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過ぎたことなら仕方ないでしょ

 今日は久し振りに疲れ果てるまで惰眠を貪った。普通に寝るだけだと大体お昼少し前くらいには起きてしまうのだが気合いが入っていたからな、起きたばかりの微睡みと少々の心地良い疲労感が合わさって最高の気分である。体感で15、6時間ほどだろうか。


「60年だよ」


 あ?


「最低でも60年寝てたんだよ君は!」


 起き抜けに大声とは酷いな、一番やっちゃいけないことだぞ。


「折角お祝いに来たのになんだいその態度は、その内起きるかなと待っていたのに」


 重たい瞼を開けて正面を向くと、むすっとした横向きの見覚えのある顔が視界に入った。


「あ゛ー……あ゛え゛え゛え゛あ゛、ぁあ、あー、お久し振りです神様」

「声が汚い!あとボク創造神ね。神様だとキミもそうだから」


 こちらに来て声を出すのは初めてじゃないか?というか前会った時も私は声を出していなかったしな。


「しれっと流したねキミ、というかせめて起き上がってはどうだい」

「はいはい。あーどっこいしょーっとぉ」

「爺臭い」

「(失礼な、心は28だぞ)はーすいません。それでお祝いって?」


 起き上がり、一応正座をして話を聞くことにする。


「いやね?キミもこっちに来て丁度1000歳になるからお祝いをしようかと来たんだよ、したらグースカ寝てるから起きるまで待ってたんだよ。もうキミ1060歳になっちゃったじゃん」

「いやあすいません」

「申し訳ないと思ってないだろ。…まあいいか、お誕生日、おめでとう」


 創造神ににっこりと笑顔を浮かべながら抱き締められ、頭を撫でられる。誰かに祝ってもらうというのは嬉しいが、なんともこそばゆいなぁ、と微笑み返すしか出来なかった。



「は、はい。どうもありがとうございます」

「うむうむ。ああそうだ」

「何でしょう」


「そろそろ作った人類が世界に馴染んできてね」


 人類作ってたんですね神様、お疲れ様としか言いようがないですが。


「はぁ、そりゃまた御目出度いことで」

「そうなんだよ、出だしで失敗する可能性も無いわけじゃないからね。めでたいことだよ」


 うんうんとドヤ顔で頷く創造神。


「まあ近いうちに出会うかもしれないから。絶滅しないように適当でいいから木々の数とか調整してみてね」

「え、なんですかソレ」


 笑顔のままの創造神の動きが固まる。すごい、微動だにしていない。


「……あれ、言ってなかったっけ?」

「言ってないですね、居るだけでいいとしか」

「あー、あー…そっか、うん。そうだったね」

「はい」

「うんまあね?やんなきゃいけないって訳じゃないのは本当だよ。現に今も補助用の世界樹だけでやれてるし。でもそういうの出来るよってボク言わなかったっけ?」

「言ってないですね」


 再びの長い沈黙。創造神は顎に指を当て、眉間に指を当て、そして両手で顔を覆った。


「うん言ってないわ。完全に言ったつもりだった」

「ええ……」

「えっでもなんか気付かなかった?」

「あーそういえば」


 私はここに来てから気付いた「気」の存在やその巡り等を粗方話してみた。そして観察した結果と考察も。学生の時を思い出して勝手に軽い鬱になってしまった。


「うんうん、大体合ってるね。ぶっちゃけて言うとその「気」に当たるものがマナ、塊は魔石で、そっから取り出すのが魔力さ」

「へー、あ、じゃあ鳥が吐いてた火って」

「うん。魔法だね」

「Oh、ファンタジー……」

「あの世界の出身だと意外かもしれないけどマナのある世界の方が多いんだ、色々と都合がいいからね。っと、少々話題が逸れてしまった」


 そうして私は創造神からマナを使った植物の制御と管理を学ぶことになった。学ぶと言ってもダラダラと他愛のないことを喋りながら遊んでいるようなものだったが。


「よし、じゃあまずは君の体内のマナから制御出来るようになろう。流れは見えるね?」

「はい」

「そこから体を動かさずに筋肉に力を入れるような感覚で、体に圧を掛けてみよう」

「んー…?こう、ですかね?」

「近いね、実際に筋肉に力は入れなくていいんだけど、イメージがしやすいから今はそれでいい。そのまま力を掛ける場所をずらしてー」

「うぐぐぐ……」

「よしよしいいぞー、頑張れっ頑張れっ、……はい休憩ー」

「ヴァーしんど……」


 力こぶを作りつつ骨や関節までそれを動かすような感覚である。しんどい。というよりまず力を入れるという感覚が懐かしすぎる。


 右脇腹から右腋、右手の指先まで行ったら右肩に戻して鎖骨から首、頭、そしたら左半身に持って行ってそこから下半身に……といった具合である。エクササイズに近いだろうか。

 そんなこんなを僅か数日、起きている時に練習する。


「体内での制御は大体オッケーかな、よしじゃあ外に出してみよう。丁度君の体に蔓やら枝やらが巻き付いてるからそれにしようか」

「はーい」


 そう、こっちに来て結構初めのほうに着ていた服はとっくに風化していた。気温は問題にならないし誰か他にいる訳でも無いからとそれからずっと全裸であった。別にそのままでも良かったのだがある時から植物がいい感じに大事な所を守るように生えていたからまあそれでいいとしていた。腕や脚に軽く巻き付き、股間と大きめの胸はしっかりと葉……胸?


 視点を下ろすと真下が見えない。あれ?私は男だったよな?いつ変わった?そう髪は緑で…違う、黒髪だったろう確か。あれ?駄目だ思考がまとまらん、俺の息子は……ある。あるぞ、良かっ……


 妹も出来てました。


「植物の神だからねぇ、花をつける物だと両方付いてるしそんなもんでしょ」

「いやいや待ってくださいよ、いつからですかこれ」

「こっち来て最初からだよ?外形はゆっくり変えるのが定石だからね。顔も綺麗系だから安心してよ」

「そういうとこですよ創造神さま」

「いやー大体の神は色々と最初から常識として頭に入っちゃってるからなあ……人からの格上げなんて滅多にないし」


 見事なアハ体験を食らって大混乱ではあるのだが、慌てるにも体力は要るのであって。


「うん、はい。取り敢えず寝ますか。なんかもう疲れた」

「まだ本題に入ってないよ!?ちょっ、もう寝た……」

「Zzz……」




「また60年寝るのかと思って焦ったよ」

「いやああれは寝るぞー!ってガチで寝たせいですから」

「ガチの睡眠って何?まいいや、今回はマナの放出をやってみよう。適当にマナを込めて、そこから外に絞り出すように動かすんだ。ホイップクリームみたいな感じでね」

「気軽に言ってくれるなあ」


 言われた通りに力を入れてみるとマナがどんどん体から抜けていくのが分かる。


「なんかこれ不安になるんですけど大丈夫なんですかね?水漏れ感が半端ないんですけど」

「現状ただの垂れ流しだからねえ、そのまま続けると死ぬけど飽きるほど続けないとそうはならないよ」

「だったらせめて次どうするかくらい教えてから実践させてくれませんかねえ」

「大丈夫でしょ。よし次だけどこれは簡単だ、放出されるマナを対象に向けてどうなってほしいかお願いするんだ」

「お願いですか」

「うん。なるべく具体的にね」


 自分の右腕に巻き付いた蔓にマナを向ける。それじゃあ取り敢えず肘から手首まで隙間なく、ゆったりまくように伸びてみてほしい。そう頭の中で考えると右腕の蔓が伸びていき、綻びなく綺麗に巻き付いた。手首付近で半径が僅かに広がったのに気配りを感じる。


 面白くなってきたので全身コーデをしてみることにした。まず左腕は右と同じ様に、脚も似たように蔓で足首から太ももの半ばまで巻く。胸は下半分までを葉で隠し、アンダーに枝をぐるっと一周巻く。そこから尻くらいまで届く大きな葉…花弁で出来ないかな?出来る?じゃあそれを前が開いたワンピースのように生やす。首元が寂しいからネックレス風に蔓を伸ばしてみよう。真ん中に白い花を咲かせてワンポイントだ。パンツは大事な所が隠せる程度に葉と蔓で成形。あとローライズで。


「いよいっしょ…あそうだ」


 体が重い。そういえば座るか寝るかで全く立っていないしな……よし、今作った植物達よ、私を立たせてほしい。服の形は崩さないでね。


「自分で動くより楽ですねこれ、あとデザインはどうでしょう」

「贅沢なマナの使い方だね。結構扇情的だけど元男としてどうなの?」

「一度は美少女になりたいと思う男は多いと思いますよ」

「そっかー……よし。大体のことは教えたやり方で出来るから。じゃあこれで一通り君の権能の説明は終わりね、頑張れ新神、いや待て。そうだな…」


 唐突に何かを考え込む創造神。どうしたんだろう。


「……よし。今日から君は植物神、フランクに呼ぶときは樹神さまだ」


 自信たっぷりな顔つきの創造神にそう名付けられる。ぶっちゃけ最初からそういう神にしかならなそうでしたよね私?

 しかし……改めて誰かに名付けられると納得というか、根拠の無い自信が湧いてくる。樹神さま、か。


「はい。ありがとうございます創造神さま。面倒臭くならない程度に植物を弄ってのんびりさせていただきます」


 そうして私の神としての生活がスタートした。大体は寝てるけどね。

会話ってめっちゃ字数増えるね。でも今回会話しかしてなさそうだけど大丈夫なのかなあ

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