0113・魔力金属の話
テンション下降中のユウヤを連れて僕達は16階で戦う。タンブルゴーストは僕達が【浄化魔法】で始末し、シャープホーンバッファローを探して歩く。やはり数が増えているのか、リポップが早められているのか、魔物の数が多く感じる。
ユウヤが居るからか倒すのは楽で、角を折るのも楽だった。角は今のところ細工や僕のように錬金術で使うしかないと思ってたんだけど、そうでもないみたい。
「師匠に聞いたんだけど、上位の金属を作るには複数の物を混ぜなきゃいけないらしい。その中に角もあるそうだ。果たして何の角なのかは知らないけどな。それと混ぜながら溶かすと魔力の篭もった金属に変わるんだと」
「<レトロワールド>の魔力金属はそうやって作るタイプなんだね。なかには魔力金属が掘れるタイプのもあるけど、銅や鉄から作らなきゃいけないタイプかー。なんだかモンスターの素材で作る武器が高騰しそう」
「だよな、俺もそう思う。竜の牙とか角で作られた武器が高騰しそうだ。まあ、金属に溶かして使う可能性も高いけどさ。基本的に金属が作りにくいゲームって魔物素材の武器が高騰するからなぁ……」
「まだ魔力金属が作りにくいとは限ってないけどね。それにしてもユウヤが居ると角を壊すのが楽だよ。最初はメイスで壊してもらってたんだけど、修理しに行った鍛冶屋の大将に怒られたんだ。メイスは角を折るもんじゃないって」
「いや、そりゃそうだろ。何やってんだ、コトブキは。まあ、武器に使えるってなったら折りたくなる気持ちは分かるけどな。それにしても大量に肉が出て驚くけど、肉以外に全く出ないぞ? こいつは魔石を持ってないのか?」
「さあ? でもシャープホーンバッファローから魔石が出た事はなかった筈。肉は高く売れるから、魔石が出るよりはいいけどね」
「その高く売れる肉を沢山獲ってこいって絶対言われるわ。まあ、俺1人でも何とかなるみたいだから良いけどさ」
そう、ユウヤはシャープホーンバッファローの突進を自分の盾で止めていた。完全に止めていたので相当の筋力があるのか、もしくは巨人族の体重で止めたんだろう。凄いけど魔人じゃ絶対出来ないし、僕はする気も無いけどね。あんな危ない事。
それからはシャープホーンバッファローを探しつつ、キリの良いところで帰る事に。ユウヤと居ると盗賊と襲われないけど、巨人族だからって事もあるんだろうか? そんな事を考えつつ戻り、ユウヤは転移魔法陣で戻って行った。
僕は師匠のスケルトン・クラフターに肉を預け、夕食までの間は浄石製の武器を作ってプレイヤーマーケットに流す。そうしていると夕食が出来たので、食べてログアウト。本日はここまで。
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2000年 8月31日 木曜日 AM8:15
今日は8月最後の日だ。もう8月も最後かと思うと感慨深いけど、登校日は9月の4日なのでまだ大丈夫だ。今や何かの行事とか学期の初めとか、そういう節目にしか学校に登校しないから面倒臭いんだよね。
クラブ活動なら毎日学校で練習してたりするんだろうけど、やるもやらないも自由だし、僕はいちいち面倒だから所属した事も無い。
かなり古い時代だと絶対にどこかのクラブに在籍しなきゃいけなくて大変だったらしいけど、今や自由でクラブ活動を絶対にしなきゃいけない訳じゃない。というか大半の生徒はクラブ活動をしないんだ。一部の特待生とか夢を持ってる人達だけだね。
下らない事を考えてないで、そろそろログインしよう。
目を開けた僕はお腹の上のギンをどけ、売上金を回収したら木箱から貨幣を全て取り出す。一度ステータスウィンドウに入れてから出すと、貨幣の量を減らせたので仕舞う。それなりに空いたからかギンが寝転がったが抱き上げ、片手で木箱を閉める。
いつも通りの儀式を終わらせ、僕は少し早いけど食堂に移動。そのままギンを膝の上に乗せてダラダラしていると、師匠やラスティアにキャスティが来た。その後トモエが来たら朝食が出される。
「コトブキが早く来ておるのは珍しいが、それよりも話しておかねばならん。ここから西にダンジョン街があろう? その西にアトー村があり、更に先にドゥエルト町がある。そこの薬師ギルドへ薬を届けてきてくれ」
「薬ですか? それは構いませんが、師匠が魔法で行った方が早いのでは?」
「妾はマリアの所へ行く用事がある。何ぞか知らぬが呼んでおるのでな、首都であるトゥーラまで行かねばならん。何の用なのかは妾も聞いておらぬが、おそらくは他国に関する事であろう。最近活発な国があるので、それでだとは思うが……」
「ここは<屍人の森>だからねえ。昨日は私達で<澱み草>を抜いてきてあげたけど、戦争があったら大量に増えそうだし、情報は必要よ。戦争があるという情報だけで、増えそうな時期は分かるもの」
「思っているよりも少なかったですけどね。ただ、これからはどうなるか分からないというところでしょうか。深層までは行けてませんし、最深部などもっと無理ですね。流石に瘴気が濃すぎます」
深層の先がまだあったのか。深層でさえ激烈な強さのアンデッドが居るみたいなのに、最深部とか……よく師匠は封印できてるよ。まあ魔女だから当然なのかもしれないけども。
食事後、僕達はいつも通りバイゼル山へ行き3ヶ所の鉱床から金属を掘り出した。ユウヤは予想通り、師匠であるシャルロットさんから肉を獲ってくるように言われたと凹んでいる。まあ、仕方ないと諦めるしかないね。
そんな適当な励ましをしつつ戻ってきた僕は、最後に残っていた自分の棒を作り、残りは伐採用の斧にした。これでやっと武器が揃ったな。本当は防具の分も作りたかったが仕方ない。明日からは移動だし、一旦切り上げか。
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<棒> 鋼鉄の六角棒 品質:5 レア度:1 耐久440
鋼鉄で出来た六角形の棒。なので握りやすく、角があるので打ちつけやすい。その威力は十二分な武器と言える威力である。当然、歩行の補助として使う事も可能
攻撃力19 破壊力5
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<道具> 鋼鉄の伐採斧 品質:4 レア度:1 耐久470
鋼鉄で出来た伐採斧。大木でも伐り倒せる頑丈な斧だが戦闘用ではない。戦闘に使えなくもないが、使ってもそこまで役には立たないだろう
攻撃力14 破壊力3
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棒は簡単に作れるからか品質が高い事が多いなあ。そして伐採斧は戦闘に使うと大きく耐久度が減りそうな気がする。木の伐採だけならそこまで減らないんだから、伐採のみに使うべきだね。何より戦闘用の斧は既にあるし。
おっと、ファルが昼食に呼んでいるから、さっさと食べに行こう。昼食を食べた後、2人には○まい棒を渡してログアウト。昼食を食べて雑事を熟したらログイン。今日は運営ダンジョンへと行こう。
再び1階からスタートし、キャスティは楽しそうにアスレチックを突破していく。アレだね、2度目はそこまで楽しめるものじゃないや。そんな事を思いながらどんどん攻略していき、2階の魔法陣を登録する。
ここからは通常ダンジョンと変わらずに攻略していくのだが、相変わらずのウサギやネズミなのでスルー。ボス戦まで急ぐ。ボスはコボルト軍団なので、【ダークウェーブ】の連発で処理し、さっさと6階の魔法陣へ。
急いで攻略をしているが、何だかタイムアタックをしている気分になってきた。




