第66話「その幸せは自分でつかみ取る」
「ご無礼ながら……カシムは下っ端などではありませんでした。魔力を宿した剣を使い、優斗は僕も助けてくれたんです」
グランドは少しだけ説明してくれた。
「グランド、私の居ない間お前が仮の団長だったはず。こんな見ず知らずの小僧になぜお嬢様を守らせ、たぶらかせた?」
「バニア団長、あたしが優斗を信じて、策を練り上げたのよ。あなたがいたら潰してしまう策をね。敵だからって斬ればいいってもんじゃないわ。情報を聞き出して、未来につながることをやるべきでしょ」
と、マアニャは少し怒った顔になり、団長を睨む。
「団長、優斗は強いですよ。あなたとは違い、その剣には人柄がよく表れている」
「2人とも何か俺を褒めてくれているみたいでありがとう……えっとさ、団長さん。あんたまず俺に礼を言うべきじゃないか? 俺が居なきゃ騎士団は手負いを追ってたかもしれない。マアニャやミイニャだって……あんたの強さへのこだわりと欲がミラ家を危険に晒したんじゃないかと思うんだけど……」
「小僧、口の利き方に気を付けろよ。貴様程度では2人のお嬢様は守れない」
「そっちこそ気を付けるんだな。今のセリフ取り消せよ! 俺は売られた喧嘩は買うタイプなんだ」
「面白い……」
俺はそのデカい団長を睨むように視線を送る。
身の程をわきまえよって目だ。ふん、団長がどれだけ偉いんだよ。このままにしておいたら、グランドたちが可哀そうだ……ていうのは建前で、本音は気に入らねえ!
俺は3人を必ず守る。そう誓っているからこそ連れて行くんだ。
「マアニャにミイニャ、二人が彼にどれだけ引かれているか知りませんけど、よくもわからない召使いに大事な妹を連れて行かれるわけにはいきません。バニア、調子に乗っているその子を少し懲らしめてあげなさい」
「仰せの通りに」
この団長も俺をいたぶりたいらしいな。
「お姉ちゃん!」
双子姉妹は抗議するように、姉を睨みつけた。
「2人とも大丈夫だよ。俺、こんなおっさんに負けねえし。出発の前に軽く運動しておくのもいい」
☆ ★ ☆
少し体をストレッチする。カシムより強そうだし、油断しないようにしないと。
当然、団長って言われてるんだ、弱くはないだろ。
訓練場の庭には騎士団員、マアニャとミイニャ。クレアにバートンさん。グランドにバニア団長、それにサーシアってお姉さまがいた。
すでにバニア団長は、俺が向き合うのを待っている。
「優斗君、怪我だけには気を付けてくださいね。団長は強いらしいので。うんのよさを上げておきます。トゥトゥルウルウ」
「抱き着くな! あたしはあんまり心配してないけど、やられたら一緒に行けないかもしれないから、負けるんじゃないわよ!」
「優君、無茶しないでね。クレアは祈ることしかできないのが悔しいけど」
「優斗、頑張れ。僕は君を応援する」
ミイニャとマアニャとクレア。それにグランドは俺を激励する。
美女3人に応援されたら、答えなきゃいけないだろう。
「優斗君、バニアに少しお灸をすえてください」
バートンさんは団長を見据え、俺に頼む。お灸……バートンさんは俺の方が上だと思ってくれているのかな?
騎士団員の3分の2以上がこっちに集まっていた。
「わかりました……負けないよ。せっかく一緒に行ってくれるって言ってくれたんだ。その幸せは自分でつかみ取る」
俺は団長と向かい合い、ゆっくりと剣を抜く。




