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0104・純潔の天使




 「声を掛けようと思ったら急に扉を閉められたのですが? こんな扱いをされたのは久しぶりですよ。それはともかく、ここは<破滅>殿の家だったんですね。何故そこに【色欲】が居るのか知………所有紋?」


 「へ? ……ああ、コレ? これはコトブキに付けられたのよ。ちなみにコトブキってこいつの事ね。つまり【色欲】の悪魔である私はここに居るコトブキの所有物ってわけ。夜伽を求められたら拒否できないのよー。やー、しょうがないよねえ」


 「ちょっと待って! 僕は一度もそんな事を要求した事ないよねえ。完全に濡れ衣なんだけど!? それどころか一度も命令とかした事ないじゃん!! 僕に面倒臭い人を押し付けるのやめてくれる!?」


 「め、面倒臭い………」



 慌てて振り向いたらピンク髪の人は能面みたいな顔で僕を見てるんだけど!? もう一度振り向いたらラスティアが勝ち誇った顔を!!。



 「は、謀ったな! ラスティア! 僕に面倒臭い奴を最初から押し付ける気だったろう!!」


 「コトブキ。貴方は素晴らしい主だけど、面倒臭い奴に絡まれた不幸を呪うがいいわ!」


 「そこは生まれの不幸じゃないのねえ。赤い3倍速の人も生まれと育ちは不幸だから、何とも言えないのよねえ……アレ。怨みと憎しみの気持ちは分からなくもないし」


 「何を言うとるんじゃコイツらは。後、全員既に巻き込まれておるから遅いというのに……。まあ、それはよい。キャスティよ、そなたも納得できんであろうし……ここはコトブキと戦うがよい。ただし天使の力は無しでの。流石にそれを使うのは卑怯でしかないからのう」


 「………確かに。鑑定したところ、大した力も持っていませんね。しかし、どうして【色欲】がこの程度の者に負けて所有紋を付けられたのやら?」


 「うっさいわね。大悪魔に封印されてたうえ、力が抜けていってたのよ。おかげで昔の力なんてまるで無いし、もはや悪魔ですらなくなったわ。文句言っても力が戻ってくる訳じゃないから仕方ないけど」


 「ああ、成る程。流石の大悪魔も腹に据えかねたのですね。自由奔放に性を貪るなど畜生の極みでしかありませんし」


 「誰が畜生よ! 誰が!! だいたい【色欲】の私以上にデカい乳とエロい体しておいて、何言ってんのよ!! 【純潔】って言ったところで処女をこじらせてるだけで、イイ男を見つけたらヤリまくる夢でも見てるんでしょうが!!」


 「な、なななな! 何て事を言うのですか!? わ、私がそんな事を考える訳ないでしょう!! 私は【純潔】の天使ですよ!!!」


 「【純潔】って言ったところで伴侶が得られない訳じゃないでしょうが。どうせ高望みしてる間にこじらせて、気付いたら処女のまま天使にまでなっちゃってたんでしょうけどね! お可哀想に!!」


 「ムキーーーッ!!! もう許しませんよ! 貴女はこの世から消してくれましょう!! 塵一つ残さない様にね!!」


 「流石にそれは困るな」



 玄関で言い争いを続けてたんだけど、向こうの方に超美形のお兄さんが立ってた。浅黒い感じの肌だけど、ワイルド系イケメンって感じ。だけど何だろう、妙なオーラを感じる……というかオーラを無理矢理に押さえつけてる感じかな?。



 「御免なさい。まさかこんなに早くこちらに乱入するとは思ってなくて……」



 今度は白い髪の天使が現れた。どちらも一瞬で現れた気がするので、転移で来たんだとは思うんだけど、何だか正統派の天使って感じがする人だ。美しいけど、何だか寒々しい感じがする。とはいえ背中に光輝く4対8枚もの翼があるんで、何となく最高位の天使な気が……。



 「大天使様、申し訳ございません! しかしながら【色欲】の居場所が分からず、それ故にこちらに来て反応を確かめつつ探し回り、ようやく見つけ出しました。とりあえず今すぐ滅ぼしますので、暫しお待ちを!」


 「だからそれは困るのだがな。暴れているならばまだしも、大人しくしている者まで滅ぼしてどうするのだ? 流石に【寛容】の天使ではないとはいえ、あまりに非寛容に過ぎぬか?」


 「うっ……そ、それは……」


 「という事で、<屍命の女帝>。そこに居る貴女の弟子と1対1で戦わせてあげてほしいのですが、構いませんか? もちろん天使の力は使わず」


 「………ああ、成る程。そういう事か。ならば、良かろう。コトブキ、相手は【純潔】の天使じゃ。一切の情け容赦をするな、全力で勝ちに行け」


 「分かりました」


 「【色欲】を所有する貴方ですか……。例え天使としての力を使わずとも、負ける道理がまったくありませんね」



 僕と【純潔】の天使キャスティは5メートルほど離れて互いに向かい合う。………それにしても、変だな? 先ほど師匠は殺せとは言わず、勝ちに行けと言った。どうして敵を殺せとか、あるいは殺しに行けと言わなかったんだ?。


 もちろん勝てないからかもしれないけど、何かが違う気がする。特に大天使と大悪魔の2人が、何故か割と真剣に見てるんだよ。普通なら余興にもならない程の差がある筈なのに。


 となると、もしかして僕にも勝ちの道筋があるのか? しかし相手は僕の能力を鑑定できて知っている。弱い者が強い者に勝つには、奇襲などの裏を掻く方法しかない。でもスキルは知られているから駄目だとすると、僕のプレイヤースキルでどうにかするしかないだろう。


 でもなー、天使がそんなに弱い筈が無いんだよ。これは困った、どうやって勝ったらいいのか全く分からない。



 「ではお互いに殺すまではせぬように。ギブアップをするか、意識を失ったら負けと見做す。武器は使ってもいいが、先ほども言った通り相手は殺すなよ。では………始め!!」



 成る程、そういう事か。今、分かった! っていうか、速い! 棒を持っていた僕は素早く相手の攻撃を弾く。今のは袈裟切りだったけど、一足飛びに襲ってきたな。一瞬で5メートルがゼロになるって、幾らなんでも反則だろう!。


 剣を返して水平に近い角度で振ってくるが、それをバックステップでかわす。すると途中で止めた剣で真っ直ぐ突いてきた。この人どれだけ多彩な攻撃が出来るんだよ。明らかにこっちが反応できるギリギリで攻撃してきてる。ステータスの差が圧倒的だからか。


 棒を縦に持って滑らせつつ、外側へと剣を滑らせていく。その後、右の回し蹴りを放とうと思ったら、高速で離脱された。あんなのアリ?。



 「ふむ、それなりには出来るようですね。ギリギリとはいえ捌く事は出来ている。その力では及第点というところでしょうか」



 いちいち上から目線でムカツクね。まあ、敢えてそうやって挑発してるんだろうけどさ。悪いけど引っ掛かってやる気は無いよ。<BUSHIDO>における島津や剣豪との戦いはこんなものじゃない。気を抜けば一瞬で死ぬような世界なんだ。それよりは遥かに程度が低い。


 再び一足で詰めてきて今度は水平に薙いできた。僕は再びバックステップでかわすものの、剣を返しながら踏み込み、更にさっきとは逆向きに薙いでくる。僕は後ろに倒れるようにしながら相手の腕を蹴り上げ、地面を右に転がりながら海老のように跳ね上がって正対。呼吸を整える。


 キャスティは驚いた顔で僕を見てくるが、顔から余裕が消えた。マズい、相手が油断している間に足を掬わなきゃいけなかったのに、その余裕すら無かった。そのうえ相手はこちらを侮る事を止めたみたいだし、本格的にマズい。どうしよう?。


 再び静寂が訪れているが、パンパンに膨らんだ風船のようで、いつ破裂するか分からない。その時を今か今かと待っているようでもあり、僕の中でムクムクと起き上がってくるモノがある。


 <BUSHIDO>の中では解放している僕の本質、アレは間違いなく模倣したモノじゃない。<BUSHIDO>の狂気にあてられて、僕の中にあった狂気が目覚めただけだ。いや、誰の心の中にもあるというべきか。


 ソイツが目覚めて僕に囁いてくる。勝つ為の道を。


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