0126・精密魔力操作の影響
鉱床の3ヶ所を巡って戻り、すぐに精錬を開始する。集中し魔力を心臓から練り上げ、錬金術を行使していくんだけど、今までよりも遥かにスムーズに細かく行える。どうやら【精密魔力操作】は相当の影響があるらしい。
魔力を操るうえでの基本が【魔力操作】だと師匠は言っていた。やはり基礎となるスキルは広範囲に関わりがあるようだ。改めて集中し、銅や錫や鉄を取り出していく。結果として取り出した物の品質は9まで上がった。
ここから青銅と鋼鉄に精錬した結果、品質は8と非常に高い。途中で【昏睡眠】を使うも、ここ最近回復が早くなっている印象がある。ようやくスキルレベルが多少は上がってきたんだろう。どこまで伸びるか分からないが、途中で止まるのは確実だ。
流石にとんでもない回復力や回復速度にはならないだろう。バランスが壊れるし、持っている1人に都合が良すぎる。掲示板やプレイヤーマーケットを見つつ、回復したら再び青銅と鋼鉄にしていく。トモエの溜め込んだ分が結構大変だ。
途中で品質9が出たが集中を乱さずに頑張り、何とか青銅と鋼鉄を作るのは終わった。そろそろ夕食なのでファルとナツは台所に料理に行く。それを見送りつつ、トモエが五月蝿いので鉄のチェーンを作成していく。細工物に鋼鉄は要らないからね。
鋼鉄よりは楽な鉄をチェーンにしたり、青銅で留め金などを作ったり、トモエの要望は細かく面倒だった。未だに素材は残っているけど夕食が出来たので逃げ、食事後はソファーでログアウト。現実へと戻る。
とりあえず逃げられたので、やるべき事を済ませよう。
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2000年 9月7日 木曜日 AM8:33
昨夜はそれなりの時間まで授業を受けていたけど、トモエはゲームにログインしてたみたい。そのうち授業数が足りないとか言って慌てそうだけど、そこまで放っておこう。僕じゃないし。
ログインした僕は貰った慰謝料と持っているお金を木箱に入れて、ギンを取り出す。何故いつもいつも入りたがるのかは分からないが、猫の本能なんだろうし理解しようとするだけ無駄だろう。
木のブラシでブラッシングし、ファルに呼ばれたので朝食に行く。既に全員が集まっていたので食事をするも、師匠だけが居ない。
「エンリエッタさんなら帰ってきてないわよ? コトブキが薬を持って行った日から帰ってきてないから何かあったんじゃない? 心配しなくても<破滅の魔女>がどうにかなるとは思えないけどね」
「師匠はどうにかならないだろうけど、相手はどうにでもされる未来しかないね。師匠の胸先三寸で末路が決まる感じ」
「それより今日はどうする? ここは今までの所と勝手が違うし、お金儲けをどうするかは悩む。今までと違って安全にお金を保管できるのは助かるけど」
「ああ。2人もファルから木箱貰ったんだ? アレ助かるのよねー、お金とか入れておくのに。取られる心配ないし、戦闘に出て死んでも安全だから。ただ、お金持ってるかどうかに関係なく盗賊は襲ってくるけど」
「盗賊だって見た目しか見てないからじゃない? こいつはお金持ってそうとか、こいつは簡単に奪えそうとか。相手が幾ら持ってるかなんて分からないし」
「弱そうな奴を襲うっていうのは分かるよ。ユウヤと一緒の時に襲われた事は一度も無いのに、僕だけだと割と多いんだよね。最近は無くなったけど」
「案外、危険人物として盗賊の間に情報が出回ってたりしてね。コトブキは賞金首も倒してお金に換えてるし、エンリエッタさんの弟子だってバレたら誰も襲わないでしょ」
「まあ、そうかも。それはともかく、ナツとイルは鉱石を掘りに行ったらダンジョンに行こうか? 16階にシャープホーンバッファローが出るし、途中のジャングルでバナナも手に入るし」
「バナナはいいね。お料理にも使えるけど、まずは普通に食べようっと」
朝食後、皆でバイゼル山へ行き鉱石を掘る。ユウヤと一緒に回るんだけど、ナツとイルが合流した事に喜んでいた。ダンジョンへはユウヤも一緒に行くと言っているんだけど、どうも1人だと16階は大変みたい。
特にユウヤの場合はタンブルゴーストが厄介で、いちいち面倒な相手なんだそうだ。僕達の場合は【浄化魔法】で倒せば済むけど、魔法を持たないユウヤは大変だろうね。
その事もあり、僕の出してた浄石製のメイスを買ったらしい。言ってくれれば作るのに。
「まあ、そこまで知り合いに頼るのもアレかなぁ……って思ってさ。そんなに高い物でもないし、最近は青銅とか鉄の装備も売れるようになったからお金はあるんだよ。他のプレイヤーも金を持ち始めたみたいだしな」
「流石にそろそろ鉄製の武器ぐらいは持つ。盗賊の持っていた短剣などは鉄製の物も出てたけど、アレらは品質が悪くて使えない物が多い。無駄なお金を払うぐらいなら、良い物にお金を掛けた方がマシ」
「私も鉄製の包丁とか欲しいから頑張るよ。後、ピーラーも欲しいから作ってもらおうっと」
掘るだけなのは暇だから会話してるんだけど、適当な会話になる事が多いね。そんな下らない事を思いつつ掘り出していき、終わったら師匠の家へと戻る。さっさと精錬を終わらせ、昨日の続きをやっていく。
トモエの分がようやく終わったので、次はナツの分だ。
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<道具> 鋼鉄の包丁 品質:7 レア度:1 耐久390
鋼鉄で出来た切れ味鋭い包丁。形はいわゆる三徳包丁であり使い勝手は良い。武器に使えなくもないが、ちゃんとした武器を持とう
攻撃力15 破壊力1
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フライパンなどは鉄で作ったものの、包丁は鋼鉄で作った。品質がついに7までいったが、それでも品質が下がること自体は避けられなかった。
これでは鋼鉄の品質が10でも、武器や道具の品質が10にはならない。それでも高品質になっただけマシかな。
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<短剣> 鋼鉄の短剣 品質:7 レア度:1 耐久340
鋼鉄製の普通の短剣。可も無く不可も無いその形状と重量は極めて扱いやすく、万人向けの一品。耐久も高く、地味に優秀な武器
攻撃力18 破壊力1
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イルの短剣も相当良い物になった。攻撃力や破壊力の数値は上がってないが、実際のダメージとか切れ味とかは上がっていると思う。
このゲームって数値に出ない部分が多いので、数字が上がってないからといって変わらないと思うのは間違いなんだよね。
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<短剣> 鋼鉄のククリナイフ 品質:7 レア度:1 耐久350
ひらがなの「く」の字の形をした短剣。内側に刃が付いている為、扱いやすく力を籠めやすい。藪を払う事から魔物退治まで、幅広く使える優秀な武器
攻撃力19 破壊力1
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イルはククリナイフの方も欲しがったんだけど、こっちもかなりの性能をしている。皆の装備を作り直した方が良いかと思うも、せっかくなら品質10で作りたいのでまだ止めておこう。
それよりもイルが面白い事を言い出したので、僕も悪ノリして作ってしまった。これ……どうしよう?。
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<弓> 鋼鉄のショートボウ 品質:6 レア度:1 耐久320
総鋼鉄製のショートボウ。弦まで鋼鉄で出来ている特別仕様であり、頑丈なグローブをしないと危険なほどの代物。使う際にはくれぐれも注意しよう
攻撃力16 破壊力3
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イルが言うには、弓は弓+矢の攻撃力や破壊力でダメージが決まるらしい。つまり弓だけでこれほどの攻撃力や破壊力をしているのは異常なんだそうだ。イルが試しに弓を引いてみたけど、筋力不足でとてもじゃないが引けないみたい。
代わりに【身体強化】をすれば引けるらしいので、切り札として使う事を決めてインベントリに仕舞った。要らないなら一度プレイヤーマーケットに出してみようと思ってたのに……残念。




