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第70話「呪いと冷気と1本の剣」

「連絡した時点でついていくつもりだったですって!」


 着替えをして、荷物を持ったマアニャはお姉さんに自分の策を披露していた。


「そうよ。闇の教団が呪いに関わっていると知れば、優斗はゼロにするっていいだすのは容易に想像できる。優斗はあたしに惚れてるし、あたしが居なきゃ淋しくて死んじゃうからついていくしかないでしょ。うんうん、あたしが行きたいって思ったし。でも、ミラ家に誰も不在じゃ騎士団への連絡とか行事の手配とか困る」


「あなた、わたくしを留守番させるために呼び戻したのね?」


「簡単に言えばそうかしら。バニア団長にも目を覚ましてほしかったし、バートンから優斗ならやってくれると太鼓判を貰ったから」


「――てことは、わたくしの性格と、喧嘩っ早い越谷優斗君の性格を読んで、バニアと戦うことも」


「ええ。優斗は負けないって信じて賭けたの。復活したバニア団長がいれば、ここに愛着を持った優斗も安心して旅立てるし」


「そこまで計算を! 妹ながら恐ろしいわね」


「パパとママの呪いは必ずあたしたちが解いて見せるわ。心配しないでって言っても無理でしょうけど、優斗が守ってくれるから。行ってくるね、お姉ちゃん」


 ☆ ★ ☆


 アイルコットン城、その地下は体感温度がまるで違った。

 肌を刺すようなその寒さにクレアは恐怖したのか、俺の袖をぎゅっと握る。


 明かりも灯っていないので薄暗く、それが余計に目の前の2人に起きた悲劇の無念さを俺に知らしめようとしているようだった。


 氷漬け……たしかにその表現以外に思いつかない。高貴な服装を身に纏った二人は、観念しているかのように静かに目を閉じて眠っているような表情で、全身を凍らされていて、その透明色の表面は全身を包み、身体に触れることを許さず分厚い壁になっていた。


「禁忌術……確かにこれは魔法で凍らされたとかじゃなさそうだ。体温で溶けてもいないし、まるで2人の時間を停止させたみたいな感じだな」


「でしょ」


「お父さん、お母さん、私は優斗君と一緒に旅をして、必ずそれを解いてあげますから、私たちを見守っていてくださいね」


 ミイニャは祈るように手を合わせ、両親の姿を目に焼き付けた。

 クレアはこの城に訪れた時には必ずそうしているように、俺の隣で目を閉じて祈っていた。


「パパ、ママ。闇の教団がそれをやったんだってことがやっとわかった。どうして2人がこうなったのかまだわからないけど、必ず真相に辿り着いて、元に戻してあげるからね。心配はしなくていいよ。ここにいる優斗が必ず守って助けてくれるから」


 マアニャとミイニャのお母さんが凍らされている前には1本の剣が、冷気を帯びて鞘に入ったまま斜めに固まっていた。


(抵抗しようとしたけど、ダメだったのか……この剣も細剣じゃないみたいだけど……)


 薄い黄色の鞘に黒い柄の剣。俺は何の気なしに近づいて、それに触れる。

 パキッと乾いたような音がして、周りの冷気が消えた。


「あっ~!」


 マアニャとミイニャが同時に声をあげる。

 2人の驚いた声を聞き、さっと俺はその剣から手を離す……触れてはいけなかったのか?

ミイニャ「1章はあと2話みたいです。ここまで読んでいただいてありがとうございます! ブクマや評価も、優斗君のプロポーズと同じくらいお待ちしてます。この先、私の活躍があるように応援してくだされば嬉しいです」

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