第6話「もう子供! もう禁止! もう鈍感!」
命令の正座を完遂したあとは、クレアと共に雑用仕事に戻った。
今日はからっと晴れている良いお天気なので、洗濯がはかどるし、お布団も干せるとは……ふかふかの布団で寝られると言うことがどれだけ幸せなことか……
(ミイニャは布団を干せる時間があったかな……久しぶりにこっちで就寝するのもいいかなと思うけど……あいつ、すげえ怒るだろうな……)
掃除を一通り終えた後は、ランチの用意に取り掛かり始めた。
「えっと何人分だっけ?」
「マアニャさまの会合に集まった方たちは、お召し上がりにならないようなのでバートン(執事)さんとわたしたちの4人分でOKかな」
「お姫様は何の会合開いてるの?」
「さあ……詳しくは。難しいお顔をされてたから、あんまりいいお話ではないのかも」
「ふ~ん……」
俺はサンドイッチの生地にマヨネーズを塗り込む。
「もう悪戯は我慢しようね」
明らかに俺は園児で、クレアはその園児を見守っている先生みたいな関係が、その一言に込められている気が……
「甘いな、クレア。正座の恨みを返さないとならない」
「もう子供!」
クレアは口を尖らせて俺をじっと見つめる。
「……なんかその言い方はもろに可愛いぞ……」
メイド服姿のクレアは途端に顔を紅くして視線を逸らす。
クレアは黒髪のセミロングが似合う、ザ・メイド。口元を緩めた表情の破壊力は絶大だ。
「出来ればもう一度リクエストしたい」
「……もう禁止!」
可愛い……俺は心の中で盛大な拍手を送った。今度スマホで写真を撮らせてもらおうかな。
「君、さっき何かしたの? 訓練場、騒ぎになってたよ」
「特別には何も。喧嘩を買ったけど」
「……それは何かしたってことだよ……多勢に無勢でしょ」
「そうなんだけど。悪人って気がしてね、我慢できなかったと言うか……」
パンにレタスを敷いてその上にハムを乗っける。
「前から気になってるんだけど、訊いてもいい?」
「仕事中だよ」
「……もうズルい!」
「おほん、可愛さに免じて1つだけなら答えよう」
「もしかしてなんだけど、勘違いされてない?」
「……」
俺はパンを重ね、それを積み上げてラップに包んでいたところで手を止めてしまった。
クレアの質問は的を射ていて……
「図星?」
「質問は1つだけだぞ。回答は無言ってことに。第一、気にするようなことか?」
「それは……ねえ……クレアは君と話をするのが楽しいと思っているから。一緒にいたいというか……それが訊いた理由だよ」
なぜにそんなお恥ずかしそうな顔を……
「そいつは奇遇だな。俺もそう思ってるぞ」
隣で作業していたクレアの動きが止まる。また顔赤いし。一緒にいるとき1回は赤面するよな……
「今だって一緒にいるじゃないか」
「……」
「どうした? 手は動かしながらお喋りしてないと、お昼に間に合わないぞ」
「もう鈍感!」
珍しくクレアに睨まれた……なんか最近女の子に睨まれることが楽しくなって来たりしている。
クレアと君(優斗)との仲を応援してくれると言う方は……ブクマと評価をしてくれるんですか!
嬉しいです。