0107・リビングアーマー
師匠の家に戻ってくると夕方近くになっており、トモエはソファーのある部屋で細工物を作っていた。トモエの道具をペシペシ叩いたりしてギンが暴れているけど、トモエは気にしていないのか作業に没頭している。
僕はファルに夕食をお願いし、石と木を取り出して盾を作成していく。ファルの持つ盾は現在カイトシールドの形にしてあるんだけど、キャスティもそれが良いそうだ。なのでパパッと作り手渡す。革のベルトなどはゼット町で購入してきている。
キャスティは何度か手直しをしつつ、盾を構えてウォーハンマーを持つ。似合っているというか、古い時代の白い衣で盾や武器を持っているとワルキューレみたいな感じに見える。まあ、体つきはとても天使には見えないほど女性的だけど。
何度かウォーハンマーを振って納得したらしいキャスティは武器を仕舞った。今の力ではこのぐらいの重さの盾でちょうどいいそうだ。盾は重すぎても軽すぎても使いにくいらしく、ちょうど合った重さという物があるみたい。
「これがなかなか難しいのです。丁度よい重さの盾というのはなかなか巡り会えず、オーダーメイドでも合わないという事は多いのですよ。錬金術師のように細部を上手く調整できないと難しいとしか言えませんね。だからこそ盾士は自分に合った盾を長く使うんですよ」
「たとえ今以上に良い物があっても、自分に合ってない盾じゃ信用できないんでしょ? 昔、盾士の男がそんな事を言ってたわ。ふーん、としか思ってなかったけどね。私は盾とか持たないし」
言いたい事は分かるけど、女性に自慢して全く理解されずに空しい思いをするのは、どこででも共通する男性あるあるなのかな? とはいえ、まさかゲーム世界でも聞く事になるとは思わなかったよ。悲しいね。
ファルが来るまでは物作りに勤しみ、ファルが来たら食事をしてログアウトするんだけど、今日のお昼に無かったので煎餅をリクエストされた。困った僕は、ラスティアが最初に食べたおに○り煎餅を2人に渡してログアウト。
キャスティの好みは聞いてないけど、とりあえず納得してもらおう。
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2000年 8月27日 日曜日 AM8:12
今日も雑事を終わらせてログイン。ギンをどけて売上金を回収し、木箱に入れてギンを取り出して蓋を閉める。いつものお約束を熟したらギンと遊びつつ時間をつぶす。
ファルに呼ばれたので食堂に行き、今日は午後からダンジョンに行く事を伝えて食事を終える。キャスティを連れて行かなきゃいけないからね。流石に1階からやり直しは早めに終わらせたい。
食事後。すぐにバイゼル山へと行き、ユウヤと共に鉱床を回って採掘する。終えたらユウヤと別れて師匠の家へと戻り、ソファーの部屋で精錬をしていく。MPが無くなれば【昏睡眠】で休み、ひたすらに精錬する。
今日は全て品質7で精錬できた。そこから青銅にして品質6。鉄を鋼鉄にして品質6……えっ、6!? 本当に6で出来てる!! うわぁ、今までで最高の品質じゃないか。これで良い武器が作れる。けど、まずはMPを回復しよう。
武器製作の前に十分な回復を行い、いざ! 作成開始!!。
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<格闘> 鋼鉄のトンファー 品質:4 レア度:1 耐久370
カタカナの「ト」のような形をした攻防一体の格闘武器。元は農具から派生したと言われるが、真偽の程は定かではない
攻撃力16 破壊力3
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<格闘> 鋼鉄のヌンチャク 品質:4 レア度:1 耐久380
2本の棒の間を縄や鎖で繋げた武器。元は農具と言われるが、真偽の程は定かではない。暗器として使われてきた過去がある
攻撃力17 破壊力4
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おおー……これは凄い。鉄の品質も悪かったけど、鋼鉄になるとここまで変わるんだなぁ。セナには武器を変えさせて、鉄のヌンチャクとトンファーは鎖にしてトモエにあげてしまおう。どうせ品質1だし。
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<棍棒> 鋼鉄のモーニングスター 品質:4 レア度:1 耐久440
先に球がついたメイス、ただしその球にはトゲが沢山ついている。柄は木で出来ているが十二分な破壊力があり、極めて危険な武器である
攻撃力18 破壊力7
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あー……柄が木で総鉄製じゃないし、何よりフランジの方が威力が高いかー。これに関しては仕方ないね、鋼鉄をケチってるからだし。まあ、僕もケチりたくてケチった訳じゃなくて、そもそもそれだけの量しかなかったんだ。だからゴメン、ファル。
ファルは気にしていないようだけど謝罪し、食事を終えた僕達はダンジョンへと移動。その途中でラスティアとキャスティには豆煎餅を渡す。少し不思議がっていたが、食べて理解したのか今は普通に食べている。
この世界ではパンも米もあるみたいだけど、基本的にお菓子は小麦らしい。その所為で米のお菓子は珍しく、それで2人は気に入ったみたいだ。お菓子は甘い物という固定観念があり、塩味のお菓子という意識は無かったんだって。昔の人もそうだったのかな?。
そんな事を考えつつダンジョン街へと入り、迷宮魔法陣に乗ってダンジョンの中へ。入ると妙に人が多いが、どうも稀人以外にNPCも増えているようだ。これも大型アップデートの影響かな? そう思いつつ一気に進んで行く。
キャスティも【身体強化】は出来るので、遅れる事もなくついてこれる。おかげで一気に5階まで下りてボス戦。いつも通り暴走するオーク10体を倒すと、また<オーク玉>が手に入った。あと1個だと思ってたのに……増えなくてもいいよ、まったく。
6階からもどんどん進んで行くんだが、何故かバナナが生っている。大型アップデートの影響なんだろうか? 鑑定してもバナナと出ているので大きな房を丸ごと手に入れインベントリに収納していく。他にもあったので手に入れ、後で食べさせると説き伏せつつ進む。
9階に来たので踊ってもらい、敵を集めて潰していく。キャスティも張り切って頑張り? 何故か沢山の魔物を倒して成果をアピールしている。……何で?。
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種族レベルが上がりました
メイン職業:ネクロマンサー・下級のレベルが上がりました
【屍命召喚】に【リビングアーマー】が追加されます
使い魔:ラスティアのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
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皆のレベルが上がらなかったな。となると、召喚モンスターはレベル15で今は頭打ちか。そういえば錬金術師のレベルも上がってない。種族レベルは30、職業レベルは下級の15で限界なんだな。
他のプレイヤーはまだまだ低いし、ある程度の人が頭打ちになるまでキャップ解放はされないだろうね。
それよりも【リビングアーマー】だ。これが追加された以上、もう1度1階からやり直しだよ。今の内に登録しておいたけど、8割ぐらい一気に魔力を消費してしまった。これじゃどうしようもない。10階へと進みボス扉の前へ。
一旦休憩とし、僕はボス扉の前で【昏睡眠】を使う。全回復して起きると、僕は【屍命召喚】を行った。魔法陣からせり上がってきたのは……木の鎧?。
「シックス・リビングアーマー。だからお前の名前はシグマだ。これから宜しく」
「ガン」
胸を叩いて表現してくれるんだけど、木の鎧だからねえ……何か締まらない。ちなみに種族名はリビングアーマー・ウッドだった。




