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 夜の街は静かで、女の子を担いだ男が歩いていても気にするものが居ない。


 門兵には事情を説明したし、ギルドの方も緊急時になら夜も開けてもらえる。

 いや、盗賊は皆殺しにしたし、女の子は保護してあるから、緊急性は無いのか?


「年頃の男の家に年頃の女の子を一晩寝かせるのはマズいから。」


 適当な理由を見つけて、セナはギルドへと入る。


「はーい、ギルド夜の部(意味深)です!」

「昼の……大丈夫なんですか?」

「セナさんの帰りが遅いからですよ!心配したんですからね!」


 盗賊の討伐を受けた時の人だった。


「普通数日かかるのでは?」

「まぁ、それはそうなんですけどね。この案件は場所の特定も出来てたんですけど、構成人数が不明でしたから。」

「盗賊は全員倒しました。この子は誘拐されていた子らしいです。恐怖で眠っているのかと。」


 適当な嘘をついて少女を預ける。


「死体はまだ森の方にあるので、明日にでも回収します。」

「でしたら、ギルド職員を数名同行させて、荷車にて回収しましょう。盗賊の持ち物等は」

「武器や装備品、宝などは回収しました。」

「必要物以外はこちらで買い取りますよ。」


 木箱に詰めている宝をドンッと机に置いて、中から一つ一つ取り出す。

 金、銀、硬貨、鉱石、宝石、魔石、エンブレム……


「なんだこれ。」

「これはかなり強力な『紋』の魔法を使った物ですね。かなり珍しいタイプです。刻印されてるのは……『鑑定』レベル5ぉ!?」


 今見ているエンブレムについて。

魔法には、【属性】の前段階で【術】【砲】【紋】【陣】の四種類に分かれる。

それぞれが魔法の形式なのだが、【火魔法】レベル1でも4種使うことはできる。理論上は。

難易度で言えば【砲】→【術】→【陣】→【紋】くらい。


【砲】は射出する魔法全てに当てはまり、【火球】などが当てはまる。

【術】は不定形であり自由な魔法、【雷獣牙】など。

【陣】は属性を介さない特殊枠で、魔力を注げばある程度の魔法の発動を簡略化できる上に、【陣】がそこにあれば【属性】持ちでなくても属性魔法が使える。

【紋】は物体に魔法を閉じ込める魔法で、使用者の魔力を必要とせず使用できる。『付与:炎』などが一般的だが、たまにスキルを封じ込める場合もある。


 そして、今話題のエンブレムには、【紋】で『鑑定レベル5(一般人の努力の終着点)』が刻まれている。


『レベル5の鑑定』とは、相手のステータスの詳細から、スキルの内容、固有スキルの有無、持ち属性の種類。だけでなく、身長体重、スリーサイズ、血液型、持病の有無、足のサイズ、肩幅。


そして、『スキルツリー』が見られる。


「こんなのを十数人程度の盗賊が持ってるなんておかしいですよ。セナさん、これ預かっていいですか?」

「構いませんよ。不安要素は無い方がいいですから、ギルドの方で調査してください。」

「ありがとうございます。」

「俺は……この指輪とネックレスと、使えそうな硬貨だけを貰っていきます。では、また明日。」


 同じデザインの指輪が二つ。

サイズはやや違うが、シンプルな銀の円が美しい。

 ネックレスの方は、小さな飾りのついたもの。


◇◆◇


「ユゥリ、ベルモット、ただいま。」

「ぉぁぇぃ」

「おかえりなさいませ。」


 宿へ戻ると、夜も遅いのに2人とも起きて待っていてくれた。

 

「ユゥリ様は現状、食事排泄の際以外は眠っておいでです。セナ様と過ごす時間は限られているから、できるだけ長くいたいと。」

「ふふ、うれしいね。」

「……今朝から、少し変わりましたか?」

「ん?まぁ、心境の変化かな。ベルモット、ユゥリ、お土産。」


 セナはベルモットに指輪を、ユゥリにネックレスを渡す。


「ほら、お揃い。」


 自分の指に嵌めた指輪を見せて、そう言う。


仲間の証であると、そう言う。


 ひとしきり嬉しがったセナは、ユゥリを抱きしめてベッドに入る。

 涙はもう出なかった。

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