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3 エリア・エスリン公爵令嬢


 エル王国に到着し、私は恭しく迎えられた。元聖女との婚約、基本的には大歓迎とか、大歓声とかそんな雰囲気になると教わってきたけど、私はひっそりと城下に入り、城に入り、静かに頭を下げる百官達に迎えられていた。


「元大聖女ルーア・ランシェス様ようこそおいでくださいました。」


 宰相閣下が静かに発言し、私はお辞儀を返した。


 カイリーが、これまた静かに進み出てお辞儀をする。なんとも他人行儀。子供の時は手を引っ張って色んなところを案内してくれた。私があの時のルーアだとは全く気付かない。王は今、体調が悪いとかで姿を見せなかった。


 ほとんど会話もなく、疲れているでしょうと言われて、部屋に行かされた。私の部屋は豪華な部屋で文句の付けようは無かった。


 でも、私が喜ぶように考えたというより、ただ、ただ無難なものを揃えたように思ってしまう。贅沢な悩みよね。今までの生きるか死ぬかに比べたら、平和な人生じゃない……。


 しばらく休んでいたら、食事に呼ばれた。食事にはカイリーと女性がいた。二人とも恭しく頭を下げる。


「元聖女様、ご紹介します。こいらはエリア・エスリン公爵令嬢です。仲良くしていただけると嬉しく思います。」


「エリア・エスリンです。よろしくお願い致します。」


 食卓は丸テーブルで、二人に挟まれて何となく居心地が悪い。エリア・エスリン。つまり、第一王妃になる予定の婚約者よ。カイリーの彼女に向ける笑顔と私に向ける仮面のような顔にズキズキと心が痛む。分かってるわ。あんな綺麗な顔と、鼻が曲がって紫色に腫れてる私じゃ、しょうが無いわね。はあ。


 エリア嬢は赤みがかった金髪に紫の瞳をしている美少女だ。身分的にも年齢的にもカイリーとお似合い。私はそこに割って入ったおじゃま虫。ああ、ああ、もうやだ。どうしてこうなったの??あんなに頑張ったのに。どうしてこんなに惨めなの??


 いやいや、ダメよ。私は世界を守ってきた大聖女。聖女の中でも大聖女の称号は滅多にもらえないのに私は貰ったんだからね。


「あの、不躾ですが、お顔は事故にでもあわれたのですか?」


 エリア嬢が恐る恐る聞いてきた。不躾だけど、まあ、気になるわよね。


「ええ、聖女の仕事中に魔物に攻撃されたりしましたので……」


「え?聖女は静かに祈っているだけでは?」


 あー、そうよね。そんなイメージよね。


「そんな事はない。聖女には勤め中に死ぬものもいる。」


 カイリーが私の代わりに答えた。


「そ、そんな……た、大変なお勤めですのね。」


 深窓の令嬢には刺激が強いかしらね?仮面でも被った方が良かったかしら?でも、仮面なんて暑そうだし嫌だなあ。


「エリア、大丈夫か?元聖女様、申し訳ないのですが、人と会う時は仮面かフードをお願いします。聖女の真実を皆が知る必要はありませんので。」


「は、はあ。」


 エリアはそのまま青くなって黙り込んでしまい、カイリーは気遣わしげにそちらばかり見ていた。私は黙々と料理を片付けて、疲れたと言って部屋に戻った。


 カイリーはエリアをとても大事に思っている。私は子供を産む道具だ。今更、私が生きているって言っても困るだけだわ。信じてくれるかも不明だし。


 ああ、嫌だ嫌だ。こんな顔大嫌い!幼馴染に会っても分かってもらえない。面影が、とも言われない。それどころか顔を隠せって。


 もうやだ!!実家に帰ろうかしら?大神官も特別に説明してくれるって言ってたし。


 でも、弟も似たような反応だったら?もし、姉だって言っても信じてくれなかったら??


 いや、それ以上にお父様とお母様が行方不明なのに鏡の間から出られなかった私のこと怒ってるかな。あの時はまだオリビアに任せて外に出られる状況じゃなくて……人に頼んで探してもらったりはしたけど、見つからなかった。国としても叔父様を筆頭に必死に探してくれたけど、見つからなかった。私は家を出る時、お父様とお母様に立派に聖女の務めを果たすって約束してて……


 あー。私ってかなり不幸じゃない??元聖女なのに神様に嫌われてるの??はあ、仕方がない。お祈りでもして運気を上げよう。気休めだけど。


 私は庭で一人でお祈りをしたいと言って部屋を出た。特別止められもしなかった。誰もが私を腫物のように扱う。丁寧に、でも、困ったように。


 私は子供の頃、お気に入りだった場所にやってきた。最奥に見える木々のさらに奥に隠された休憩スペースで、綺麗な花と夕焼けが楽しめる。私が椅子に座り、お祈りをしようと手を組んだ時


「あ、あ、あ、あんまりよー!!」


 声が聞こえた。内容的に私の心の声かと思ったけど、聞き覚えがある。


「聖女なのに顔がボコボコになるまで魔物の相手するの??聞いてない!!聞いてない!!ゲームでそんな事言ってなかったわよ!!」


 ???この声、それに木の影から見える赤みがかった金髪は一緒に昼食を食べたエリア・エスリン嬢よね?隣にも隠しスペースが有ったのね。知らなかったわ。それにしてもゲームって何かしら?人生は恋愛ゲームって事??


「ああ、どうしよう。これから聖女になって2年くらいで大神官と結婚する予定だったのに!!」


 貴方、カイリーの第一夫人になる予定でしょ??それに大神官は婚約したわよ??


「やっぱり、自分の気持ちを偽ったからバチが当たったのよ。本当に好きな人と命懸けで愛し合えば良かった!!ああ、セルア様!!」


 ……うちの弟ですか?


「ここから、セルア様攻略に切り替えるのどうしたら良いの?悪役令嬢が登場してるし、完全にカイリールートか大神官ルートなんだけど。」


 この人、顔とスタイルの代わりに頭が残念なのかしら?すごく独り言が多いし。面白いけど。


「でも、でも、確かセルア様の真のエンディングはこのルートだって聞いたことあるわ。誰かサポートキャラとか居ないのかしら??」


 エリア嬢はぐるぐる歩き回っているのか赤い髪がチラチラ動く。


「悪役令嬢への対策も考えないと。嫌がらせしてくるのよね。元聖女様は。」


 なんか、飛んできた!


「確か初めはベッドに虫とか蛇とか置かれるのよね。分かっててもすごく嫌だわ。」


 やめて。私も蛇や虫なんて用意したくないわ。


「いじめられてても仲良くしようと努力してると、大神官に会って、聖女の気質があると認められる。」


 ふむふむ。


「で、仲良くせず避けたりしていると、カイリーが気づいてくれてカイリーとの距離がさらに深まる。」


 へー


「カイリーが狂って狂愛モードに入るのよね。ああ、このゲーム酷いわ。一番身分が高くて、しかも簡単な相手と結婚したら発狂だなんて!悪役令嬢が手足切られて幽閉されるとかさすがにやり過ぎで怖いし。」


 とりあえず逃げるか。幼馴染の元婚約者に手足切られるとか鬱展開過ぎるわ!それにしても、この子、すごい妄想力ね。小説家でも目指してるの??


「ああ、そろそろ戻らなきゃ。カイリーとゲームする約束だったわ。」


 ゲーム……良いなあ。私も子供の頃、カイリーとボードゲームしたわね。


 エリア嬢の赤い髪が見えなくなったので、私はコソコソと隠れ家を出た。そして、好奇心を抑えきれず、エリア嬢がいた未知のスペースに踏み込んでみた。


「あ、テーブルとかあるんだ。」


 そこはちょっとした秘密基地のように家具が置かれていた。


 そして、紙が地面に落ちている。拾って見る。


「エリアの恋愛模様?」


 紙にはタイトルに上記が書かれており、カイリー、セルア、大神官、悪役令嬢と項目分けされている。セルアの所をぐりぐりとマルで囲んであり、やり方分からなーいと書かれていた。


「悪役令嬢は、ダンスパーティーでパートナーがおらず、カイリーが私と踊るのを見て、本格的な嫌がらせを始める……ふーん。」


 ダンスパーティーは一週間後の予定だ。パートナー探さなきゃね。確かにカイリーがエリアをエスコートして、私がひとりぼっちは辛い。こういう時は兄弟とかなんだけど……。あ!そうだわ。とりあえず、大神官に来させましょう!ムカつくけど、第二夫人にはできるとか言ってるんだから、ダンスのパートナーくらいしなさいよ!


「大神官が悪役令嬢のパートナーってどういう事?そんな展開無かったわ!もしかして、もしかして……」


 やることもないので毎日のように庭の隠れ家に来ていると、時々エリアが隣で独り言を言っている。今日もそれに当たった。なんだか嬉しそう。


「ああ!これがきっとセルア様の真のルートなんだわ!!もしかして、あの悪役令嬢がキーマンなの?仲良くすれば良いのかしら?嫌がらせも始まらないし……そうよ。あそこまできたら顔の障害だもの。弱者に優しくすると良いのかも。」


……世界を守ってきた私をなんだと思ってるのよ!!ムカムカしながらも、出ていった気配がするので、恒例のメモ探しタイムだ。


 あの子の妄想メモが結構な確率で落ちていて面白い。今日もメモを発見!!よくこんなに落とすわね。


「なになに?セルア様との真のルートかも。弱者に優しく!」


 新しい情報がないわね。2回も弱者呼ばわりされた気分だわ。私の傷と腫れは名誉の負傷!世界を守った勲章なんだからね。まあ、要らないけど。


 顔の腫れは多少マシになってきている。ひん曲がった鼻も時間と共に治ってこないかなあ。ん?


「元聖女様……」


 エリアが戻ってきていた。やば!私、メモを手に持ってるわ。


「あ、あの、落ちていたので。よく分かりませんけれど、弱者に優しくと言うのは今年の抱負ですか?エリア様は優しい方ですのね。」


「元聖女様!」


「はい!」


「貴方も、貴方も転生者ね!」


「は?」


 私はエリア嬢の気迫に押されて、目を白黒させた。




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