第56話「最後はミイニャに伝えよう」
ミイニャのカフェ(グランデ)の2階の戻ってくると、案の定激怒しているミイニャと鉢合わせする。
お布団の上で正座させられ、ミイニャは俺の前に仁王立ちした。
「どこに行ってたんですか?」
「邸だよ。色々今日の反省を……」
「反省! ないですよね、優斗君がカシムと言う闇の教団員を倒した。結果、お姉ちゃんは無事だし私もケガなどしていません。私たちの命令を涼しい顔で完遂してくれた。さすがは優斗君です。どこに反省する箇所がありますか?」
ゴゴゴッ! と、音がしてくるようだ。威圧感すげえ、こええ……
「色々話を聞いておかなきゃダメだと思って……俺の仮説があっているかマアニャに確かめたかったし」
「つまりお姉ちゃんに会いたくて会いに行ったと」
ミイニャの眼は細くなり、俺を捕えてぶれることもない。
「……そういう言い方もできなくはないかな……あっ、そうそう。マアニャがミイニャの命令、優先、上書きはさせないってことを伝えるようにだってさ」
「つまりお姉ちゃんは本気だと。私とマジで取り合う気だってことですか!」
「さあ……」
「なんで明日まで待てないんですか? そんなに会いたいほど病に?」
「団長がいつ戻るかわからないだろ。帰還したら俺はここを出るつもりで……」
「えっ!」
ミイニャは小さな口を開けたまま固まる。
「あのう、ミイニャさん……」
「……なんて言いましたか?」
「いや、ですからここを去らないといけないわけで。闇の教団、ダークスフィクだっけ? とにかくそれを潰すために」
「どうして優斗君がそんなこと?」
「だって、2人のご両親の呪いは解いてあげたい。それには闇の教団倒すのが手っ取り早いっしょ」
「お姉ちゃんにそれを言ったんですか?」
「えっ、うん。伝えておいた方がいいだろ。お世話になったし」
「どうして私に先に言ってくれないんですか!」
顔を至近距離に近づけられ、目いっぱい睨まれる。
「だって、ミイニャには時間かけてゆっくり説明できるだろ。ここにいるんだし」
「……もう決めてしまったんですか?」
「まあな。あのお姉さんが俺をここに飛ばしたのは、そうしてくれと願っている気もするし。ここに来た理由も自己解釈できたし」
「私がここにいてくれと命令してもダメですか?」
「優しいミイニャは俺を困らせることはしないだろ」
「なんですか、それ! してますよ、いつも……」
「すげえ楽しかったし、幸せだった。ミイニャには言葉じゃ表しきれないくらい感謝してる」
それを聞いて、ミイニャは布団に飛び上がり、俺にハグしてくる。
おれはその赤みがかった茶髪を触り、
「カフェ、ぼったくりに戻すなよ」
「……」
「ミイニャの可愛さなら毎日繁盛間違いなしだ」
「……」
「それからプロポーズなんだけど……」
「……」
涙が自然と頬を伝わってくる。ミイニャとの思い出が脳裏にフラッシュバックされて……
ずっとこのままここに居たい。マアニャとミイニャの召使いでいたいな。
2年の地獄(不幸)は、この2カ月の幸せでチャラみたいなもんだ。
「あれ……泣き虫だなあ、俺は……」
ミイニャにカッコ悪いところをみられない様に、抱きしめる。
「プロポーズだけどさ……やり遂げるまでどのくらいかかるかわからないから、待っててくれなんて俺には言えない。だからもし大切な人が出来たら、迷わず飛び込めよ……戻って来た時、もし一人身だったらその時はしちゃうかもしれない」
「……お姉ちゃんは? クレアは?」
「あの2人にもおんなじことを言うよ。1人でも残っていてくれればラッキーだ」
「……ずるいですね。かなりズルいです……でも、そんな優斗君が私は大好きです……」
ダメだ、涙が……
「たしかに団長はもうすぐ戻ってくるでしょう。お姉ちゃんがサーシア姉さまに婚姻の連絡をした以上は」
「あと何時間かもしれないが、それまでは仲良くしてくれればうれしい」
「いえ、それは出来ません!」
ミイニャはきっぱりと否定する。
「……ひょっとして去る者は追わずということか?」
「私ですか、追いますよ。追い続けます」
ミイニャは密着させていた体を離し、
「一緒に居るのがあと数時間……ご冗談を。私も優斗君と一緒に旅立ちます!」
ミイニャの言葉を3度脳内再生する。
「……えっ……」
「色々用意をしないと。お店は誰かにお譲りして……身支度を整えて、それから」
「待て、待て。なんでついてくるんだよ! 町から出たら魔物出るんだぞ、危ないんだぞ。わかってるのか?」
「なぜかって、決まっています。優斗君が大好きなので! 一緒に居たいんです」
その迷いのない表情を見て、また一粒の涙が零れ落ちる。
「それに守ってくれます、優斗君が。うんのよさが振り切れた私と一緒の方が絶対に安全だと思います」
「そりゃあまあ一理あるが」
「もう一つ言うなら、私、このアイルコットンを出て見たかったんです。そして優斗君とならそれが実現できます。願ったり叶ったりなんですよ」
思っても見ないことだった。ミイニャとの旅か……1人くらいなら守ってあげられるだろうか……いや守らないとだめだよな。
「僧侶としては初心者もいいところですが、努力と知恵ですぐにレベルアップします。なので、一緒に行ってもいいですか?」
「ダメだって言ってもくるんだろ。性格はすでに把握してる……その嬉しい申し出、迷いなく受けるよ」
「トゥトゥルウルウ! うんのよさが格段に飛躍し、ラブラブ出来る僧侶が仲間になりました」
「……自分で言うなよ。あしたの朝、一緒に武器屋に行こう。用事があるんだ。それに……」
僧侶の武器を買わないといけない。僧侶って戦闘できるよね?
「はいっ。どこへでもお供します」
「それとさ、反対されないだろうな、ミラ家のお嬢様だろ?」
「大丈夫です。すでにミラ家出ていますし、どこへでもランデブーです」
ランデブーは違う気がするぞ。
はあ~……仲間になりたいそうなので、僧侶ミイニャを仲間にして連れて行くことにします。
俺は、一緒に行きたいって思ってくれた、そのミイニャの気持ちが本当に嬉しかった。




