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街を歩いていると、色々な人とすれ違う。
セナはレベル3の『鑑定』でその人の持つスキルやステータスが見られる。
魅力的なスキルがいっぱい並んでいる。
こんな地方の片田舎みたいな土地じゃ、【固有スキル】なんて持ってないだろうなとは思う。
それはそれとして、珍しいスキルは貰う。
街行く人々に、これと言った怨みは無い。だが、誰しもがセナを見捨てた世界の住人で、セナにとっては『憎悪の対象』。殺さないだけありがたいと思うべきだと思っている。
セナは、五万以上の今まで持ったこともない金を手に、武器を買いに店を訪ねる。
鍛冶屋ではなく、鍛冶屋からそこそこの武器や防具を買って仲介する店。
セナとしても、武器は必要だ。
今持っているスキルの『剣技』があるから、これだけでも強くなれるはず。
「片手剣と、バックラー一つずつ、胸当てと脛当て、小手、兜が欲しい。あと、一般的な大きさでいいから丈夫な袋を。」
「全部で3万2千エル。」
「はい。」
「……まいど、初回サービス。剣の整備用の砥石だ。」
「…………ありがとう。」
セナは簡単に買い物を済ませて、店を出る。
その後、店主に何故か『剛腕』や『健脚』などのスキルが発現したという噂が立ったが、別の話。
◇◆◇
セナは再び、ゴブリン達の【巣】へ戻っていた。
あの3人の女達の元へ。
「……さっき、剣を買ってきた。」
聞こえてるのかもわからない。
目が潰れていて、声も出せないから。
精神が崩壊してるかもしれない。
それでも、セナは淡々と語る。
「生きたいやつはなんでもいいから返事をしろ。うめき声くらいでも出せるだろ。」
『……』
「なんでもいいが、俺は他人のステータスからスキルを奪うことができる。まだまだそれを知ったばかりだから、持ってるスキルもショボいが。もし、お前らが望むなら、一緒に連れて行ってやる。そして、『再生』のようなお前らの望むスキルを手に入れたら、お前らを元に戻してやる。」
『……』
「お前らをこんな目に合わせたやつに、復讐したいと思わないのか?」
『…………』
最後の質問に、1人だけ反応した。
他の2人は、無反応。
一つ分かったのは、最初から話を聞いていたのが、反応を示した1人だけだったということ。
他の2人は、完全に何も聞こえてない。
死んではいないが、心が壊れて何にも気づかない。
「聞こえてるのか?」
「…ぁ……ぁぅぅ」
「一緒に行くか。」
「……ぁぁぁ。」
反応のない2人からステータスも、スキルも、属性も奪い、首から上を潰して介錯した。
この2人に家族がいて、見つかってしまったら、誰も幸せじゃないから。
「『鑑定』」
『ユゥリ・ハイドランド 17歳 女
ステータス【50】→【170】
パッシブスキル
『剣術』レベル3
『体術』レベル2
『軟体』レベル2
+『魔力増強』レベル3
+『強化』レベル2
アクティブスキル
『剣技』レベル2
+『闇魔法』レベル3
+『強化魔法』レベル2
固有スキル
【不動】精神的ダメージへの耐性が強まる。』
殺した2人から奪ったステータスをそのまま移す。
「この固有スキルがあったから、どうにか耐えられたのか。しかし、普通にスキルとしてありそうな固有スキルだな。」
「……ぅ、ぁぁ。」
「簡単な引き板を作ったんだ。腰に悪そうだけど、当分はそれで連れて行く。ゴブ……魔物とかを殺して解体する時に、お前を抱えていたら大変だからな。」
セナは、あの街へはもう戻るつもりがない。
人を2人、いや、3……実質的に十数人殺している。
事件になるのも時間の問題だ。
だから、旅をしながら、できるだけ多くの人間を殺して、全人類への復讐を行おうと思っている。
そのための最適解はきっと、移動しながら、徐々に殺すこと。
「……」
スライムやゴブリンのスキルはいくつも集まったが、肝心の『使役』系が無い。
セナも基本的な魔法なんかは使えるようになったし、武闘系も使える。
旅の道中、スキルについて考える。
スキルのレベルは10段階。
1は覚えたてで、普通持ってるスキルは2、使い込んでたら3になるし、修行次第で5から7までは上がる。
そこから先は未知の世界。
10のスキルは【固有スキル】と同じくらいだし、【固有スキル】は10のレベルと同じ扱いになる。
だからみんな羨む。
セナの強奪スキル『究極的暴君』は奪ったスキルのレベルが上がらない。
セナがどれだけ訓練しようと、一切レベルは上がらない。
重複して奪おうと、レベルが足されることはなく、ストックするだけ。
スキルのレベルが上がらないのは、セナの知らない話。
まだまだ使い込んで無いスキルの詳細なんて知ることは無いから。
また、スキルと同様、属性も進化する。
【火】が【氷】へと進化するような、そんな軌跡を描くわけだが、これもセナの属性は進化しない。
『究極的暴君』は他者の可能性を奪い取ることでしか強くなれないチカラということである。