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気持ちをぶつけあってからラングは日常会話くらいならしてくれるようになった。
それで、セナはある程度話すべきことを話すことに。
帰ってきた二人に正座させられながら、昼食を食べつつ話をする。
「つまり、あんたにはステータスやスキルを奪ったり与えたりできるスキルがあって、それを使って私の【金属操作】を取ろうとしたけど、私に情が沸いてできなくなったって?馬鹿なの?」
「馬鹿だよね。セナ。でも次馬鹿って言ったら私が怒るから。言わないでね。」
「そうです。セナ様が甘いとはいえあなたは奴隷でセナ様所有。忘れてはいけません。」
「う、うおう。」
二人の説教の波動にあてられ、ラングもしおらしくなる。
セナはそのまま昼食を食べ、ラングへの説明を続ける。
「これからはラングには俺の持つ鍛冶系のスキルと、最低限のステータスを渡す。それを使って、できるだけ剣を作ってもらいたい。」
「う、おう。」
「で、できればその合間とかにユゥリ達の物も作ってもらいたい。いや、逆の方がいいか。ユゥリ達の装備を作ってもらう合間に剣を作ってもらう。」
「おう。」
セナの言葉に了承するも、まだまだ情報の整理が終わっていない。
ラングにとってセナの話は荒唐無稽というか、他人から聞けば鼻で笑う程度の話だった。
それが事実なら、国一つとるのだって簡単なのに、仕事のことを話して当然のように笑いあっている目の前の三人があまりにも異質で、それが気味悪さを際立たせていたから。
「ということで、はい。」
「わぷっ」
ラングの頭に手を当て、ステータスとスキルを渡す。
通常の鍛冶スキルに加え、【固有スキル】である【成形】【収蔵】なんかも渡す。
それを自分のステータスを見ることで確認しているラングは、驚いた顔をしながら
「こ、【固有スキル】まで渡してくるなんて、もしかして私に惚れてんの?」
「そそ、セナは惚れ症だから。」
「ええ、たらしなのかたらされなのかわかりません。」
二人の冗談を真に受けたラングは少し頬を染めてうつむいてしまった。
◇◆◇
ラングには【四季スライム】の一匹、【秋スライム】を預けて留守番してもらった。
留守番はユゥリと一緒で、【夏スライム】も一緒だから、何かあっても連絡面は問題ない。セナ以外。
だが、今回はベルモットと【春スライム】が一緒にいるため、セナのスライム音痴も解決した。
冒険者ギルドで噂やらを聞き取りながら、鉱山への入場手続きをしてもらい、無事再び鉱山に潜ることになった。
前とは違う構造で、少し戸惑いつつも順調に進む。
道中では魔物を見つけ、スキルやステータスを奪って殺した。
坑道内での魔物は岩壁から生まれるゴーレムが多く、人間で言う胴に顔のある独特な人型?魔物。
手に入るスキルは【ゴーレム】と、たまに【ゴースト】もある。
これは、ゴーレムにゴーストが憑依している状態ということなのかもしれない。
ゴーレムは動きが鈍重だが、頑丈で生命力も強い。
ハンマー系の武器が有効で、剣はあまりお勧めされない。
だから、セナも有り余るステータスにものを言わせてぶん殴って倒している。
もちろん、ステータスを奪った後の脆いゴーレムをだけど。
そして、倒れたゴーレムは金属類を巻き散らして死に絶えるため、それも収穫になる。
何から何まで素晴らしい魔物だ。
「セナ様。次は私が」
「いや、スキルもステータスもいい感じだから、まだ俺が戦う。鉄とかを拾って【異空箱】に入れといてくれ。」
セナが得た【固有スキル】の【異空箱】はセナの魔力量で容量が変化する。
そのため【異空箱】があればどれほどの量の金属でも簡単に持ち運べるということになる。
なにより、箱状であるため、ベルモットに渡して、ベルモットが入れてもセナの手元に戻るということ。
便利な魔法やスキルは数多くあっても、これはかなり上位に食い込む良いスキルだ。
「ゴーレムの召喚もやってみたい。というか、使役系は召喚以外のスキルもあるはず。」
「『調伏』『支配』、セナ様も持つ、『隷属魔法』なんかもそれですね。」
「お、うん。」
どこで手に入れたか忘れた『隷属魔法』これを使えば、人間を問答無用で隷属させ、奴隷として捕まえられる。
そういう魔法なのは知っているし、きっとセナの生来のスキルと組み合わせればとても強力なシナジーをもって、国すら轟かせるものとなる。
それでも、セナはそれをする気はない。
「『隷属魔法』を魔物にも使えたらな。」
「使えないのですか?」
「え?だって人間専用のスキルで……」
「人間専用……私が鑑定したものには、そのような記述はありませんでしたよ。」
「……え?」
人間専用スキルというのが、ただのセナの先入観なら。
例えば、ゴーレムやウルフなんかにも『隷属魔法』が使えるのなら。




