4 天国希望!
聞きなれない言葉。転生者?
「あの、転生者とはどういうものですか?」
「えーっと、私が使っている意味では、前世私と同じ世界に住んでた人のことよ。貴方、日本人よね?」
日本人?
「私、貴方の味方になるわ。転生者同士助け合いましょうよ。」
「ええっと、どうして私が転生者だと?」
「だって、日本語のメモ読んでるじゃない。」
日本語?確かに、メモは見慣れない文字。
でも、確かに読める。
「ね!読めるでしょう?この世界は私が前世でやっていたゲームの世界なのよ。仲良くしましょうよ。前世の記憶を思い出してから不安でしょうがなかったの。転生者に会えて本当に嬉しいの!!」
な、なんだか、本当に嬉しそう。紫の瞳がキラキラしている。
「貴方は何県出身?私は東京なの。」
「えーっと……わ、分からなくて……」
エリア嬢はうんうんと頷いた。
「はっきり思い出していないのね。でも、日本語が読めるんだから絶対、転生者よ!お友達になりましょう。私、貴方と是非、是非、仲良くしたいの。」
熱く語られてしまった……友達になりたいと言われると、悪い気はしない。
「まあ、私達は同じ人に嫁ぐわけだし、仲良くするのは良いと思うわ。」
「嬉しい!私のことはエリアって呼んで。貴方のことはランでどう?貴方ルーア・ランシェスでしょ?ランシェスのラン。きっと貴方は蘭ちゃんて名前だったのよ。」
思い込みすごいなあ。ランシェスは元々の名前じゃなくて、行きがかり上なんだけどね。
「じゃあ、それで良いです。」
「決まり!!あのね、ここ、私の秘密の場所なの。今日から二人の秘密基地にしましょう!」
「え、ええ。」
「今から情報交換しましょうよ。」
「え、ええ、じゃあ、よろしくお願いします。」
迫力が凄くて、私は勧められるまま、椅子に座った。
でも、友達と秘密基地って、悪くないかも。もう、聖女じゃないし、カイリーにも愛されそうにないし、友情が私の人生の醍醐味になるかもね。
「じゃあ、私の生い立ちから。私は割と最近、お父様に子供と認められて公爵令嬢になったの。それまでは男爵家の娘の父親の分からない子供だったのよ。厄介者扱いだったわ。でも、この世界は前世でやってた乙女ゲームの世界。私はそのヒロインだって分かってたからうまくやってきたわ。思い出したのは、8歳の時よ。それからは頑張って勉強したわ。何にも知らない公女じゃバッドエンドになるの。癖のあるゲームよね。進めて行っても、あんまり幸せになれないのよ。カイリーと結婚したら、カイリーがだんだんおかしくなってきて、私も最終的に発狂するの。酷くない?」
私は頷きつつも違和感を覚えた。それ、攻略失敗したバットエンドなんじゃないの?
「えーっと、そうね。酷いと思うわ。貴方はカイリーと結婚したくないという解釈で合ってるかしら?」
エリアは力強く頷いた。
「ええ!絶対嫌よ!優しかった夫がだんだん狂っていくなんて怖いわよ。一番まともそうに見えたのが、カイリーと婚約後に聖女の才能があると分かって神殿に行くルートなの。大神官にそこそこ愛されてる感じだし、地位も名誉もあるし、でも……」
エリアは目を泳がせた。
「う、うん。分かるわ。」
私の顔見て心が折れたのよね。今はベールで隠してるけど、ひん曲がった鼻と赤紫黒の顔は衝撃よね。
「う、うん。だから、セルア様ルートに変えたいの。セルア様ルートは、大国の公爵令嬢の私が好き好きと迫って、セルア様は仕方なく結婚。初めから冷めた夫婦だけど、そんなに酷い目には合わないわ。カイリールートに入ってるから、私の知ってるセルア様ルートには入れない。でも、真のエンディングがあってこのルートから行けるみたいなの。」
私、狂っていくカイリー押し付けられるの?
「貴方がセルアと結婚した後、カイリーと私はどうなるの?」
あ、セルアとこの子が結婚したら、セルアに私が生きていること説明してもらえるかも……カイリーが狂っても、弟の所に逃げられるし、カイリーもエリアと結婚したからおかしくなるのなら、私と結婚したらちがう結果になるかも……楽観的過ぎる?
「貴方とカイリーが結婚して、王妃になれば良いじゃない?私と結婚して狂ってもランとなら大丈夫かもしれないし……」
「そ、そうかな?まあ、セルア王と結婚したいなら協力するわ。貴方も私の人生が上手くいくように協力してくれる?」
エリアは綺麗な顔を喜色満面にした。
「ええ、もちろんよ。日本人やってた時は色々嫌なことばかり目についたけど、あの国は平和だったわね。命の心配なんてしたこと無かったもの。美味しい料理も面白いエンタメも沢山あって、多分幸せだったんだわ。普通に結婚して仕事して退屈な一般市民として、平凡に幸せに暮らせる世界だもの。」
命の心配もなく、美味しいものが食べられる??面白いエンタメもある??
「ねえ、私たち、その日本には戻れないの?」
私、そんなパラダイスからこぼれ落ちたの?私
戻るわ!そこで、幸せな人生を歩むの!!曲がっていない鼻で、腫れてない顔で、青春を謳歌するの!!
「戻りたいの?でも、私は山登りで転んで死んじゃったから、戻れないと思う。日本だから体も火葬さてるわよ。ランの事情は分からないけど、覚えてないくらいだから、私と同じで死んで転生したんじゃないの?」
そんな!私のパラダイス〜
嫌よ!!行きたい!!行きたいの!!
正直に言うわ!こんな顔、嫌なのよ!!攻撃されまくる人生は嫌なの!家族と引き裂かれる人生は嫌なの!元婚約者に愛のない2号さんにされる人生は嫌なの!!
「……転生したらまた日本に行けるのかしら?」
「え?」
「普通の転生じゃなくて乙女ゲームに転生したなら、次は元の世界に戻れるんじゃない?私、貴方に協力した後で良いから安楽死させて欲しいの。」
やり直すのよ。温かい家庭と普通の顔とちゃんとした恋人や友達のいる人生をゲットするの!!
「あ、安楽死??」
「自殺じゃ天国に行けないでしょ?日本は天国みたいな所だから、自殺じゃ無理だと思うの。」
エリアは私をガクガク揺すぶった。
「お、落ち着こう。とりあえず落ち着きましょう!」
「エリアに言われたくないわよ。」
「いやいや、あの、自殺しないのは立派だけど、私、殺人は嫌よ。」
「殺人じゃなくて、安楽死よ。この世界の人類の権利よ!!」
「そんな権利聞いたことないわ!!」
むむむ。適当に言ったら直球で否定されたわね。
「あ、そうだわ。ゲームで私が死ぬルートないの??そのルートなら無事転生できそう。」
「多分なかったと思うわ。ランは悪役令嬢で、カイリーを攻略すると牢屋に入るけど。」
手足切られてですか……言わないでくれるエリアの優しさを感じるわ。
「この人生、やっぱり散々じゃない!!絶対天国でやり直すんだから!!」
エリアはブンブンの頭を振った。
「そんな事ないわよ。日本はサービス残業多いし、勉強もきついし、人間関係も疲れるし、イジメもあるし、全然天国じゃないから!!」
私の人生のフォローじゃなくて、パラダイスを落としにかかられた!!ここでも、フォローできないくらい酷いの!?
「でも、ランが私に嫌がらせをしなかったら、牢屋には行かないと思うし、貴方の幸せのために、すごく、ものすごく協力するから、死ぬとかやめましょう!!ね、私がついてるわ!」
むむむ。私は前向きに幸せを探してるだけよ!ワンチャンダイブよ!
でも、いきなり安楽死は不味かったわね。普通、友達になったばかりで安楽死してなんて言われたら友情壊れるわ。それに自殺がダメだと考えるなら安楽死も微妙かもしれないわ。どういう死に方したら楽に天国へ行けるのかしら?




