追放された剣士がai に自分の人生を任せた結果wwwwww
「つまりなんだ。君は自分のチームから追い出されたからほかの仕事を受けたい。でもない。一人じゃ第一種の仕事も無理だってわけか」
剣士はそういった。
ここは帝国の首都にある冒険業組合の仕事斡旋所。
その一室で、二人の男がテーブルをはさんで向かい合っている。
一人は二十代後半の青年で、もう一人は三十過ぎの男だ。
青年の名はロイドという。
そして向かいにいる男は、ロイドがこの冒険者組合にくるたびに担当している職員である。
名前はゴルド。
「まぁ、そうなんです。はい」
「まぁパーティーから追い出される人は結構いるって聞くが」
「でも僕はなにもしてないんですよ!」
ロイドが机を叩いて立ち上がる。
あまりの勢いに椅子が倒れてしまった。
だがそれでもロイドの怒りは収まらないようだ。
「本当になにもしていないんだ! 僕たちは一緒にダンジョンに入ったり、モンスターと戦ったりしたし、荷物持ちもした! それなのにどうしてこんな仕打ちを受けないといけないんだよ!」
「わかった、落ち着け。まず座れ」
「これが落ち着いていられるかよ! あ~もう腹立つ! あいつらの顔を思い出すだけでむかつく!」
そういいながら倒れた椅子を起こし、腰かけるロイド。
だがまだ怒りがおさまる様子はない。
そんなロイドを見て、ゴルドはため息をつくとこう言った。
「それで、お前は何級の冒険者だったっけ?」
「え? ああ、一応第二級ですけど……それが何か?」
「なら一人で第一種の仕事をやってもいいぞ」
「本当ですか!?」
「ただし、条件がある」
ゴルドの言葉を聞いて喜ぶロイドだったが、すぐに真剣な表情になった。
どうやら何かあるらしい。
「どんな条件なんでしょうか?」
「実は最近、帝都の外の森にドラゴンが出るという噂があってな。その事実を確認してほしいんだ」
「ドラゴ……」
「もちろん報酬は出す。事実でありドラゴンを倒した証拠を持ってきてくれたら追加で金がでる」
「わかりました。やります」
「よし、決まりだな」
こうしてロイドはドラゴン討伐を引き受けることになった。
しかしこの時の彼は知らなかった。
まさかあんなことになるなんて……。
***
翌日、ロイドは森の中にいた。
場所は帝都から二時間ほど歩いた場所。
そこには小さな湖があり、周囲には森が広がっている。
さらに少し離れたところには村があった。
ロイドはその村の入口まで来ていたのだ。
(さて、ここからどうしようかな)
これからのことを考えていると、背後から声をかけられた。
「あの~すみません」
振り向くとそこにいたのは若い女性だった。
年齢は十代半ばくらいだろうか。
身長は百五十センチほどで小柄。
顔立ちはかなり整っている。
髪の色は金色で長さは肩にかかる程度。
服装は白いワンピースのような服を着ており、頭には麦わら帽子を被っている。
「ここって何という名前の村ですか?」
女性は可愛らしく首を傾げながら尋ねてきた。
「ここはルクス村だそうだよ」
「へぇ~、初めて聞きました」
「君の名前は?」
「私ですか? 私はアイナといいます」
「そうか、俺はロイドっていうんだ」
「よろしくお願いしますね」
笑顔を浮かべながら挨拶をする女性だったが瞬時に豹変し、鋭い目つきになる。
そして彼女はいきなりロイドに向かって剣を振り下ろした。
「うわっと!」
間一髪で避けることができたが、彼女の攻撃はまだ終わらない。
次々と斬撃を放ってくる。
「ちょっ! ちょっと待ってくれ!」
必死に避けながら言うがまったく聞いてくれない。
このままでは殺されると思い魔法を使った。
「【氷壁】!」
呪文を唱えると同時に地面が凍りつく。
すると彼女の足下も一緒に凍ってしまった。
その隙をついてなんとか逃げることに成功したロイド。
だが、まだ安心はできない。なぜなら……。
「くそっ! 追ってきたのか!」
後ろを見ると彼女が迫ってきていた。しかも走っているわけではない。
ただ歩いているだけだ。それなのにものすごいスピードなのだ。
「なんなんだ一体!」
叫びながら走るロイド。そのあとを彼女がついてくる。
まるでホラー映画に出てくるゾンビのようだ。
「俺はなにもしてないだろう。なぜ襲ってくる!」
走りながら叫ぶがやはり返事はない。
「くそぉ! こうなったら!」
覚悟を決めたロイドは立ち止まると振り返った。
「かかってこい! 俺を殺したいんだろう」
両手を広げながら彼女を睨みつける。
これで諦めてくれることを祈ったが、無駄だったようだ。
「あ~、やっぱりダメか」
そう呟くロイドだったが、なぜか彼女も止まっていた。
いったいどういうことなのかと思っていると……。
『グガァ!』
という鳴き声とともに巨大な影が現れた。
それは体長三メートルはあると思われるドラゴンだった。
「ど、どうしてこんなところに!」
驚きながらもロイドは冷静に分析する。
そう、先ほどの女性が呼び出したに違いない。
だから彼女はどこかにいってしまったのだ。
しかし今はそんなことはどうでもよかった。
「こいつはまずいな」
ロイドは冷や汗を流しながらドラゴンを見つめる。
正直、勝てる気がしない。
「こうなったら戦うしかないか」
そう思い武器を構えようとしたその時、
「お待ちください」
という声が聞こえてきた。
声の主は女性のようだ。
振り向くとそこには一人の少女がいた。
年は十五歳くらいだろうか。
背丈は百四十センチほどで小柄。
髪の色は銀色で長さは腰まで届くほど長い。
服装は黒いドレスを着ており、頭には魔女のようなとんがり帽子を被っている。
「あ、あなたは?」
「私はルナ・フォンティーヌと申します」
「え? フォンティーヌ? ひょっとして……」
その名前を聞いたロイドは驚いた。
なぜなら彼女はロイドと同じ公爵家の娘だったからだ。
「今はそれどころではありません。まずはあの魔物を倒しましょう」
「あ、ああ、わかったよ」
ロイドは戸惑いつつも答える。
「まずは私が戦います。ロイド様は援護してください」
「わかった」
ロイドの言葉を聞くと、彼女はドラゴンに向かって歩き出した。
ゆっくりとした動きに見えるが、その速さは尋常ではない。
あっという間にドラゴンの前に立った。
ドラゴンは威嚇するように吠えると、彼女に噛みつこうとする。
だが、それよりも早く動いた。
「はぁっ!」
気合の声を発すると同時に彼女はドラゴンの顔に拳を叩きこんだ。
その一撃でドラゴンは吹き飛び、地面に倒れる。
さらに彼女は倒れたドラゴンに近づくとその首筋に剣を突き刺す。
次の瞬間、ドラゴンの首は切断され、胴体から切り離された。
そしてそのまま動かなくなる。
どうやら完全に息絶えたらしい。
「ふぅ……終わりましたね」
額の汗を拭いながら言う彼女を見て、ロイドは唖然としていた。
(これが第二級の実力か)
自分が戦ったら絶対に負けていたはずだ。
それを簡単に倒してしまったのである。
改めて彼女の強さを認識した。
すると、彼女が近づいてきた。「怪我はありませんか?」
「大丈夫だよ」
「なら良かったです」
笑顔を浮かべて言うと、今度は真剣な表情になった。
「ところで、どうしてあなたはここにいるんですか?」
「実は冒険者ギルドで依頼を受けてね。この森に出るという噂のドラゴンを倒すように言われたんだ。それでここまで来たんだけど……、あっ僕はロイドといいます」
「まさか、本当に出るとは思わなかった?」
「うん、まあ、そういうことだね」
苦笑
もしかすると自分と同じように依頼を受けた人がいるかもしれないとはおもっていたのだが、予想は完全に外れた。
「では帰りましょうか」
そう言って微笑む彼女。
その顔はとても美しかったが、なぜか寒気が走った。
ロイドはその笑顔を見たことがある。
それはかつて彼の婚約者が浮かべたものだ。
だが、目の前にいる彼女はその女性とは違う。
もっと邪悪な何かを感じた。
「どうかしましたか?」
「い、いや、なんでもないよ」
慌てて否定するが、内心では焦っていた。
(もしかしたら彼女こそが本物の悪魔なのでは?)
そんな考えが頭を過った。
しかし、今は考えても仕方がないと思い考えることを止めた。
そして二人は帝都に戻った。
帝都に戻るとロイドはすぐに冒険者組合に向かった。
受付で依頼達成の報告をする。
「はい、確かに確認できました。報酬を受け取ってください」
ロイドはそれを受け取ると、すぐにその場を離れた。
そして宿に戻り、部屋に入るとベッドの上に寝転ぶ。
「疲れた……」
思わずそう呟いた。
それから少しして扉をノックする音が聞こえてきた。
「はい」
返事をすると入ってきたのはアイナだった。
「失礼します。ロイドさん、夕食ができていますので一緒に食べませんか?」
「ありがとう。でも遠慮しておくよ」
「どうしてですか?」
「僕には連れがいてね。その子と一緒に食べることになっているんだ」
「そうなんですか。残念ですね」
「ごめんね」
「いえ、気にしないで下さい」
そう言うと彼女は去っていった。
「さて、これからどうしようかな」
そう呟きながらロイドは横になった。
追放された自分にツレなんかいない
「う~ん」
結局翌朝まで、ロイドは悩んでいた。
(昨日の依頼は正直失敗だった。だけど他に仕事があるわけでもないし……。よし!)
覚悟を決めると彼は立ち上がった。
そのまま外に出ようとする。
しかし、その前にアイナが現れた。
「どこに行くつもりなんですか」
宿屋の娘ながらロイドのことよく気にかけてくれる。
「い、いや、ちょっと散歩に行こうかと思って」
「嘘ですよね」
「…………」
図星だった。
「やっぱり。ロイドさん、最近様子がおかしいと思っていたんですよ」
「そ、そうかい? そんなことはないと思うけど……」
「いいえ、違います。だっていつもよりぼーっとしていますし、それに話しかけても上の空でしたし。まるで何かに悩んでいるみたいでした」
「……」
見事に言い当てられ、ロイドは何も言えなかった。
「悩み事でもあるんですか?」
「……あると言えば、まあ、うん、パーティーを追放されてしまったんだよ」
仕方なく本当のことを言うことにした。
すると、
「え? ロイドさんが!?」
驚いた顔をする彼女。
「ど、どういうことなんですか?」
「言葉通りの意味だよ。実は……」ロイドは説明した。自分がリーダーのクロードたちに追い出されたこと。それにより収入がなくなったので、こうして途方に暮れていたことなどだ。
話を聞き終えると彼女はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「……分かりました。それなら私のところへ来てください」
「だからお金がなくて……」
「私がロイドさんの面倒を見ます」
その発言を聞いて、ロイドは目を丸くした。
だが、すぐに我に返る。
「それはできないよ」
彼女の申し出はありがたいが、受けることはできない。なぜなら彼女の両親に迷惑をかけてしまうからだ。「僕のことは放っておいてくれないか」
「嫌です」
即答される。
そして続けて彼女は言った。
「私はロイドさんに恩返しがしたいのです」
「え?」
「私の父はかつて冒険者だったらしいんです」
「ああ、そういえば聞いたことがあるね」
確かアイナは父親と二人で暮らしていたはずだ。その父親はかつてA級の冒険者としてかなり有名な人だったらしい。
「でも数年前に大怪我をして引退して宿屋を始めたんです」
「怪我をしたのか」
「はい。それ以来、父の体調が悪くなって……。今は私の頑張りで何とか生活できている状態です」
「なっ!」
予想外な事実を聞かされ、絶句してしまう。
「ロイドさん、お願いですから、うちの宿に来てください。でないと心配で……」
泣きそうな顔で言う彼女を見て、ロイドは悩んだ末に答えを出した。
「わかった。君のところに世話になることにする、でもお金はどうにかするから無料っていうのは止めてくれないか」
ロイドの言葉を聞くと、アイナの顔に笑みが広がる。
「ありがとうございます」
「こちらこそよろしく頼むよ」
そう言うとロイドはアイナに連れられて、彼女の家へと向かった。
その後ろ姿を遠くから見つめている者たちがいた。
「かかったな」
それはロイドを追放した張本人、クロードたちであった。彼らは最初からロイドを狙っており、追放も罠だったのだ。
翌日になると、今度はロイドを騙した女性冒険者が彼の元を訪れた。そこで彼女に事情を説明すると、
「私もあなたのことを助けます」
と言われた。
その日はそのまま別れたが、翌日からは彼女が泊まっている高級ホテルにまでロイドを呼び出した。そして部屋を取ると、そのまま彼を自分の部屋に招いた。
それからはずっと二人きりで過ごしている。
終わり