第7話「もう1度くらいは会ってもいいかな」
ミイニャの魔法契約はまだ20分の1ほど済んだ程度だそうで。
僧侶の書と睨めっこしては、ぶつぶつ呟き、右手の指でお腹の当たりを抑えたりしていた。
「量が多いです。使わなそうな呪文もあるみたいですけど……念のためにすべて術式に記すのは大変な作業ですね……優斗君、励ましになるので私の左手を握ってください。そして左手で僧侶の書を私の目の前に見えるように持って、移動をお願いします」
「お安いことだぜ。だが、魔物が接近したら戦闘のためにすぐ離すぞ」
俺は言われた通り、手を繋ぎ僧侶の書を持つ。
「複数の魔法術を持っているなら、回復魔法も補助魔法も残念ですけど教えられないです。うんのよさにかけてくれると言うなら、記してもいいですが……」
「大丈夫だ。元々魔法も必要なら、あのお姉さんが……」
教えてるはずだよな。それをしなかったのは、剣を極めれば俺が幸せになれると思ってのこと。
あれ? 俺はお姉さんのことすごい信頼してるんだな。
まあ、2年間は地獄だったけど、あれがあるから今こうしてマアニャとミイニャ、それにクレアと一緒に居られるんだし……もうチャラになったもんだし、この先は幸せプラスだもんな。
あの呪いを解くことが目的で、最終目的は俺自身の幸せを掴むことだけど、あのお姉さんを捜すことはそれらをやり遂げるために必要かもしれないな。もう一度くらいは会ってもいいかな。
「なあミイニャ、お喋りしても作業に支障はないか?」
「はい。むしろすでに許容オーバーなので、気分転換になります」
クレアの素振りの掛け声と、マアニャが魔法使いの書に目を走らせているのを左右の横目で見てから、
「ミイニャとマアニャはアイルコットンを出るのは初めてなのか?」
「いえ、父と母がああなる前はたまに外に連れて行ってもらいましたよ。もちろん戦闘は今と同じで不参加。いつも母が優斗君のように戦ってくれてました」
「お父さんは戦闘参加してないのか?」
「父は私たちが駆けずり回らない様に必死に面倒を見ていました。サーシア姉さまと合わせて3人に目を配り、進んで行くのは大変だったと思います」
ミイニャは懐かしむ様子で語った。
なんでご両親はそもそもあんな風にされたんだろ?
頭のいいマアニャがまだ答えが出ていないのだから、俺の頭じゃ少し考えてみたところでわからないけど。
「あっ、見えて来たわよ。カスラニクスの街」
マアニャは書から顔を上げ、前方を指さした。
俺にとってアイルコットンに次いで、2度目の街への訪問だな。
家系限界突破によってうんのよさが振り切れてるミイニャが居て、俺の外れ不幸スキルも覚醒して、幸せスキルになっているし、そうそう危険なことには巻き込まれないだろうと思うが、いきなり闇の教団とかと鉢合わせになることだけは勘弁してくれよな。




