第57話「初心者の杖」
今朝は早起きした。
カフェの仕込みを軽く済ませ、まだ小鳥たちの囀りが耳に届く時間帯。
俺とミイニャは武器屋へと赴く。こんな早い時間から開いているのかと思ったが、到着したときにちょうどドアが開き店主のおじさんが出てきた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。おお、兄ちゃんか。昨日の話は聞いたぜ、近所に俺のおかげだと自慢してたんだよ」
とっつきやすい陽気な人だな。どちらかと言えば人見知りの俺には助かる。
「ははは……ちょっとお話が」
「そうかい。入んなよ。もう営業開始だ」
俺とミイニャは店内へとお邪魔する。
「この剣、ありがとうございました。すごく使いやすかったです」
「そうかい。大切な子が守れて何よりだ。それは兄ちゃんが大切に使ってくれ」
「あの、この剣って誰かの物ですか? バートンさんも知ってるふうだったんで」
「ああ。別に隠してることじゃないしな、その剣はな、そこのミイニャ様のお母さんが家に持ってきたもんだ」
「えっ!」
「母は剣士だったので。驚くことではありません」
お店にある武器を眺めていたミイニャが補足してくれる。
「軽いけど、女性が装備する細剣じゃないからな。1回装備したけど、どうもしっくりこないからって、預かっていたんだ」
「あの、それを俺が装備しちゃってていいんですか? 大切に保管しておくとか……」
「問題ありません。むしろ優斗君だからこそ、わたしは手にしていてほしいです」
「だそうだぜ。娘さんが言ってるんだ。渡して正解だったよ。それに武器は使用しなきゃ意味をなさない……報告に来たんだろ。よくやったぜ」
「ありがとうございました。あっ、報告だけのつもりだったんですけど、僧侶の武器って何かありますか?」
「僧侶? なんでまた……」
「いえ、このユーモア娘、ミイニャが旅に同行するようで……」
ミイニャは出番が来たと言う感じで、それはそれは目を輝かせ、
「おじ様、攻撃力が物凄くて、魔法力が自動回復するような超レア武器を探し求めています。代金ならキャッシュで払いますから」
「……いや、うちにそんな高価なのはないよ」
「えっ!」
ミイニャは嘘、そんな……みたいな顔をして、衝撃と同時にショックを受けたようだ。
「僧侶か……ならこれだな。初心者の杖。使いやすくて最初に装備するにはこれがいいよ」
「使えないお店ですね」
ぼそっとミイニャがつぶやき、その表情を見て店主さんは固まった。




