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 奴隷を買う目的は希少なスキルを目的としたもの。

【固有スキル】は自己申告か高レベルの【鑑定】が無いと判明しないため、奴隷にも掘り出しはある。


 特に、犯罪が原因で奴隷になった犯罪奴隷なら死んでも心は痛まない。

問題は孤児が奴隷になった場合や、身売りの奴隷の場合、スキルを奪った後もそれなりに面倒を見ないといけない。


 かといって、買う前にスキルを奪うのもちょっとアレだから。


と、そんな情けない理由でユゥリ達には調査を行ってもらい、犯罪奴隷で固有スキル持ちの者を探してもらっていた。


「はいぃ、こちらがご注文にあった死罪級の奴隷です。お値段は金貨で30枚といったところです。どうです?」


 見に来た奴隷商は腰の低い嫌な笑みを浮かべている男が経営しているところで、紹介された奴隷はユゥリが事前に調査していた奴隷だった。


 連れてこられたのは人間の女で、年はセナよりも上の二十代中盤といったところ。

 身綺麗にしているものの目は沈んでいて精気は無い。


「名前はラング・ランファン。歳は24で罪状は『国家転覆未遂』。スキルもそこそこでステータスも大したことがありませんが、見た目は悪くないです。ま、歳がアレだし罪状もアレなんでお貴族様には売れません。」


 その女、ラングを【鑑定】で見てみると、ユゥリの事前調査にあった通りの【固有スキル】があった。


【金属操作】


 名前の通りならセナが求めているスキルと言っても過言ではない。

これがあれば、剣も鎧も自由自在だ。

 そして、他のスキルを見る限りこのスキルを使って鍛冶的なことをやっていたらしい。『錬金』も『鍛冶』もそこそこレベルが高い。


「買おう。」

「は!はいぃ!!」


 奴隷商は急いで契約書を持ってきて、セナは迷いなくそれにサインをした。


◇◆◇



 ラングはセナ達の宿に来ても、一言もしゃべらなかった。

虚空を見つめて何も考えてないような顔をしたまま、無言でいる。


「精神が壊れてるとか、そういうことなのか?」

「生物的反応はありますから、目や耳に問題があるわけではありませんね。」

「なんかびっくりさせたらいいんじゃない?」


 三人でいろいろと話し合い、どうにかラングに話をさせようと相談する。

というのも、このラングという女からスキルを奪って殺すのは簡単だが、例えばセナのような冤罪の被害者ならそれは寝覚めが悪い。


「ちょっとかわいい子を見たらこれなんだから~。」

「ふふ、私はメイドでこの方は奴隷ですから、対等な相手はユゥリ様だけですよ。」

「え~!そっかそっか。ふふっふふ。」


 ベルモットのユゥリ使いがうまくなっている。


そんな微笑ましい二人を横目で見ながら、セナはラングに手で触れる。


「【視覚共有】」


 神聖教との闘いで手に入れたスキルの一つを使ってラングと視界をつなぐ。


視界が分割したかのような状態になり、セナは自分の顔が見える。

 つまり、ラングはセナの顔を見ているということ。


「『光剣』」


 手持ちの剣を光らせ、切っ先をラングに向ける。


「俺は殺しても罪に問われない奴隷を殺すのが趣味でな。残念だが死んでもらう。」


 そう言ってじりじりと切っ先を近づけていく。

剣を向けたからではなく、セナの棒読みを聞き、ラングは目を閉じ、服の裾を掴む。


「よし、耳も聞こえるな。で、なんでそんな壊れたフリをしてるんだ?」


 目も耳も脳みそも正常に稼働しているのを確認した。

というか、セナはそれを疑ってはいなかった。


 目は伏せていて、廃人のようにはしていたが、セナを見たとき、セナの買うという発言を聞いたとき、ベルモットやユゥリを見たとき。

 心拍や息遣いに明らかな変化があった。


 セナの耳は聞き逃さずそれを判別し、ラングの正気は証明された。


「諦めて話してくれ。例えば冤罪の話なんか、俺の中では熱い話題だから。」

「セナ様。さすがに趣味が悪いと思います。」

「そうそう、シャイなだけかもしれないじゃん?」

「……なにが目的?」

「「!?」」


 ラングは観念したらしい。

明瞭な会話文に二人が驚いているが、それは置いておいて。


「ラングに専属鍛冶師になってほしい。俺の武器を作ってくれ。」

「……っ。あんたも、そういう人なんだ。」


 セナの答えが気に入らなかったのか、ラングはそう言うとその場にしゃがみ込み、その日はそのまま動かなかった。



「どうしたものか。」

「やっぱり奪って殺して隠した方が早いんじゃない?」

「流石に尚早ですが、非協力的ならば……」


 ユゥリとベルモットの二人は、ラングを処分する気が強いらしい。

とはいえ、甘ったれたセナにそんな選択は取れるわけもない。


 セナは絶対に話を聞いて、絶対にラングを専属鍛冶師にする気を固めてしまっている。



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