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0116・ドゥエルト町へ




 村の外れの家を出て、僕達は村の中をウロウロする。泊めてもらえるかどうかを聞きつつ、外れの家の事も聞いていく。やたらにボッタくられた事を言うと、村の人は顔をしかめる人と納得する人に分かれた。



 「あそこの家は若くして息子さんが死んでな。それから人付き合いが悪くなってしまったんじゃよ。あれは……いつだったかの? まだ、あそこのボウズが生まれる前だったと思う。冬の寒い時季でな、病にかかったと聞いてから2~3日で亡くなったんじゃ」



 僕達は泊めてもらえたお爺さんの家にお邪魔している。すぐ隣に息子夫婦の家があるが、この家は思い出の家なので住み続けているそうだ。僕達は7000デルを支払って泊まらせてもらっており、ラスティアはその値段に納得していた。



 「薬さえあれば助かったんだろうが、こんな田舎の村じゃ薬の元はあっても薬師はおらんからのう。相当薬師を恨んどるらしいが、流石に筋違いとしか言えん。息子を失くしたので恨むのは分からんでもないが」


 「とはいえ、私達に対してやたらに敵意剥き出しだったわね。何故かは知らないけど」


 「今、村長の所に薬師ギルドの偉い人が泊まっとるらしいから、関わりがあると勘違いされたのかもしれんの」


 「単なる勘違いですか……。気持ちは分からなくもありませんが、周囲を恨んだとて何も良くならないですし、家族も悪く見られかねないというのに……。それも分からないほど憎しみに凝り固まっているのでしょうか」


 「かもしれんの。まあ、悪く言わんでやってくれ。恨みに凝り固まる気持ちも分からなくもないからのう。それに働き手を失って大変でもあるんじゃ」



 お爺さんの言いたい事も分かるんだけど、村人の中に顔をしかめる人達がそれなりに居たんだよ。僕はそれが答えだと思う。同情する部分は当然あるんだけど、だからといって恨みと憎しみを周りに撒き散らしてもいいかと言えば、そんな事は無い。


 結局、それは子供っていうか孫の為にもならないんだよ。あの捻くれ爺の孫って言われかねないんだからさ。とどのつまり、自分の事しか考えてないんだ。



 「厳しい言い分じゃが、事実じゃのう。あそこの孫も将来困るであろうに、それでも己の悲しみの方が大事とは……それでは息子も浮かばれんじゃろうの」



 そんな話の後、僕達は寝泊りしていい部屋に案内してもらった。皆が居られるであろう大きな部屋だったので、ありがたい。そんな部屋でプレイヤーマーケットから料理を購入し、3人で食べつつ話し合いだ。


 僕はログアウトすると一切何があっても起きられないので、後の事はラスティアやキャスティ、それにファル達に任せるしかない。このゲームは当然ログアウト中も続いている。なので安全を確保しないと殺されて復活地点に戻されてしまう。


 ラスティアやキャスティに命令する気は無いからファル達にお願いし、最後にキャベ○太郎を2人に渡してログアウト。今日はここで終わりだ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 2000年 9月2日 土曜日 AM8:14



 今日も雑事を終わらせるとログイン。昨日はアトー村に辿り着いたから、今日はドゥエルト町までの移動だ。昨日ログアウトしてから調べたけど、どうも現在いろんな所でイベントが起きているらしい。


 細かなものだと、アレを運んでくれとかコレを狩ってきてくれとかがあって、様々なイベントっぽいものを請けている人も居た。それと元々狩人ギルドに所属していたのは多く居たらしいけど、今は様々なギルドに加入できるようになったらしい。


 その影響もあり、そこから色々な仕事を請けた結果、様々に世界が動いているのが分かったようだ。掲示板に天使の星と悪魔の星の考察スレがあったけど、現在はそこがイベント攻略板みたいになっている。


 ログインすると昨夜寝た部屋のままで、周りの皆は起きたままだ。流石にドースは家にあがらせてもらう前に送還したけど、それ以外は起きたまま守ってくれていた。それと、ラスティアとキャスティはまだ寝ている。


 僕はそっと起きあがると体を伸ばし、座って皆に色々と聞いていく。夜の間も異常は無かったらしく、ただ時間が過ぎていっただけのようだ。流石にそろそろ起きてもらわないと困るな、そう思い、僕はラスティアとキャスティを起こす。


 寝起きでボーッとしている2人の前に、プレイヤーマーケットで買った料理を置く。すると朝食だと分かったんだろう、緩慢な動作ながら食べ始めた。寝起きだから食べれないかと思ったけど、どうやらそうじゃないみたいだね。


 時間は掛かったけど朝食が終わった僕達は、お爺さんに挨拶して家を後にした。村を出たら西へと歩きだし、進んで行きつつ邪魔な魔物は倒していく。昨日の盗賊の装備を改良したものが売れており、意外と言ったらいいか、昨日よりも所持金が増えている。


 これなら町に行っても問題ないだろうと思いつつ進んでいると、後ろから馬車がやって来る音が聞こえてきた。僕が後ろを振り返ると豪華な馬車が見えたので右に移動し、豪華な馬車を先に行かせる事に。


 そのまま歩き続けるのだが、何故か馬車は追い抜いて行こうとしない。仕方ないので立ち止まって先に行かせようとすると、何故か馬車も止まった。面倒な事をしてくれるが、僕達を都合よく利用する気だろう。


 立ち止まっていても仕方ないので歩き出すと、馬車も動き始めた。あまりにも鬱陶し過ぎるだろうし、姑息過ぎだ。薬師ギルドのギルド長とか盗賊は言っていたが、あまりにも小物過ぎて何も言いたくなくなるね。


 僕達はその後も歩き続け、プレイヤーマーケットで料理を購入。座ってサンドイッチを食べつつ休憩する。後ろの馬車どもは知らないけど、僕達は普通に食事をしている。それも笑顔で談笑しながらだ。


 後ろの奴等に対する嫌がらせだけど、効いているかどうかは知らない。少なくとも兵士どもには効いているんだけど、肝心な奴は馬車の中なので顔が見えないんだよね。全くの無反応って事は無いと思うんだけど……。


 ログアウトして雑事を熟し、昼食を食べた後でログイン。それでも馬車は止まったままだった。とことんまで僕達をタダで利用したいらしいね。おそらくイベントだろうと分かっていても腹立たしい。


 その後も歩き続け、遠くに町の壁が見えると馬車の速度が速くなり、僕達を追い抜いていった。最後まで鬱陶しい馬「ドガァッ!!」車だったなー。


 ………何というか、綺麗なオチがついたねえ。右から出てきた熊系の魔物が馬車に衝突というかタックルし、馬車は横転。熊の魔物は馬を襲って殺し喰らっている。町の近くには熊の魔物が居るみたいだけど、運の無い奴等だ。


 僕がそう思っていると、2人はそれを否定した。



 「あれってファングベアだけど、少なくとも町の近くに出る魔物じゃないわよ? まず間違いなく<テイマー>か<魔隷師>でしょうね。そいつがファングベアをけしかけたってところかしら?」


 「でしょうね。流石に町の近くに出るという事は無いですし、本当に野生の魔物なら狩られてないとおかしいですから。町の近くである以上、住民の安全に直結しますし」


 「だとすると僕達は動かない方が無難かな。あーあー、馬車を壊して中に入ったよ。あれ「ギャーーッ!!!」は終わりだろう、って思ったら悲鳴が出たね」


 「兵士達も全く動かないわねえ。まあ、動けないという方が正しいでしょうけども。中でグチャグチャ音がしているという事は、ガッツリ喰われてるわねえ。けしかけたのは誰か知らないけど、恨みとかの人物でしょ」


 「それ以外にないのでは? おっと、町の方から兵士が来ましたね。早く倒してさっさと通行可能にしてほしいです。宿が満室になっても困りますし」



 本当にね。


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