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第55話「パニックで超パニック」

 横目でクレアが半身よくしているのをチラ見して、俺は肩までお湯へと浸かる。


「気持ちいい。この大きなお風呂にもう入れないのかと思うと残念だな」


「えっ!」


 ビックリした様にクレアは声をあげる。浴室内によく響く声だった。


「それ、どういう意味?」


 クレアは俺の肩に触れる。ぷるるんと形のいいおっぱいが……


 うわ~、相変わらずお胸が隠れてないから!

 それを凝視することは俺には出来ないから!

 俺は男の子なんだってば!


「ねえ、どういう意味?」


「冷えてきただろ。肩まで浸かった方がいい」


 見えるから! 話どころじゃない。

 湯船に入る音も何か気にするとエロい感じがする……


「あの、そんなに近づかなくても……」


 少し密着してませんか!


「淋しいから。話して、ちゃんと聞くから」


「うんっ。俺、アイルコットンを出ようと思ってる。ほら例の闇教団を放っておくわけに行かないし、あの2人のご両親の呪い解いてあげたいしな」


「それはお2人のため?」


「どうかな? 自分の為でもあるかも。俺さあ、幸せになりたいんだよ。この2ヶ月、それは実感していたしこのままそれが継続していけばいいって思ってる。でも、このまま闇の教団とか魔王か? 見て見ぬ振りしてたら、必ずそれが俺の幸せを壊す。そんな気がするんだ……だから……クレアにもあの2人にも全部終えるまで待ってて欲しいなんて、俺にそんな無責任なことは言えない。どのくらいかかるかもわかんないし」


「団長は強いよ。だから任せて……優君は今まで通りじゃダメなの? クレアは幸せじゃなくなっちゃうよ」


「それは俺と一緒だと幸せだと?」


「そうだよ」

 躊躇せずに言ってくれるのか。


「ありがとう、クレア。団長が強くても、団員を守り、あの2人を守らなきゃならないから。それに立場上、俺みたいに自由に出来ないだろ」


「クレアはやだよ。優君のその決断には賛成できない」


 がばっと抱き着いてくる。


「おお……胸が……いい匂いが……」


「もうエッチ……口に出さなくていいのに」


 やはり、もう~はクレアが言うと可愛いな。


「何も会えなくなるわけじゃない。連絡手段としてスマホをクレアにもあげるから」


「優君は淋しくないの? クレアとマアニャ様とミイニャ様とお別れして」


「淋しくないわけないだろ。出来ることなら、俺はこの生活を守りたい。けど、あの2人のご両親は呪いにかかってる。2人を幸せにしたいならまず呪いを解かないと」


「クレアは?」

 今までで一番おっかない顔をクレアは作った。


「はい?」


「その言い方だと、クレアは別に幸せじゃなくてもいいんだ!」


「そんなこと言ってないだろ。でもなあ、俺は1人しかいないわけで、一夫多妻は重罪で、困ったことになりそうだ。だから1人でも戻って来た時に気持ちが残っていたら俺はさ……」


 その後の言葉が出てこない。言うとかなり卑怯で無責任になることがわかっていたからだ。

 言いよどんでいるのを見て、クレアはそっと俺の頬にチュと口を触れさせた。


「優君と離れると聞いて、クレアはパニック。うんうん、超パニックになっちゃった……だから少し落ち着いたら、もう一度クレアは話をするね」


「うん……」


「絶対に何も言わずにいなくならないで」


 俺を一瞥して立ち上がったクレアはお風呂から出て行く。

 その背中は淋しそうで、俺は何も声を掛けられなかった。

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