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芳山教授の日々道楽「珈琲屋」

作者: ヨッシー@

芳山教授の日々道楽「珈琲屋」


天気がいい。

散歩がはかどる初秋。

甘いキンモクセイの香りにつられ、この道を歩いて行く。

まだ続く、

まだ続く、

まだまだ続く、

まだか?

喫茶店が見えた。

庭に見えるオレンジ色の花が、優しく目に染みる。

緑色の屋根と赤いレンガの壁が、見事なシンメトリーを作り出したお店。

今日は、ここで寄り道をして行こう。


カラン、

木目が深いこげ茶色のドアを開けると、

コーヒーメーカーのコポコポとした音が耳に響く。

静かだ、

50sの飾り付けの店内を見回す。

漆喰の壁、

淡いランプの灯り、

無垢材とアイアンのテーブル、

いい演出を醸し出している。

ふらりと出た散歩で見つけた隠れ家。

うーん、心地よい。

こんな穏やかな気持ちになったのは、久しぶりだ。

人間というものは、休養が必要だ。

ずっと緊張していると、壊れた時計のようになってしまう。

まさに今が、私にとってその時だ。

心の充電をたっぷりしよう。

「ご注文は?」

当然、コーヒーだ。

この手の喫茶店は、オリジナルブレンドが美味い。

「ブレンド、」

片手を上げ、マスターに注文する。

軽くうなずくマスター。

ゴーーー

豆を挽く音、

その音さえ、心地よい音楽のように聞こえる。

コポコポコポ…

お湯を注ぐ音。

「うーん、心地よい」

また、言ってしまった。

甘いにおい、

香ばしいにおい、

フルーティーなにおい、

これらが混ざり合い、

絶妙な美味みのハーモニーをかもし出す。

至福の待ち時間。

「はい、ブレンドです」

凝りすぎないカップが、また、コーヒーの美味みだけを伝えようとしている。

じっと見る。

色もいい、

見事な琥珀色だ、

においをかぐ、

いいにおいだ、香りも味の一つである。

たまらない。

一口飲む。

ゴク、

言葉では表現出来ないあまたの美味みが、口の中で広がる。

「うーん、美味い、」

つい、また言葉で発してしまった。

マスターが、軽く会釈する。

……

……

美味しかった。

最後の一滴まで飲み干してしまった。

いい、

私の好みだ。

マスターの微笑がまた、いい!

最高な昼下がりだ。

この時間が永遠に続きますように、

私は祈った。


お勘定を払う。

おっと小銭は募金する。

私のポリシーだ。

「ありがとうございました」

マスターの笑顔。

カラン

軽やかな鈴の音色と共に、

私は喫茶店を後にした。

また来よう。

ふらりと出た散歩で見つけた隠れ家。

ここは私の隠れ家ナンバー18番目だ。

記念すべき番号にふさわしい。


時計を見る。

まだ、日没には時間がある。

もう少し、散歩を続けよう。

隠れ家探索がはかどる、

日曜日の午後だった。


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