消える痛みと幸せ
「レイン? だいじょーぶ?」
「あっ、大丈夫。なんでもないよ。」
あの時のことを考えていたら、ルカを心配させてしまった。
あの時、ルカと契約したことで私は毎日魔法を練習するというはめになっている。だけど、なぜかルカを恨めないし、なんとなく良かったと思っている。ルカは小さな身長と、その見た目が凄くかわいいので、心配そうに覗き込んでくるのは反則だ。
「ルカ、練習始めよう。」
「うん!」
魔法の練習、体の中の魔力を意識することからはじめて、だんだん魔力を外に出す練習、魔法を使う練習へと難易度を上げていった。
今は、いろんな属性の魔法を同時に操る練習をしている。
「やっぱりレインの魔法はきれーだね!」
「そうかな?」
「うん! レインの魔法は世界でいちばん!!」
ルカが言うには、魔法にはきれい、汚いがある。きれいな魔法はそれに比例するように威力もあがるのだとか。持っている魔力以上の攻撃を出せるほど、きれいな魔法を使える人もいるらしい。
「世界にはすっごくきれーな魔法もあるけど、レインの魔法がいちばんきれーだよ!」
ルカはいつも楽しそうに練習に付き合ってくれる。
でも私はそんなルカの笑顔を見ると苦しくなる。この練習は死なないためにやっているだけ。自分から練習しているのも全部、この世界で長く生きるため。こんな中途半端な気持ちじゃルカに申し訳なくて、練習中胸が苦しくなる。
「ルカ……」
「ねぇ、レイン。ボクはレインと練習してる時間がいちばん楽しいよ! レインは急に魔法を使えるようになって、毎日練習しないといけなくなって、大変かもしれないけど、こんな気持ちじゃダメだなんて考えてるかも知れないけど、ボクはありのままのレインが好きだよ!!」
「……どうして?」
「ん~、やっぱりボクとレインは魂で繋がってるから!レインに好きな人が出来ても、レインのいちばんはボクだし、ボクのいちばんもレインだよ!」
ずるい。独占欲丸出しで、当たり前みたいに笑えるルカがうらやましい。でも、それも良いのかもしれない。ずっとルカのそばで魔法を使いながら生きていくのも、少し良いかもしれない。
「ルカは、ずるい。いつも、私にだけ……」
私にだけ甘い言葉をくれる。
「えへへ。ねぇ、レイン。これからもずっと一緒にいてくれる?」
ずっと一緒の約束。きっとこれは呪いより強い約束になる。でも、ルカとなら……
「うん。よろしくね。」
「こちらこそ~! よろしくね! レイン!!」
ずっと感じていた後悔。もっと考えて魔法使いになれば良かった。ルカに申し訳ない。そんな苦しい思いはルカの一言で消えた。これから私は呪いより強い約束と共に過ごしていくのだろう。でも、それが正しいことのように安心が胸を埋める。これからの人生は楽しくなる。私の中のなにかがそう告げていた。
レインの悩み、後悔はなくなりました。
これから二人はどうしていくのか?
次もがんばります!