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 レッドゴブリンの構成員約53人を拘束、無力化して、強制的にブルーオークのアジトへと連行した。

 こちらは比較的普通の屋敷、かなり裕福なやつが住んでそうな、この町では五番目くらいにでかい豪邸。


 事前に調べて、間違いなくここがブルーオークのアジトだとわかっているため、躊躇はしない。


 数万という規格外のステータスを乗せた火魔法による豪快な放火。


「【炎龍昇】!!」

 

 レベル3の火魔法を全力で放出。

豪邸は中心から半径20メートルほどの火柱が発生したことで半壊、中にいた人間の反応は三分の一ほどが消えた。


 そこで、セナは大きな声で


「レッドゴブリンのダグだ!!ブルーオークのゴミクズども!皆殺しにしてやるから逃げるんじゃねぇぞ!!」

「いっ、おま、なんのつもりだ!」

「このままじゃ俺ら、やつらに殺されちまう!どうしてくれるんだ!」



「知らん。死ぬ気で戦え。そしたら生き残れるかもな。」


 レッドゴブリンのやつらの拘束を解き、土塊の剣を何本か作る。

 そのまま、吐き捨てるように言い残してセナは大きく跳躍しその場から離れた。

豪邸から出てきたブルーオークたちは鬼のような形相でレッドゴブリンのやつらを睨み、各々武器を手に襲い掛かっていった。


 元々が犬猿の組織。

そこに投下された宣戦布告。

 ブルーオークたちの殺意はとどまるところを知らず、レッドゴブリンたちはものの数分で皆殺しになった。


 遠巻きに見るだけだったセナは、【鑑定】でステータスを観察しながら息を吐く。


「死にかけてもスキルは習得しなかったか。ステータスは奪ったし別にいいけど。」


 相手は全員、救いようのないクズばかり。

セナにとってはステータスの養分になればそれだけで十分。

 死ぬのも殺すのも大した差はない。


「シッ」


 『健脚』レベル1で強化した足で走り出し、素手でブルーオークの数人からステータスとスキルと属性を奪う。

 練習しつくしたこの作業、ミスはない。


「なっ、敵しゅ」

「5人っ、いや、7人やられっ」

「なんだこいつは!」


 瞬く間に表に出てきた16人が死に、それを豪邸から見ていた残りのメンバーも見ていた。


 セナはそれも見ている。


 豪邸の中に一足飛びで侵入し、窓ガラスとともに一人、壁に突進するのに巻き込んで二人、階段を駆け下りながら一人。

 ドアにめり込んで一人、廊下ですり下ろされて一人、3階の窓から吹き飛び二人。

 侵入してから5分未満で、残っていた12人も皆殺しにした。


「妙に多いな。聞いた話の三倍はいるぞ。」


 殺したやつらの体にはちゃんとブルーオークのタトゥーがあった。

だから、構成員には間違いない。


 そして、まだ生命の気配を感じる。

この豪邸の中に1。豪邸の地下に、10以上。


「ぅおらぁ!!!」


 セナの背後から怒声が聞こえ、大きな斧がセナの脳天を叩き割ろうと迫る。

しかし、今のセナの動体視力には止まって見える。

 

 あえて紙一重で回避したのち、地面に刺さった斧の柄を蹴り壊した。


「くっ、お前、見ない顔だが、どこの組織の差し金だ?」

「言ったろ。レッドゴブリンのダグだ。」

「馬鹿にするな。ダグとは顔見知りだし、レッドどもだけじゃない。ほかの街の組織にもお前みたいなやつはいなかった。」

「……」


「答える気はないか。」

「俺はお前らを殺しに来た。理由は特にない。」

「……は?」

「で、俺からの質問だが、お前らの人数多いな。なんでだ?」


 質問に答えたから質問していくスタイル。

礼儀とかそういうのではなく、単におちょくっているだけ。


「最近、この町に流れ者が多くてな。そういうやつらをスカウトしていったらこうなった。お前、名前は?」


 流れを読んだらしい。

意外とノリの良いやつのようだ。


「セナ。ちょっとした集団の長をやっている。で、地下には何がある?」

「どうやって知ったか知らないが、地下には捕まえて奴隷にした女子供がいる。俺を見逃せばそいつらを譲るぞ。」

「殺しても俺の物にできるのに?」

「……そうだな。だが、お前は取引に応じなければいけない。」


 男がそういうと、セナの足元に紫に光る魔法陣があらわれ、光の魔力が足から膝まで這い上がる。


 魔力の反応はなかった。

セナはある程度周囲を警戒していた。

 魔法を使うつもりなら即座に頭を潰すつもりだった。

それゆえに油断した。


「これは俺の固有スキル【呪縛】。通常の闇魔法とは違い、俺が不利になればなるほど相手に回避不能な呪いを課す。しかし、そんだけやって足だけとは、どんなバケモンだ。」


 セナの足を這う魔力は、セナの足を強く固定して離さない。

痛みも感覚も無いので問題はなさそうだが、膝から下が動かない。


 それも、相手のスキルの効果らしい。


セナが強い、情報をべらべらと吐く、味方が全滅している。

 男にとってはあまりにも不利な状況だからこそ、この呪いは深く刺さる。


「悪くないスキルだな。」

「ああ、これ一つで裏組織のボスになれるくらいには便利なスキルだ。」

「じゃ、もらうぞ。」


 セナは剣で自分の左腕を切り、それを右手で男に投げる。

突然のことで驚いたのか、男はその手に触れてしまう。


 その手に触れてしまったが運の尽き。

男の持つステータス、スキル、属性はすべてセナの物になる。


 当然、【呪縛】は解除され、男はその場で絶命する。

地上の豪邸で生き残ったのは、セナ一人だった。


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