prologue
はじめまして能江 賢です。
2018年11月29日投稿開始しました。
よろしくお願いします。
殺風景なコンクリートの部屋の中にコンピュータと人間が一つずつ。
薄暗い部屋にある唯一の明かりはコンピュータのモニタのみ。
そこではただひたすらキーボードを叩きつける連続的な音が鳴り響くばかりだ。
今時メンブレン式のキーボードなどという骨董品を使用しているのは彼くらいのものだが、押し並べてこういったものは人々をノスタルジックにさせる。
しかし彼にその余韻に浸っている暇はない。
彼がこれから何を成し、何を変えるのか。はたまた彼が成さずとも、何かが変わっていくのか。
彼の指が止まり、久方ぶりの静寂が部屋を包む。
彼は大きく息を吐いて、軽く咳払いをし喉を整えた。
レコード開始の音が小さく鳴り、画面に映し出させる波形が一直線から細かく振動を始める。
「はじめまして。私は3018年の最後にして本物の科学者だ。突然だが君に未来を、人類を救っていただきたい。世界を疑え。自分を信じろ。幸運を祈る。」
短く早口で、しかし一縷の期待を乗せた声音を記録し、再び画面の波形を止めた。
すぐさまキーボードを叩き始めた彼の足はジグソーパズルのピースを崩すかのように刻一刻と消失している。
額を流れ落ちる汗には気にも留めることはない。どうせその汗の一滴さえもデータでしかないのだから。
彼は世界に抗い、世界に消される。
しかし彼の顔に後悔など微塵も感じられず、瞳は未来を見ていた。
彼は今まで一番高い音でEnterキーを響かせた。
その彼はもういない。
部屋にあるのは一台のコンピュータだけだ。
暗い部屋を淡く照らすモニターに映るメッセージは誰にみられることもなく空を切る。
—―—Message Sent. Operation All Green.———
さて、プロローグということでここから物語が始まっていきます。
まだまだ展開も内容もさっぱりかと思いますが、私の拙い文章にもうしばらくお付き合いいただけると幸いです。