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 察しが良いのに鈍感なロミナとの夕食会が終わり深夜。

流石に来てすぐの街で暗躍することはしない。


 特に、今ここは既に神聖教の懐。緊急時以外は冒険者としての顔だけを出す。

もちろん、神聖騎士殺しの四人組とやらも、できれば冒険者として接触したい。


 勘違いはされるかもしれないが、セナは四部屋に防音の結界を張り、その日はスライムで通話をして作戦を話し合った。

 ちなみに、開始五分程でユゥリとラングは寝落ちした。


◇◆◇


 次の日。ロミナは神聖騎士としての仕事の傍らで、セナ達の街案内の続きをしてくれた。


 ロミナは街の裏にも目を行き届かせているらしく、神聖騎士の中では街の人々との距離も近い方だった。


「あっちの露店で売っている物は全て偽物で価値はないのに、それでも高額で売りつけようとするぼったくりだ。気をつけろ。」

「ロミナちゃん!客が減るようなこたぁ言わんでくれー!」

「ならもっと値段を下げろ!あと、神聖騎士の人形は許可を通せと言っただろう!」


 本来であれば神聖教のお偉いである神聖騎士にこんな口は利けない。

しかし、ロミナはここの街で生まれ、育ち、騎士となったことで、街の人たちに分け隔てなく、隣人のように接しているという。


「ふぅ、まったく」

「ロミナさんは慕われているんですね。」

「……まあな」


 セナの言葉にはにかむロミナ。

普段の騎士そのものといった雰囲気とは違う、年頃の女の子といったような様子に、セナは見惚れ———


「あでっ!?」

「そろそろ目ぇ取るわよ。」


 ユゥリに折檻されることになった。


◇◆◇


 昼も過ぎ、セナ達は一旦ロミナと別れ、冒険者ギルドに顔を出すことにした。

 特に依頼を受けるつもりはなく、情報収集を目的としていたのだが。


「それは機密です。それは禁則事項ですね。」


 ギルド内図書を漁っていても何もなく、受付に聞いてみてもこんな返答しかなく、神聖教に関することは殆ど何も出てこなかった。

 教典やらはいくらでも出てくるのに、騎士どころかB以上の冒険者の名前すら出てこなかった。


 何度も聞いているうちに、ギルド職員の目が険しくなってきたため、ほどほどにして依頼票を見ることに。


「……?討伐が、ない?」


 不思議なことに、雑用系の依頼しかなく、それもB以上の依頼が存在しなかった。

 それを不思議に思っていると、後ろから声を掛けられた。


「もしかして外からの人?」

「……」

「ああ、警戒しないで、僕もここに来たのは半年前くらいで、君みたいにいろいろ違いに戸惑ったんだ。」


 警戒心を表情に出しながら振り返ると、そこに立っていたのは全身を金色の鎧で包んだ『盾持ち』

 神聖騎士のような気品ある色ではなく、金箔でも貼り付けたかのような偏りの多い斑な金。

 髪まで同じような金色だったから、少し驚いた。


「僕はフリソス・G・ヴァン・ザハブ。気軽にフリソスと呼んでくれ。」

「はぁ、よろしくお願いします。Gさん」


 なぜか警戒心が解けきらないセナは、下からねめつけるような態度のまま、握手する。

 当然、そんなナメた態度を取られたら誰だって距離を取るはずだが


「ああ、よろしく!」


 Gはまさかの笑顔で握手を返してきた。



「で、何故討伐系の依頼が無いんですか?」

「うん、この街には神聖騎士率いる神聖教の兵士が大量にいるのは知っているね?」

「まあ、知ってますね。」

「神聖騎士は管轄の領地の魔物を処理するのが一番と言ってもいい仕事だ。その影響で魔物は常に枯渇状態。仮に発生してもすぐに訓練のために狩られてしまうんだ。」


 Gの言っていることには説得力があった。

しかし、魔物の脅威は南の方が強い。騎士の訓練とはいえ、魔物の一掃など容易にできることだろうか。

 そう思っているセナの表情を呼んでか、Gは得意げに話を続ける。


「ここは聖アルマ法国の中でもまだまだ魔物が弱い地域だからね。もっと南に行けば強い魔物が出る。そっちなら討伐も多少はあるんじゃないかな。」

「では、ここの冒険者ギルドではあまり稼げないと?」

「うーん、金払いは良いから、雑用でも食っていけるし、なんでも屋みたいに思われているから、変にプライドが無ければ稼げると思うよ。僕なんてここでこの装備を手に入れたわけだし。」


 そう言って全身のギンギラギンの装備を見せつけるG。

一見すればたしかにすごいのだが、明らかに本物の金ではないのが見て取れるため、少しも尊敬の念が沸かない。

 というよりも、雰囲気なのかオーラなのか、セナの中でGに対する警戒は一切薄れない。


「どうだい?僕と一緒に何か依頼を受けて、親睦を深めようじゃないか。」


 この男、顔は笑顔なのに目が一切笑っていない。

自分と他人の境界がはっきりしているタイプの目。

 言ってしまえば、同行した瞬間にでも自分が食い物にされると確信してしまう顔。


 信用のしの字も無いその顔を、セナは信じることはしなかった。


「いえ、結構です。仲間がいますので、こちらで自由にどうにかします。では」


 そう言ってそそくさと離れたセナ達は、無表情で見送るだけのGを振り返ることもせず、そのまま冒険者ギルドを去った。

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