は間違い無い」


 「………」


 「それでエンリエッタさんは何で女王様を連れてきたの? 何かこの国で問題でもあった?」


 「いや、何も無い。強いて言えば、国の一部に居たバカどもが始末されてスッキリしたくらいか?」


 「いえいえ、それは気に入らない奴を<破滅>殿がブチ殺しただけでしょうに。まあ、そうなるように誘導したのは私だけども。ただ<破滅>殿が求めてた物も渡してるからお互い様よねえ」


 「まあ、それはの。それより先ほどの話に出ていた馬車。何処の貴族か分かっておるならマリアに言うておけ。上手く使うじゃろうよ」


 「あっ、豪華な馬車は貴族ではなく薬師ギルドのギルド長でした。不当に値を上げて暴利を貪っており、ドゥエルト町の兵士長とも繋がっていたんです。で兵士長は副ギルド長と組む事にしたらしく、それで用済みとなり殺されたようですね」


 「ふぅん。つまりその殺人の罪をコトブキ君に擦りつけようとしたって訳ね? スカルモンド……いえ、この場合は代官かしら。その町の代官はいったい何をしてるのかしらねぇ」


 「少なくとも薬師ギルドが関わっておるなら、支部の事とはいえ難しかろう。各ギルドは独立を認められておる。幾ら代官でも簡単には手を突っ込めまい。一応聞いておくが、妾を騙そうとしておったのか? 薬師ギルドの連中は」


 「いえ、師匠の薬は代官の為の薬でしたよ。薬師ギルドと戦ってる代官が病気で臥せっていましたので、そういった意味でも難しかったのでは?」


 「うん? あれは毒の治療薬じゃが………コトブキ達には真相を教えなんだようじゃの。あれは砂漠血毒ムカデの毒で、かなり珍しい毒なのだ。おそらくは盛られたのであろうが、出所はその薬師ギルドのギルド長であろう。喰われたらしいので話を聞けんが」


 「そしてこれが師匠にお渡しする受領証と代金です。僕は別に慰謝料的な物は貰っていますので、今回の事は【魔闘仙】の事も考えれば結構得しました。行って良かったですよ」


 「まあ、それなら良い。薬師ギルドも代官が治ったのなら、流石に手を突っ込むじゃろう。兵士長とやらを捕縛すれば芋づる式に明らかになるであろうしの」


 「兵士長は僕が稀人だと知って逃亡したらしいです。おそらく脅しが効かないと思ったんでしょう。今日ダンジョンに行く際に何故か盗賊として出会いまして、既にゼット町に身柄を渡してあります」


 「コトブキがラスティアとキャスティと一緒にボコボコにしてたわね。両腕両足を潰されてから止血されて、馬で運ばれて25万デル。私達も5万デルずつ貰ったわ。だからそこから情報は得られるんじゃない?」


 「へー、そうなの。……聞いていたわね、ゼット町に行って確保してきなさい。そしてそれをドゥエルト町の代官に持っていき、全てを明るみにするように」


 「ハッ!」



 マリアさんの影からタキシードを着た吸血鬼が出てきて一礼した後、影に消えていった。おそらくはゼット町に行ったんだろうけど、影に潜んでたんだ。あんなスキルもあるのかー……敵が1人だと思わない方がいいな。


 僕は食事が終わったので失礼し、ソファーに寝そべってログアウト。ラスティアとキャスティにはバナナを渡しておいた。お菓子じゃない理由はマリアさんが居るからだ。あの人は女王様だからね、お菓子にハマると面倒な事になる。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 2000年 9月8日 金曜日 AM8:24



 今日も元気にログインするも少し眠たい。昨日ちょっと興が乗って授業を多く受けた所為なんだけど、結構遅くまで起きてたんだ。体は寝てるけど脳は起きてるからね、その所為で眠たいまま。ま、今日ぐらいは大丈夫でしょ。


 ログインして驚いたけどギンがお腹の上にいない。そして何故かトモエ達がここに居る。何かあったのかと思うも、話を聞くとマリアさんが客室で寝てるらしい。それでか……。


 ちなみにギンは何故か僕が作った木のブラシで、イルにブラッシングされていた。気持ち良さそうなのでスルーし、僕はプレイヤーマーケットの売り上げを木箱に入れる。ナツはまだ寝たままなのでログインしていないみたいだ。



 「ナツは今日ログインできない。何かの用事? があるらしいから、後でベッドに寝かせておく必要がある」


 「ああ、そうなんだ。飢餓度と渇水度は大丈夫かな?」


 「コトブキは知らない? 飢餓度と渇水度は共にログアウト中は95で止まり、それ以上は上がらない。でないと1日ログインできないだけで何回死ぬか分からないし、装備が全て無くなる」


 「あー……考えてみればそうか。毎日ログイン出来る人ばかりじゃないもんね。他のプレイヤーを殆ど見ないから、沢山の人がログインしてるってイメージがどうしても……」


 「分かる。それぞれがバラバラな場所から始まるって珍しいからねえ。最近は色んな人が動画をアップしてる所為で、景色的な部分ではプロゲーマーが困ってるらしいわよ? 先に出されるから珍しい景色が映せず二番煎じになっちゃうんだってさ」


 「仕方ない。誰かより先に何かを手に入れるのもMMOの醍醐味。プロゲーマーでもスタート地点が決まってない以上は勝てない」


 「そうなんだけど、最近珍しい種族と職業でキャラを再作成しているプロが多いらしいわよ? このゲームテンプレが作れないから、テンプレ的なの全外しで個性の強いキャラにしてたりするみたい。視聴者数はそっちの方が良いって聞くし」


 「珍しい方が喰いつくし、そこから自分にも使える役立つ情報が出てくるかもしれない。今までのゲームの常識は放り投げた方がいいかも。コトブキを見てると、つくづくそう思う」


 「人を珍獣みたいに言うのは止めてほしいんだけど? 僕だってこうしようと思ってこうなった訳じゃない、っとファルが呼びに来たね。今日は遅かったけど、マリアさんが居るからかな?」



 僕達はファルについていき食堂に移動したんだけど……朝っぱらから飲んだくれ2人が飲んでいる。それも豪快にステーキを食べながら。………朝からステーキがよく食べられるなあ。そのうえどう見ても500g超えてるでしょ。



 「おはようございます。それにしても朝からたっぷりの肉ですね?」


 「うん? 何を言っとるのだコトブキ、この程度の肉など大した物でもなかろう。コトブキも食べるがよい、だから体が細いのだぞ。ガッツリ食べて体を大きくするがよい。ははははははは!」


 「うふふふふ、そうよ。これぐらいペロリと食べられしょう、大した量でもないんだし。それにしても久しぶりにシャープホーンバッファローの肉を食べたけど、まさかスカルモンドのダンジョンに居たなんてね。知らなかったわ。後で【転移魔法】の使える者に仕入れさせなくちゃ」


 「食べたい気持ちはよう分かるが、妾も知らなんだぐらいだから仕方あるまい。ダンジョン内の魔物もちょこちょこと変わったりするからのう。それはダンジョン側の事なので関与できんし、面倒なのでダンジョン街での情報も調べん。それに深く潜れる者も多くはないうえ、そういう者は儲かるダンジョンにおる」


 「命が掛かってるから仕方ないんだけど、美味しい物の採れる所にも居てほしいわよねえ。そういう所は引退した者ばかりで、危険は冒さないのよ」



 うん、それはそうだと思う。NPCだから死んじゃうし、家族の事を考えたら危険な事はしないよ。普通は。


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