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0122・薬の配達完了




 「君は私を疑っていたみたいだし、それは仕方がないんだが、私は代官であるオルトーモス様の家臣の1人でね。いわゆる兵士達を見張る立場にあるんだよ。ま、隠れて内部を監視している1人だと思ってほしい」


 「ああ、成る程。そういう役目の人だったんですか。僕はてっきり優しい言葉を掛けて懐柔し、嘘の自白をさせようとしてるのかと思ってましたよ。貴方も兵士ですから」


 「まあ、兵士である事は間違いないんだけどね。本来なら君に対する不当な取調べと自白の強要で、強制捜査が可能かギリギリだったんだけど、君が稀人だという事でそれどころじゃなくなったんだ。それを知った兵士長が逃げ出してね」


 「逃げたってどういう事よ? 不当な取調べと自白の強要。確かに犯罪でしょうけど、そこまで重い罪じゃないわよね? あくまでもまだ調べてる段階なんだから。濡れ衣を着せられたら確実に重い罪になるでしょうけど、今ならそこまででしょう?」


 「実は兵士長と一部の兵士は、薬師ギルドと繋がってたんだ。オルトーモス様は薬の不当な高値に関して薬師ギルドと対立してたんだけど、その薬師ギルドに協力して裏で賄賂を受け取ってたのが兵士長一派だったんだ」


 「成る程、そういう繋がりが……うん? 薬師ギルドのギルド長は殺されましたよね? 私達ではないのですから、あの護衛の兵士達………もしかして、内部で揉めて殺した?」


 「そう。朝から兵士長の一派の者を拘束して取調べをしてたんだけど白状したよ。薬師ギルドの副ギルド長と手を組む事にしたらしく、今のギルド長は邪魔になったらしい。それでギルド長に恨みを持つ者に情報を流して、馬車を襲わせたんだそうだ」


 「ところが僕達が介入した所為で計画が狂った?」


 「ああ、その通り。だから保険として用意していた魔物に襲わせるっていう計画の犯人に、君を使う事を思いついたらしい。君がネクロマンサーなのにも関わらず無理矢理にでも犯人に仕立て上げようとしていたのは、そういう理由からだった」


 「兵士長には逃げられたみたいだけど、捕まりそうなの?」


 「それは分からない。判明してからすぐに伝令が飛び出して行ったから、伯爵様にはすぐに伝わるだろうけどね。そこからってなると……難しいところさ。逃げた時点で罪を認めたに等しいから、賞金首として指名手配されると思うけど……よし、着いた。ここからは行儀よく頼むよ」



 まあ、礼儀知らずとは思われたくないから変な事はしないけどさ。だったら僕達を連れて来るなと言いたい。面倒臭い事にいちいち絡みたくないんだよ、僕も。大きな屋敷の中の一角に着くと、ノックをしてから中に入る。


 そこにはベッドで寝ている中年ぐらいの人と、椅子に座って薬を調合している人、そして家族とおぼしき中年女性とメイド数人が居た。そんな中、記録係の人が話しかける。



 「元兵士長に犯人扱いされていた方をお連れいたしました!」


 「うむ、ゴホッゴホッ! ご苦労。……ふー、こんな格好ですまない。稀人だと聞いたが、愚か者が君を犯人に仕立て上げようとしたと聞く。ゴホッゴホッ! 私の不手際だ、誠に申し訳ない」


 「謝罪は受け取りましたので、これ以上は不要です。それにしてもお体が悪いようですが、大丈夫なのですか?」


 「ゴホッ! 私が罹っている病はどうやら珍しいらしく、信用のおけるギルドの薬師では腕が足りぬそうなのだ。ここに居る友人のモックスが<破滅の魔女>様に頼んでくれたそうなのだが、いまだに連絡が来ぬらしい」


 「私がモックスだ。伝手を随分使って<破滅の魔女>様にお願い申し上げたのだが、何故か連絡も届けられていなくてな。私達も困惑しているのだが、何かあったのかもしれん。オルトーモスの病気は重く、いつ身罷みまかるか分からんのだ。それ故にこんな時間に君達を呼ぶ事になってしまったんだよ」


 「「「………」」」


 「どうしたんだい? 急に黙り込んで」


 「いや、僕は師匠に頼まれてドゥエルト町まで来たんですよ。薬師ギルドに薬を持っていけって言われましてね。ちょっと待ってください……この木箱なんですが」


 「これは<破滅の魔女>様のサインである<黄金のドクロ>!! 間違い無い、魔女様の薬だ!! 私も話は聞いていたものの、まさか元兵士長が無理矢理に勾留していたのが、魔女様のお弟子様だったとは!」


 「ゴホッ! 本当に申し訳ありません。知らなかったとはいえ、大変に無礼な事を……!」


 「いえ、僕は偉くも何ともないですし、師匠は特に気にしないと思いますよ。それより師匠の薬が代官様にあてた物なら、早く飲んだ方が良いと思います」


 「お、おお! そうだ! えーっと……この一番の薬から順番に飲んでいけばいいらしい。一日に2度、朝と晩に飲んでいけば回復するようだ。ビンの数は6本なので3日で治るのだと思う」



 ビンを受け取った代官は薬を飲んでいるが、僕達はどうすれば良いんだろうね? ここに居ても暇でしかないし、そろそろログアウトしなきゃいけないんだけど……。



 「あのー、そろそろ宿か何処かに行ってもいいいですか? 僕は稀人なので、そろそろ一旦離れないといけないんですよ。なので申し訳ありませんけど、この辺りで失礼させていただきます」


 「おお、申し訳ありません。いや、そうだ! 客室がありますから、そこに泊まっていって下され。元兵士長の所為で酷い目に遭ったと聞きます。それぐらいせねば我が家の恥にもなりますのでな。お客様を客室まで案内せよ」


 「かしこまりました」



 室内に居たメイドの1人が礼をして部屋を出るのでついていく。ここで断っても碌な事にならないしね。案内された部屋はベッドが2つ並んでいる部屋が2つ……。


 僕はどっちでも良いので適当に寝転がると、運営マーケットからお菓子を買う。ぱ○んこを買って2人に渡し、僕はログアウトした。後はラスティアとキャスティに任せれば大丈夫だろう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 2000年 9月5日 火曜日 AM8:32



 昨日はログアウトが遅れて危なかったよ。あの後で慌てて雑事を熟して間に合ったのはいいんだけど、夕食の時にシズから根掘り葉掘り聞き出そうとされるし、面倒このうえなかった。


 シズも【魔力操作】を頑張ってみるとは言ってたけど、果たしてどうなるのやら。あれも結構大変だったし、僕でさえ<散魔印>が無ければ考えもしなかっただろうからねえ。苦労すると思うけど、目指すのは間違ってはいない。


 まあシズには自力で頑張って貰うとして、僕もログインしよう。


 ……何故かログインしたらラスティアとキャスティに挟まれてるんだけど? この状況がどういう状況なのかサッパリ分からないし全く嬉しくない。しがみつかれてて動けないんだ。


 仕方なくウィンドウをラスティアの上に浮かべ、僕はおでんのコンニャクを買う。当然のように受け皿の無いコンニャクは落下し……。



 「あつぅっ! あっつ、あつい! 何コレ、あっつい!!」



 ラスティアが熱さに悶絶している間に素早くウィンドウを操作し、キャスティの上からはんぺんを降らせる。



 「あづっ!! あっつい! 何ですか、コレ! あっっつ!!」


 「おはよう2人とも。腕と足を外してくれるかな、起き上がれないんだ」



 僕の声を聞いて冷静になったのか離れてくれたけど、どうして左右からしがみついてたんだろうね? そんな事をしていなければ、熱々おでんの刑には処されなかったのに。


 何だかジト目で見てくるけどコンニャクとはんぺんがお気に召さなかったのかな? 僕はインベントリにおでんの具を仕舞い、ベッドに【クリーン】を使って綺麗にしておく。起きたものの、勝手に出て行く訳にもいかないし困ったね。


 そう思っているとノックの音が聞こえ、メイドが外から声を掛けてきたので返事をする。



 「失礼します。もうすぐ朝食ですので、食堂にご案内いたします」



 そう言われたので大人しくついていくのだが、いつ僕達が起きたと知ったんだろう。謎のメイド技能だろうか?。


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― 新着の感想 ―
それなんてダ⚪︎ョウ倶楽部
見た目だけじゃなく接触においてもこの耐性の高さ、きっと毎年冬場は姉が布団に潜り込んできて抱き着かれて寝ていることでしょう...
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