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0101・物作り色々




 シャルロットさんは僕の手元にある物を凝視しつつ、入ってきて話しかけようとし、顔が真っ赤になって止まった。どうやらまだ人見知りの許容範囲外に僕は居るようだ。ま、仕方ないね。そう思い、横に居るラスティアに事情を聞く。



 「それで走ってきたみたいだけど、どうしたの? 勝手にピーラーを持っていくしさ。それプレイヤーマーケット、つまり稀人の市場で売るつもりなんだから返してくれる?」


 「こ、これ! 売って下さい! お願いします!! 先ほど少し使わせてもらったんですけど、凄く便利で綺麗に皮が剥けるんですよ!!」


 「いや、ピーラーって皮剥き器ですから、包丁でやるより綺麗に剥けて当たり前なんですが……。後、僕が作った物は品質が悪いので、シャルロットさんに作ってもらった方が良いですよ? それは品質が悪いなりの練習で作った物ですし」



 僕にそう言われて困ったんだろう。確かに品質の悪い物を買う訳にはいかない。でも、料理の手間も減るし綺麗に皮が剥ける。その狭間で揺れ動いているお手伝いさんを尻目にシャルロットさんが横を通り、ユウヤをどかせて鍛冶場に座る。


 その途端、声が掛けられないようなオーラを撒き散らしつつ、鉄を取り出して加熱し始めた。どうやらピーラーを作る気らしい。一応の見本としてラスティアがピーラーを渡してしまったので、僕は回収を諦めて物作りを再開する。


 かんなを何故凝視していたのか知らないけど適当に流し、採取用のはさみやスコップを作って流す。そうしているとMPが無くなったので、再び鍛冶場の隅で寝させてもらう。それじゃ、おやすみ。


 全回復するまで暇潰しを行い、回復したら起き上がったものの、未だにシャルロットさんは鉄を打っていた。まあ、そう簡単に物作りが終わる筈もなく、しかしユウヤは真剣に見ている。こうしてみると鍛冶師だなぁと思うけど、ユウヤはユウヤだね。


 再び僕も物作りを行い、素材が無くなったので終了した。昼を少し回っている気がするが、一旦師匠の家に戻って昼食を食べてこよう。鬼気迫る顔で鉄を打っているシャルロットさんの邪魔をしないように、僕達はそっと鍛冶場を後にした。


 師匠の家に戻ってスケルトン・クラフターとファルが作ってくれた食事をいただき、今は<屍人の森>で素材を回収している。どのみち<澱み草>を回収するのは僕の役目なので、本来なら毎日見回らなきゃいけないんだけどね。


 師匠も毎日は見回っておらず、適度に間を空けてゴソッと抜いてたらしいとは聞いた。ようするに<澱み草>が溜まってしまい、この<屍人の森>全体が澱んでしまわなければいいみたい。浅い層の<澱み草>さえ抜いていれば安全なんだそうだ。


 本当は深層の<澱み草>も抜いた方が良いんだろうけど、深層の魔物は激烈な強さらしいので、僕達にはまだ無理だ。それもそうで、そもそもまだゲームが始まって1ヶ月も経っていない。まだまだこれからだし、そんなに早く攻略できるとは思えないしね。


 師匠の家に戻って石と木でトンファーやヌンチャクを作り、悪ノリして双節棍や三節棍を作って流す。なぜか格闘武器としても使えるという微妙に不思議な武器となった。



 ―――――――――――――――


 <格闘・棒> 石と木の双節棍 品質:8 レア度:1 耐久260


 二本の棒の間を縄や鎖で繋いだ武器。棒がそれなりに長いので双節棍となる。短ければヌンチャクであり、その程度の違いしかない

 攻撃力9 破壊力3


 ―――――――――――――――


 ―――――――――――――――


 <格闘・棒> 石と木の三節棍 品質:9 レア度:10 耐久240


 3本の棒の間を縄や鎖で繋いだ武器。3本なので棒は長くないが、その為に色々な使い方が出来る。しかし扱いに習熟しないと使い熟すのは難しい


 ―――――――――――――――



 何故かセナが三節棍を振り回しているが、自分にぶつけるばかりなので気にしなくていいだろう。アレは双節棍よりも扱い難くて大変だからね。何故か<BUSHIDO>には冗談のような武器まで練習できるプラクティスモードがあり、それで扱った事はあるんだ。


 実際に使っている人の映像などが確認できるんだけど、あれは少林拳の人達の技だったかな? それを真似て使った事はあるんだ。しかしながら、そこまでして使う武器だろうか? と疑問を持って以降、使った事は一度も無い。


 思った通りセナも飽きたようだし、さっさとプレイヤーマーケットに流してしまおう。コレ系の武器は見栄えが大半だし、後は敵を幻惑するという意味ぐらいだ。無理に使う必要の無い武器であり、決して強いとは言えない。双節棍は別だけど。


 全て作り終わったら暇になったが、夕方には少し早い。トモエもユウヤも向こうで頑張っているみたいだけど、僕はどうしようかな? 町やダンジョン街に行くには時間が足りないし……少し早いけど夕食を頼むか。それと【昏睡眠】で回復しておこう。


 完全回復後、夕食を食べたらログアウト。いつもより早いけど、たまには悪くないね。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 2000年 8月24日 木曜日 AM8:09



 今日はちょっと早いけど、何かがあった訳でもない。たまたま両親が早く家を出ただけだ。そろそろログインするけど、今日も錬金術日和だろう。まあ、現実の外は生憎の雨であり、その所為で両親は早くに家を出たんだけど。


 さて、そろそろログインして…………って、マジで? この音は間違いなく雨じゃん。えっ!? こっちも雨が降ってるの? 何というかさ、凄い偶然と言うべきか、稀に偶然よくある事と言うべきか悩むね。


 ま、とりあえずギンをどけて起き上がり、昨日の売上金を回収する。どうも買い占めが起きなくなったらしく、必要な人が買えたようだ。なぜ止めたのかと思ったら、買い占めなどをやっていると<悪行度>が上がるみたい。


 やっている連中がNPCから売買拒否を受けて、初めて<悪行度>が上がると理解したようだ。<善行度>と<悪行度>はステータスの2ページ目に書いてあり、よく見る1ページ目じゃないから、買い占めていた連中も見落としていたみたい。


 そこはかとなく運営の落とし穴な気がするんだけど、僕の気のせいだろうか? ……まあ、いちいち掘り下げなくてもいいところか。ファルが来たしさっさと売上金を仕舞い、ギンを抱き上げて食堂に行こう。


 朝食を終えたらトモエと一緒にバイゼル山へ。こちらは快晴であり、スッキリ晴れてる。山の天候って変わりやすいと聞くけど、ここは天気が悪かった事が一度も無いから助かるよ。


 そんな綺麗に晴れている景色の中をトモエとユウヤと進んでいき、鉱床で鉱石を採掘する。1日に1度しか採掘できないけど、流石は鉱床だと思える量だよ。掲示板などの会話を読んでいると、おそらく僕達の半分以下しか採掘出来てない。


 鍛冶師の中にはプレイヤーマーケットで鉱石を買っている人も居るみたいだけど、すぐに無くなってしまって常に品薄なようだ。手に入れたらすぐにプレイヤーマーケットに流せばいいので荷物にはならないが、誰もが採掘できる場所の近くに居る訳じゃないからねえ。


 全ての鍛冶師が納得できる程の量がある訳じゃないので、現在も取り合い状態が続いているそうだ。ユウヤなんて随分恵まれており、普通の鍛冶師は鉱石を手に入れたら魔力炉のある場所に行って、お金を払って精錬してもらうんだそうだ。


 なのでその時だけは協力し、割り勘で精錬代を出している。掲示板でその募集があるくらいなんだから、普通の鍛冶師は本当に大変だ。鍛冶師が近くに居る場合は良いけど、居ない場合は1人で代金を用意するしかないし地獄だろうね。


 その所為か、戦闘系に人気のサブ職業は研ぎ師らしい。最初は笑われていたそうだが、このゲーム武器を研ぐと耐久値と切れ味が回復するので、今ではキャラを再作成して研ぎ師にしている人も多い。後は踊り子とか吟遊詩人も意外に多いそうだ。


 踊り子はデバフ、吟遊詩人はバフ担当だからだろうね。ウチのラスティアはちょっと違うけど。


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