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6 お婆様の遺産とカイリーの記憶


 髪の毛ハープをポロポロ弾く。自分で作った物は全然使い物にならなかったので、専門店に頼んで作ってもらった。意外なことに、自分の髪で小さな竪琴を作りたいと言う貴族はそこそこいるらしい。ある程度の退職金をもらっているし、年金も貰えるのでカイリーに頼むこともなく解決できた。自立って大事だわ。


 よく考えたらこの退職金と年金保険があるんだから海の近くに安い家と畑を買って、じゃがいもとさつまいとか桃とか果物の木を少し植えて、畑仕事終わったら釣りをしたり、泳いだりって感じでも生きていけるわね。贅沢は出来ないけど、そういう隠居生活って聖女の老後としては良いんじゃない?


 そして、寿命を迎えて、パラダイスに転生!!でも、やっぱり、この顔と長く付き合うのかあ。


 そんなことを考えながらも、琴を爪弾く。元聖女が自分の髪で造った琴を弾いているのはちょっとした噂になっているらしい。私が注文したメーカーは大聖女の琴と銘打って、あなたの髪を使って聖女と同じ琴を作れますと宣伝していた。


 簡単な練習曲は弾けるようになったので、お婆様が弾いたらしい炎の光彩という曲を練習している。それほど難しい曲じゃないので、もうすぐ弾けるようになりそう。速く弾くところだけ難しいわね。速く弾かないでゆったり弾いても綺麗だと思うんだけど。


 ああ、いい曲ね。耳に心地よいし、高まっていく高揚感、炎の幻覚まで見え始めたわ。


 ゆらゆらと炎は揺らぎ私に寄り添う。熱くはなくて、暖かい。心地よさに私は、はーっと息を吐いた。


 ん?あれ、弾くのやめたのに幻覚が消えないわ。どうしよう。私の精神、戻れないところまで来てしまったの??


 炎は私の周りをクルクル回っていたが、急に目の前で停まってゆらゆらと踊った。触ってみたくなって手を伸ばす。火傷するかも、もしかしたら焼け死ぬかもとチラリと思ったけど、それならそれでパラダイスに行けるし、良いかと思い直した。


 触っても熱くない。それはなんとも優しい暖かさ。よく見ると、ちょっと顔らしきものも見える。これは火の精霊ちゃんかしら??可愛い!!


 あれ?その横に風の精霊ちゃんも居る??透けてて見えにくいけど、二人で来てくれたの??


「あの、私と契約してくれるの??」


 私は小さな精霊ちゃんに話しかけてみた。二人はとっても可愛く、うんうんと頷いてくれた。


「じゃあ、我が名と其方の名にかけて、また、偉大なる神に誓って、ここに契約を結ぶ。」


 私は指を差し出した。精霊ちゃんたちもチョンと指らしきものを差し出してくれた。契約の成立だ。すごい。まだ、曲弾けてないのに。おばあさまの曲って凄いのね。これで、晴れて精霊使いだわ。まあ、下級精霊の子供だと思うけど。


 私は気分が良くなったので、ちび精霊達を従えてお城散歩に出かけた。いつもは庭だけど、今日はちょっと高い所に行きたいなあ。風の精霊って高いところからフンワリ着地させてくれるのよね。


 とは言え、あまり高いところも怖い。人目の少ない2階のバルコニーが良いわね。落ちても死なないと思うし……ん?


 かなり高いバルコニーからチラチラと影が見える。何してるんだろう??え?お、落ちる!!助けなきゃ!


「風の子ちゃん、あの人助けたいの。どうにかできる??」


 風の精霊ちゃんを風の子ちゃんと今、命名して話しかけてみると、うんうんと頷いて手のようなものを上げた。バンザイみたいな格好だ。その途端、爆風が私を持ち上げた!!私の体はぐんぐん上昇し、争ってるバルコニーまでたどり着いた、その瞬間その人はバルコニーから転落した。グッドタイミングなのかしら?私はその人を抱き止める。


「ありがとう、風の子ちゃん、降ろして。」


 風の子ちゃんが両手を下ろすと一気に急降下!!ひーーー!!


 私の様子に驚いたのか火の子ちゃんが、あったかくしてくれた。いや、寒いわけじゃないの!!


「か、風の子ちゃん、ゆっくり、ゆっくり降ろして!!」


 風の子ちゃんが片手を上げると速度がだいぶ落ちた、が、すでに地面は迫っており、結構な衝撃が走る。


「い、いたー。」


 私は、抱きしめていた人を離して、打ったところをさすった。


「ルーア……」


 あ?聞き覚えのある声だと思ったら、カイリーだった。王子が落下って色んな意味で危ないわね。昔からちょっと抜けてたけど、変わんないな。


 ああ!しまった。今ので死んでれば、英雄としてパラダイス入り出来たのに!!惜しい!!今の十中八九死ねるところじゃない!!


「ルーア……」


 何よ!考え事してるのに。私が大丈夫なんだからあんたは大丈夫でしょ?まったく。


「ルーア……ルーア、ありがとう。2回目だね。」


「ああ、そう言えば小さい頃も木登りしてて私の上に落ちてくれたわね。」


 急にぎゅーっと抱きしめられた。強すぎてなのか、精霊を使役したせいなのか私は夢の世界に旅立ってしまった。

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