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第17話 1学年生徒会メンバー登場

「ことっち~ 待ってたよ~」


「名瀬副会長。私にはうらこと という名前があります。あと、距離近いです」


 頬ずりする名瀬副会長にうんざりしながら、火之浦と名乗った女子生徒が生徒会室に入って来た。


「この子が決闘の相手だよ~」

「マジですか」


 小柄で栗色のショートカットで前髪ぱっつんの髪型で幼さを感じさせる。

どうやら俺と同じ1学年のようだが、中学生か服装さえ変えれば小学生でも通用しそうだ。


「この間はどうも……」


 この間とは、校舎裏で周防先輩たちに絡まれていた時か。


「いいよお礼なん」

「余計なことをしてくれて」


「へ?」


 予想外の冷たい言葉が飛んできて、思わず俺も固まってしまう。


「あの時は、例年、行き過ぎた下級生への恫喝についての内偵調査中でした。それを、貴方はお節介にも介入した」


 端的に伝える事のみを言葉にする火之浦さんは、小柄な女の子だが、妙に迫力がある。


「あー、内偵調査中だったのか。でも、なんで周防先輩を?」


「真っ先にトラブルを起こすのは彼だろうと名瀬副会長の助言があった。魂装能力を無許可で行使したところを現行犯で捕えようとていた」


「周防先輩、どっちにしろあの時、生き恥をさらす未来は変わらなかったんっすね。かわいそ」


 俺は残念な先輩の顔を見やりながら、思わず憐れんでしまう。


「あ、あれは派閥の上からの命令で……! それに、不意打ちじゃなければ俺は」


「いや、その後、決闘でもガッツリ俺に瞬殺されたじゃないっすか」

「あれは油断してただけだ!」


 イキる周防先輩を見ながら、名瀬副会長は腹を抱えて笑っていた。


「それにしても、火之浦さんは入学直後から生徒会にスカウトされてたってことなんだね」


「ええ。私は入学成績首席だから、入学式での代表挨拶の事前練習などで、生徒会の皆様と懇意にさせていただいていたので」


「へぇ、凄いじゃない」


 ちゃんと入学式の挨拶を聞いてなかったから、何も覚えていないが言わないでおいた。


「貴方は、何位での入学?」


「俺? さぁ……確認してないな」


 本当は、受験せずに軍から入学をねじ込んでもらったので、適当に誤魔化す。


「予備校の成績優秀者一覧で見た名前でもない。大したことないと判ずる」


 へぇ、この学園に入るための予備校なんてあるんだな。


「じゃあ決闘は、本日の放課後に闘技場にて行います。急なので、立会人のみで観衆はなし。いいわね?」


 名瀬副会長の号令により、部室争奪のための決闘が決まった。


 昼休みがあと10分なので、俺はあわてて教室に戻って弁当をかきこんだ。




◇◇◇◆◇◇◇




「あれ? ミ……虎咆筆頭なんでいるの?」


 放課後に闘技場に向かうと、ミーナが控室前で待ち構えていた。


「私が今回の決闘の立会人だからよ」

「ああ、なるほど」


「ちなみに、周防君は邪魔だから来るなって、2学年筆頭権限で命令しておいたわ」

「一応、周防先輩は当事者なんだけどね」


 最初の内は強者オーラ全開で登場してきたのに、今ではただの決闘の景品だ。

とんでもない勢いで、周防先輩の価値が暴落している。


「それにしても、今度は生徒会にケンカを売るなんて」

「わけあって自分の部室が欲しくてね」


「……いかがわしい事に使うんじゃないでしょうね?」


 ミーナがジトッとした目を向けてくる。


 ミーナには少将であることはバレてしまったが、俺と速水さんの超長距離リモート飽和爆撃の作戦行動が、今後、この学園の地下室を起点にして行われることに合わせて、単に休憩室にしたいからという事は、色んな意味で言えない。


「いかがわしい事って何です? 虎咆筆頭、教えてください」


「にゃ⁉」


 ミーナをからかって遊びつつ、俺は戦闘服に着替えて闘技場に出た。


「今回の闘技場は、市街地型のフィールドとしま~す。決闘条件の決定権は生徒会側にあるので、こちらに有利な場所となっておりま~す」


 名瀬副会長が、おどけながら必要な事項を述べる。


 市街地戦か……


 前回の周防先輩との決闘で、俺が射撃系の能力だと見て、遮蔽物の多いフィールドを選んだって事なのかな。


「ことっちの能力は、室内なら敵なしだよ~ ヤバいと思ったら即ギブアップしないと、後引くから早めにね~」


 ニヤニヤしている名瀬副会長の横で、火之浦さんは澄まし顔で立っている。


「ジャッジは機械判定にて、致命傷ダメージを負ったと判定された者の負けとする。両者、転移魔方陣の上へ。任意の場所に降り立った瞬間から、魂装をまとって戦闘開始だ。なお、フィールドは建物内のみとする。場外に術者が出た段階で失格となる」


「「はい」」


 土門会長の指示により、俺と火之浦さんが魔方陣の上に立つ。


「それでは、はじめ!」


 足元の魔方陣が青白く輝き、2人の姿は忽然と消えた。




◇◇◇◆◇◇◇




 青白い光のまばゆい発光がおさまったので目を開ける。


 首を素早く動かし、周りの状況を把握する。

 どうやら、廃ビルの中のようだ。


 割れた窓から見える景色からすると、ここは1階だな。


「となると、火之浦さんは上の階ってことか。解りやすいなー」


 1人きりということもあり、思わず独り言をもらしながら半笑いになる。

 先ほどまでは推測の一つでしかなかったが、この位置関係から、俺の中で推測が確信に変わった。


 生徒会側でステージを恣意的に決めたのだから、当然位置関係も有利な方を選んでいるに決まっている。


 恣意的なステージ選択、今の位置関係、先ほどの名瀬副会長の言動。


「偉そうに大物感出してたけど、やっぱり子供だから色々と脇が甘いよな~」


『歳はマスターより彼らの方が上では?』

『あ、コン聞いてたんだ。年相応で可愛いってことだよ』


『マスターもまだまだ可愛いですよ』

『そんなこと言ってくれるのはコンだけさ。じゃあ手筈通りにやろうか』


『はいマスター』




【火之浦 ことみ 視点】


 この薄暗いフィールドが私を最も輝かせる。

 火之浦という姓から、炎系統の魂装能力を連想する者が多いが違う。


「魂装発動 どくうなばら


 私の周囲から、紫の毒の霧が発生して、瞬く間に室内を塗りつぶし、さらに廊下や階段を通して建物全体へ広がっていく。


 この闘技場では、魂装能力を抑える作用が働いているが、本気の私の毒を吸えば、瞬くうちにあの世行きだ。


 この建物なら、30秒もあれば私の毒で空間を満たせる。


 それで終わり……



(ボウンッ!)



「 ⁉ 」


 突如、階下から熱線が貫通してきた。


「コンクリートの床を貫通……この威力は粒子砲! 抑制されて、この威力」


(ボウンッ!)

(ボウンッ!)

(ボウンッ!)


「この威力の粒子砲を連発なんて正直凄い……けど、ただ乱発しているだけ」


 こちらの位置は解っていないのか、運任せで、やみくもに粒子砲を撃っているだけのようだ。

 30秒で毒が建物内に回って勝負はつくのだから、結果的に彼のギャンブルな選択は間違いではない。


「良い勝負勘。けど、射線方向からあなたの位置は丸わかり」


 私は毒の霧を気流操作で、砲によって空いたコンクリートの床の穴に向けて殺到させる。


「これなら30秒かからな……」



(ズガンッ!)



 不意に頭に激しい衝撃を受けた。

 まるで、頭部を銃弾で撃ち抜かれたような……


 システムで緩和されているとはいえ、頭部への幻痛によりたまらず地面に倒れる。


『頭部への攻撃により死亡判定。勝者 神谷祐輔』


 審判AIの無感情なアナウンス音声が響き、決闘は終わった。


ブックマーク、☆評価よろしくお願いいたします。

励みになっております。

生徒会のメンバーは書いている時に何故かすぐにキャライメージが浮かんだ。

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