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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

お題小説【とある男の失敗談】

作者: 安雄

出してもらったお題で書きました。

・桜

・夜明け

・片思い

・告白

・SNS

・夢

・宮殿


「なーんでこんなことになったのかな…。こんなことなら…って考えても仕方ないか。とりあえず今は今のことを見つめないとなぁ。」


とある男はため息をつきながら、家屋と思われる瓦礫に腰をかけていた。辺りはすっかり夜更けであり、男は野営をしていた。

男の周りにはつい先日まで同じ釜の飯を食べていた仲間たちの亡骸(なきがら)が転がっており、彼らを亡き者にした敵の死体も転がっていた。


「…みんなゆっくり休んでね。俺は…もう少しだけ頑張るから。」


たき火の薪を継ぎ足しながら考え事をしていた。こんなことになったのは必然的だったのかもだけど、ある事をしておけばよかったという後悔がずっとあった。

男のズボンのポケットの中には(つたな)いながらも手作りのペアリングが入った箱があり、男はそれを渡しそびれてしまったことをずっと後悔していた。


戦い通しだったので、少し仮眠をとることにしたのだが…そうして男は以前幸せだった頃の夢を見た。




***


「クソが!あのパワハラハゲカス社長が!社員のことをなんだと思ってんだよ…。畜生が…。」


俺は大学卒業後、とある零細企業に何とか就職できたもののそこは超絶ブラックであった。今日で14連勤目…。

幸いにも明日は休みなのだが…帰ったところで寝るだけの毎日だ。

通勤手当はないので、徒歩で帰っている。毎日の事だがもう夜明けの時刻でお日様が遠くの方で昇って来ている。いつからかこんな外で夜明けを見るのは、大嫌いになった。

あのクソ会社に勤めて2年半くらいだが、俺より前に入った人も俺より後に入ったやつもノイローゼか命を絶ったやつかで俺は一応課長という役職になっていた。


世間はお花見ムードな訳だが、こんな桃色の花を見たところで癒しなんてあるわけがなく、むしろ花びらが舞ってきて邪魔だ。

そんなこんなでネガティブな考え事をしながら、帰路についていた訳だが…。


キキー!!!


「はっ?」


俺は考え事をしながら、歩いていたせいか横断歩道もよく確認せずに渡っていた。家の近所の信号のない横断歩道だし、むしろ何のために設置してるのか分からない超短いやつだ。白線が3本しかない。

道もくそ狭い住宅街だし…と思っていたんだが…。

どうやら土地勘のない車が俺に向けて突っ込んできていた。それも猛スピードだ。


「…いやここ住宅街。」


徐行しろよ…と思った次の瞬間俺の意識は飛んだ。



次に気づいた時には見知らぬ天井があった。


「ここは…?どこだ?痛たたたた…。死んでない?」


辺りを見渡すと、どうにも現代建築っぽくない感じがする。壁はコンクリートとかそういう感じではなく、そのまま石を使いましたって感じだ。

窓はない…というよりガラスがない。窓らしきところから外を眺めてみると…。

そこはどう考えても現代の日本ではない光景が広がっていた。大森林が広がっているのもあるが、空にはいかにもドラゴンと呼ぶ他ない生物が飛んでるし、俺が今いる建物…宮殿っぽいものの近くには町があり、そこには角が生えたり、肌が紫の人がいたり…ここは異世界というやつかな?


「ん?目が覚めたか。どこも怪我はないか?」


俺の背後から声がしたので振り返ると、女性が立っていた。

俺と同じく日本人のようで、黒髪を頭の上でまとめたお団子頭をしている。


「えっと…俺を助けてくれた人ですかね?」


「ああ。いきなりのことで混乱しているであろうが、ここは君が住んでいた世界とは別の世界だ。そして私はここで…魔族や人間達の指導者をさせてもらっている者だ。皆からはヨウとよばれている。」


「えっと…俺は名護(なご)って言います。」


「そうか。ではナゴ。これからこの世界で暮らす上でいくつか教える。基本は好きにしても構わんが…(いさか)いだけは起こして欲しくはない。」


そうしてヨウさんに連れられて、この世界の説明をされる。全てが全て分かっている訳では無いが、この世界はよくあるファンタジーのように人間と魔族が戦っているという訳ではなく、多少溝こそあるが平和に暮らしているようだ。

ヨウさんは魔族達の王様…いわゆる魔王として人間と魔族が仲良く手を取り合って暮らすために尽力しているようだ。一応ヨウさんは2代目で初代の人はいたみたいだけど、ヨウさんに必要なことを全て教えた後に息を引き取ったらしい。地球では上司と部下の関係だったようで息を引き取った時はたいそう悲しかったみたいだが、上の者としていつまでも泣いていたら下に示しがつかないのでそれ以来涙は封印したらしい。


町の人達も新しく来た俺に対してすごい友好的で、あっという間に仲良くなり、この世界特有の技術である魔法とやらも教えて貰った。

俺には魔法の才能があったみたいで、それを生かして町のインフラを整備する仕事に就いた。


元々あのクソ企業で底辺ながらも上下水道のメンテナンス等を仕事としてやっていたので、その時の経験を生かして仕事をしていた。水道自体は初代の魔王の人が頑張って整備したみたいだけど、ヨウさんは引き継ぎこそしてもどうすべきか手に余ってたみたいで、俺は自分で役に立つならと志願したのだった。


そんなある日、仕事終わりに町の孤児院の前を通りがかるとヨウさんの声がしたような気がした。

孤児院の中を覗くと、いつも仏頂面なヨウさんが心なしか微笑んでいた。微笑んでいるというよりかは微笑もうとして口がピクピク動いていた。

親を様々な理由で失った魔族と人間両方の子供たちと不慣れそうに遊んでいるヨウさんを隠れながら見ていた俺は…ヨウさんに恋をした。

仕事尽くしで心が死んでいた俺だったが、この異世界でみんなに頼られて…ヨウさんにも感謝されて…今ヨウさんのあの姿を見て…。


「ねーねー、お兄さんどうしたの?まおー様に用があるの?」


遊びから帰ってきたと思われる頭にツノが生えた男の子が俺に声をかける。

その瞬間、ヨウさんが俺の方を素早く振り向いて近寄ってくる。


「見たか!?」


「はい。み、見ました…。」


「……この子も含めて皆親を亡くした子だ。食べ物の支援などもあるが、やはり今この子らに必要なのは触れ合い…愛情だと思うんだ。こんな笑顔のひとつもできない女でもできることがあると思ってな。」


俺に話しかけてきた男の子の頭を撫でながらヨウさんが話す。


「…俺でよかったらこの子達の遊び相手になりますよ!仕事の都合でこちらにもお邪魔することも今後ありますし!子供たちには清潔な水を飲んでもらいたいですね!」


「そうか、私も執務のかたわら足を運んではいるが、そうして貰えると助かるな。今後とも頼むぞナゴ。」


俺のキャラではないがニヤケながら、ヨウさんに猛烈なアピールをするも、ヨウさんは単純に俺が手伝いを申し出たと思っただけらしく、いつも通りの仏頂面で答えていた。まぁ、まだまだ先は長いかもだけど今度食事とかに誘おうかな…?


その後数週間して、久しぶりにヨウさんを孤児院で見かけた。どうやら魔王という仕事は予想以上に多忙らしく俺に子供たちの相手を任せる前はスケジュールの合間を縫って子供たちの相手をしていたというのだから驚きだ。

子供たちは孤児院の先生と一緒に散歩に出かけているようだった。ヨウさんは机の上に正方形の紙を広げて試行錯誤していた。紙といっても現代日本にあるような綺麗なものではなく、現地で見よう見まねで作ったものなのでなかなかにボロかった。

どうやら折り紙をしているようだが、紙の質が悪いこともあってなかなか思うようにいっていなかった。


「ヨウさん。折り紙ですか?」


「ああ…。だが私は地球にいた頃から仕事人間でな。折り紙の折り方ひとつ知らない。子供らを喜ばせようと花のひとつでも折ろうとしたのだが、やはり無理そうだな。」


「うーん。俺もそんなに得意じゃないんですけどね。

この世界にヨットと潜水艦はないけど…こんな感じですかね。」


俺が潜水艦とヨットを折ると、ヨウさんはそれでも驚いていた。…表情にはそんなに出てなかったけど、目を丸くしているのは感じ取れた。


「他には?折れないのか?」


「えっと……ごめんなさい。」


「いや構わない。私の方こそ無理を言ってすまなかったな。」


ヨウさんに折り方を教えると、俺はその場を後にした。

しばらくしてから孤児院を訪れると、ヨウさんが折り紙を教えてくれたということを子供たちが嬉しそうに伝えてくる。潜水艦とヨット以外にもねだったらしいが、また次の機会ということでヨウさんは仕事に戻っていったみたい。


「折り紙を教える為とはいえ、ヨウさんに近づけたなぁ。…もっと教えたいかも…。でも俺も折り紙なんて知らないし…。」


そこで俺は思いつく。この異世界にいるのは俺とヨウさんだけではなく、実は他にも異世界に来てしまった人間は数多い。地球から来た人間というのは総じて能力が高く特殊な力に目覚めた者も少なくない。

ヨウさんの庇護下から抜け出して、この大陸各地で暮らし始めているのも現状としてある。

ヨウさんはそうしたところに足を運んだりして、差別問題とかがないかとか異世界人と現地人とのコミュニティの架け橋を作ろうとしている。


「町の水道ももう問題ないくらい整備できたし、俺もちょっくら足を運ぶかなぁ。」


有言実行!ということで次の日には、宮殿にあるヨウさんの執務室の机に、ちょっと見聞を広めてくるという書置きを残して、各地へ旅に出ることとした。

目的は折り紙の折り方を知ってる人がいたら教わるため。あと子供達に話す為のネタを仕入れるためもあるかなぁ。


時折町には帰ってきながら、数年かけて情報収集をしていく。俺自身折り方を1回きり見ただけじゃ覚えきれず、もう一度見せてくれとお願いしたら、対価のものを要求されることも多々あった。

それを断ったら逆ギレされて脅された上、向こうが武力行使に移ったので返り討ちにすることはしばしばあった。


そんなこんなでヨウさんのスケジュールがあった時にヨウさんに折り紙を教えるひと時は俺にとって至福の時間であった。ヨウさんは感情が表に出ないだけで、感情は結構豊かだと思っていた。驚いたりすると眉がピクつくし瞼も僅かに見開く。悲しい時は目を伏せるし、嬉しい時は口元がひくついている。

俺と話している時は、いつもの通り仏頂面だけど少しだけ表情が柔らかいように感じる。俺はヨウさんへ好意バリバリ出しているが、結局こういうのは言葉に出さなければ相手にわかって貰えないんだよな。


ヨウさんに愛の告白をする人はちらほらいるけど、全てあしらっていて、仕事を理由に断っていた。

だから俺も…告白するにしづらい。俺のことは嫌いではないとは思うけど、ヨウさんにとっては頼りになる人くらい…かなぁ。


ある日、久しぶりにヨウさんと一緒に孤児院の子供たちを連れて散歩に出かけると異世界にはそぐわない桜の1本生えていた。


「ヨウさん…。これは?」


「これは私の上司…初代魔王が植えた桜の木だ。異世界に飛ばされた時に桜の枝を持っていたらしくてな…。そこから育てていたんだが…。そうか、やっと今年こうして花を咲かせたのか。…綺麗だな。あの人にも見せてあげたかったな…。」


ヨウさんが(はかな)げな表情をして、桜を見上げていた。初代魔王である上司の人の話は何回か聞いたことがあるといつも悲しそうに話していた。

そうか…ヨウさんは多分その人のことが…今でも…。


「綺麗ですね。俺この世界に来る前は桜なんて嫌いだったんですけど、こんなに…綺麗なんだ。よく見ようとしてなかったんだなぁ…。ほんとに綺麗だ。」


ヨウさんは桜を見上げていたが、俺はヨウさんに目線を向けて言っていた。俺に視線に気づくことも無く、ヨウさんは今はいない故人のことを考えてるのかもしれない。それでも俺は…貴女が好きなんだよなぁ。



ヨウさんや孤児院の子供たちと過ごす日常は楽しかったが、少し(かげ)りが見えてきたのは、とある異世界人たちが来てからだった。


「なんだ?日本の女の癖に王なんてふざけたもんだ。」


マイケルというアメリカ人が異世界に来てから、他の異世界人達をまとめてヨウさん率いるコミュニティとは馴れ合わないように暮らし始めた。

好き勝手に森を荒らしたり、時には魔族を迫害していたりしていた。ヨウさんはそうした現状を良しとせず何度も話し合いの席を設けていたが、向こうが聞く耳を持たずに交渉の席に来た試しはなかった。

現地人からは当然のごとく嫌われており、所詮異世界人を集めたところでお山の大将であった。


俺はというと、この異世界特有の鉱石を何とか加工して指輪を作ろうとしていた。

俺は水属性の魔法にすごい適性があるようで、ウォータージェットのように水を加圧して、普通はノミで削らないといけないようなものも魔法の力で何とか解決しようとしていた。

ヨウさんにこんなものを作っているところを見られるのも恥ずかしいので、気の知れた友人たちを集めて集落を作ってそこで作業に(いそ)しんでいた。

試行錯誤を繰り返すこと早数百回…。やっと満足のいくものを作り上げた俺は、仲間に作ってもらった箱に指輪を2つ入れる。

そうして数ヶ月ぶりにヨウさんが住む宮殿へと足を運ぶ。


「ナゴ様。申し訳ありません。魔王様は所用で外出中でして…。」


「あ、いいよ。また来るからさ!」


どうやら出かけてたみたい。仕事以外でどこかに出かけてるなんて珍しい…。

それなら久しぶりに孤児院に顔を出そうかな。


孤児院に行くと、子供たちが何やらソワソワしていた。

どうかしたのかと理由を聞くと、


「魔王様がね!明日ね!近くの山に連れていってくれるんだって!楽しみだなー。」


「魔王様の作るお料理も最近はすごくおいしくなってきたきたから楽しみー!」


「はは、ヨウさんの手料理は前から美味しいだろー?」


「それはナゴ兄ちゃんだけだよー?」


子供たちと笑って話す。そうかヨウさんが出かけているのは明日の食材の準備か。使用人とかに用意させるんじゃなくて子供たちに振る舞う料理は自分の目で見極めるんだよねあの人は。

でも最近きな臭くなってきたけど、こういった日々が1番幸せだ。

この世界は電話やSNSもないから遠くの誰かと連絡を取る事ができない。また長距離を移動する手段は馬車とか飼い慣らしたドラゴンとかを使って移動するしかない。だから口約束をしてももしかしたら間に合わないことがあるかもしれない。でもヨウさんは誰であっても約束をした以上は絶対に守るし、時間に遅れたこともなかった。

俺はそうしたヨウさんが…好きなんだ。


ある程度してからまた宮殿を訪れるも、まだ戻って来ておらず宮殿の中で待たせてもらうこととした。そうして夜が更けてきた頃、ようやく帰宅したと連絡を受ける。


ヨウさんが食材を買い込んで台所に立っていた。遠方まで厳選しに行っていたようでこんな時間になったらしい。その為、今から明日ピクニックに持っていく用のサンドイッチやらの仕込みをするようだ。


「ヨウさん。明日ピクニックに出かけるんだって?」


「ああ…。ナゴか。お前も来るか?」


「あー、俺はちょっと…野暮用があって…。でもさ楽しんで来てくださいね。」


「そうか。」


ヨウさんに手伝いを申し出たが、全部自分の手でやりたいと言われて引き下がる。

なんだかんだ話しながらも、指輪を渡して告白するということが出来ない。

なんだか気恥ずかしさを感じてくる…。そもそもなんで初っ端から指輪を渡すかと言うと、ヨウさんはなんというか…鈍いってのもあるけど、多分心の中ではずっと上司のことを想っているんだと思う。

だからいきなりプロポーズくらいしてインパクトを与えたいと思ったというか…。俺自身数ヶ月前に夜中のテンションで思いついてから、我ながらよくモチベーションが落ちることなく作り続けられたものだな…。

作っちゃったものは仕方ないから、何とかして渡したいし、ずっと好きでしたっていうことも告白しなきゃ…。


「ヨウさん!!!えっと、明日ピクニックから帰ってきたら…話したいことがあって!」


「……?別に構わんが。今はダメなのか?」


「えっ……と。ちょっと…いやだいぶ勇気がいるというか…ということでよろしくお願いします!!」


「まぁわかった。深くは聞かないでおこう。」


料理の準備は断られたけど、その他物品類の準備は任されることとなった。レジャーシート代わりの布とか雨に降られた時のための雨具とかもしもの野営のための道具とか色々準備しているうちに夜明けの時刻となる。


そうして夜明けすぎにヨウさんはピクニックの道具を背負って孤児院の方へと歩いていった。

それを見送る俺。あんなに荷物持っていくなら俺も同行…いやでも恥ずかしい。意識しちゃうと思うし…。



俺はこの時にヨウさんを見送ったことをずっと後悔することになる。彼女の言う通り、その時に胸に秘める言葉を告白していれば…。




「……ヨウさん。まだ帰ってきてないのか…。」


朝早くに子供たちとピクニックに行ったヨウさんは、その日の夕方になっても帰ってこなかった。

あの人は約束絶対守る人だ。なのにこんなに帰ってこないなんて何かあったのか…。

それに、マイケル率いる素行の悪い異世界人達が町の住民に危害を加えていたので、割と容赦なく制裁を加えた。そうこうしているうちにすっかり夜となってしまったが、俺は彼女たちがいると思われる山へと足を運ぶ。


山道を登っている最中に、子供たちに同行していた孤児院の院長が近くの木にもたれかかっていた。

遠目でも分かるくらいに酷い怪我だったので、急いで駆け寄ると既に事切れていた。

俺は嫌な予感がして、山を登る足を早める。


そうして山頂近くの花畑に到着すると…そこは俺にとって最悪の光景だった。

子供たちの死体…。原型を留めていないものも数多い。


その中でヨウさんは胸に剣が突き刺された状態で亡くなっていた。


「あ…ああ…あああああ!!!!!」


どうして…だよ。どうして…!!!あの時告白していれば…いや違う。俺があの場で告白していれば…。

くそ…どうして…もう泣いたって仕方ないのに…。涙が止まらない……!


「ヨウさん…。くそ!」


ヨウさんの亡骸を抱きしめて1人泣いていた。胸中に残るのは激しい後悔。俺が守ってやりたかった。

亡き人なんて上書きするように幸せにしてやりたかった。そんな思いに埋め尽くされて……


俺は再び目を覚ます。


「クソ…嫌な夢見たな。どうせ終わるなら幸せなフィナーレにしてくれよ…。」


夢を見ていた時間は長かったが、再び目を覚ました時間は夜明けだった。


「ヨウさん…(かたき)はとりますからね。貴女はそんなの望まないと思いますけど…。」


あの日、マイケルがピクニックの途中のヨウさんを殺害してそこから奴によるクーデター…内乱が起こった。

旗色は悪く、悔しいが近い未来マイケルの手によってヨウさんが好きだった景色は壊され、ヨウさんが叶えようとしていた魔族と人間が手を取り合う未来はマイケルの選民思想によって壊されるだろう。


「…俺はそれでも戦う。貴女が好きだったものを護りたいんだ。」


今はもう…貴女が好きだった桜の木は燃やされて無くなった。宮殿も既に壊された。あの町に住んでいた人間も魔族もマイケルによって…既に…。


「さてと、うだうだ考えても仕方ない。今日も一日頑張りますかね…。」


ヨウさん…俺は…あなたの事を今でも愛してます。

末永く幸せにしたかったけど…こんな情けない俺を天国から見守っていてください。

なんか時系列とかむちゃくちゃになっちゃったかな。

設定考えるのが大変なので、私が書いている小説の一部設定を流用しましたー。

まぁ、この小説だけで完結してるので、他のやつ読んでなくても大丈夫なようにはなってます。


お題の片思いについては、文章としては出さずにシチュエーションとして設けました。

でもこういう風にやろうと思ってたのに、機会が失われるっていうのは…実際辛いですよねぇ…。

やろうと思ってたっていう言い訳はついついしちゃうけど、それが永遠に次が来ないってのは…辛いなぁ。

書いてて思いましたね〜。

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