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第1話 「じゃあ逆に聞くけど、なんでそんなに人間は自分に執着できるの?」



「初めまして。常闇様の御宅ですか。私、アクトル=ウ=スリアミシスと申します。弟子にならせて頂きたく、訪ねて参りました。」


目の前に、すごく綺麗な男の子が写った。と言っても、もう青年といっても良いかもしれない。白銀の髪に、橙色の瞳。

でも、少し罪悪感からかシュンとした様子が見受けられた。

自分が悪いと罪悪感に染まっている時、右手をぎゅっとするのは、君のずっと前からの癖。


「………あぁ、やっぱり、君なんだ。」


思わず、そうボソッと呟いた。

一応、彼には聞こえていなかったようで、少し安心した。

真白な襟が立ったシャツに、羽織をかぶって、袴をつけた、なんとも、大正時代にハイカラと呼ばれていたような格好をして、片方の目はその長い前髪に隠れてしまっていて。

これがイケメンか、と言うものを体現しているよう。


「じゃあ、テストやるから、とりあえず質問に答えて。」


「………はい。」


おぉ、戸惑ってる戸惑ってる。

つっても現実じゃあ完全に無表情でクールな美青年っぷりなんだけども。

魂が大きく動揺で揺れている。見事なポーカフェイスだ。


「まず一つ。良いと言うまで、決して私の部屋に入らない。」


「………はい。」


「二つ。本物には、決して目を向けない。」


「………はい。」


「それ守れるんだったら、何を質問しても、私を殺しても、なんだってして良いよ。じゃあよろしく。」


………どうやら、噂と違う私に驚いているらしい。

これ、ちゃんと聞いてんのか?まぁ、聞いてなくとも良いか。

とりあえず、彼には元から与えられた役目を果たしてもらえたら良いだけ。


それに、いつも私は影のようで闇深く無慈悲、無口で通ってるらしいから。

さすがに私だったとしても驚く。当たり前の対応だ。

それでも表に出さないとは、優秀なものだな。


「あの………殺すとは?」


あ、そっち?

思わずの真顔で心の中で返す。

まさかそっちを聞かれるとは………常識だと思ってたんだけど。


「え?弟子が師匠倒して後継ぐのは常識じゃないの?それに別に思い残しないし、今すぐ殺してくれたって大丈夫だけど。むしろ今すぐ死にたい人間だし。」


うっわすごい。

本当に『あっけらかん』って顔あるのか。知らなかったわ。

最近私表情筋動いてないから感情が分かっていないだけかもしれないけど。


「じゃあなんでも聞いてね。私、地下で作業するから。そこの階段降りたらすぐだから、多分わかると思う。あ、なんなら今も受け付けてるから、今すぐ聞きたいことあったら聞いてね。」


なんか固まってるな。

今のところないんだな。


「あのっ!質問、ありますっ!」


「え?あー、やっぱあるの?なに?」


驚いてるから、今は質問しないでくれると思ってたんだけど。

正直言って、まだ君と面向かって話すのは辛い。

たぶん、結構耐えられない。


「なんで、自分にそんなに執着しないんですかっ?」


「………。」


なにその質問。

君が、それを聞くの?

君が?

あの君が?

なんだよ。

なんなんだよ。それ。


「じゃあ逆に聞くけど、なんでそんなに人間は自分に執着できるの?」


なんだかよくわかんない重苦しい空気が、部屋の中に流れた。

この空気は嫌いだ。もう、何もかも考えたくない。

ってか、なんでこんな初めてあったような奴に、そんな踏み込んだ質問できるんだよ。私だったら到底無理だ。


「じゃ、私、地下いるから。」


できるだけ一息でいい終えると、そのまま階段を下る。

この話題はあまり好きじゃない。

これは、私が禁句を犯した罰だから。

今ではもう、信じがたい、もうやりたくないことだ。


それに、その原因となった本人から言われるのは、結構辛い。


「………やっぱり、まだ抜け切れてないな。最後だから、思いっきり楽しまなきゃいけないって言うのに。結局、弟子入り断ったほうが良かったのかな。いや、それじゃあ終われないし………。」


嫌になって、ため息をつく。

頭の後ろをガシガシと掻くと、その瞬間、やっぱ自分は変われてるって実感する。

でも、肝心なところが買われていないと言う事実に、やっぱりちゃんと向き合わなきゃいけないのかもしれない。


「………私らしくないな。もうシリアスは御免なんだ。疲れたんだよ。そう言うのには。」


そう言いながら、目に汗が溜まってるところ、やっぱり私はシリアスを抜け切れていない。


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