第52話「まずはマアニャに伝えよう」
今回の件はザビア家の息子カシムが、闇の教団員ということを付き人がその目でみていたので、ザビア家には真実を報告すると約束し、バートンさんに手負いを負わされた兵もまとめて引き下がっていった。
「それから当然、絶対当たり前だけど、婚約、婚姻は完全破棄! 今後一切、ミラ家への立ち入りをザビア家は禁止よ!」
と、マアニャは付き人にそれはそれは偉そうに伝えていた。
守れた。この行動についての選択肢は間違ってなかったよな……
せっかく美人で可愛い双子姉妹と同じ使用人ザ・メイド、クレアと仲良くなってほんとに幸せだったけど、俺はもう……
やっぱり外れ不幸スキルなのかな……
☆ ★ ☆
その夜、ミイニャがシャワーを浴びている間にこっそりと抜け出して、ミラ家の邸へと俺は向かった。
遊戯室にいたバートンさんにマアニャに会いたいと伝えてみる。
「直接、お部屋に向かえば歓迎してくれるでしょうに……」
「いや、なんか恥ずかしいし、庭で待っていると伝えてください」
「かしこまりました」
俺はため息をついて、昼間は騎士団が訓練をしている広い庭へと出た。
楽しかったな、この2ヶ月。ほんとに、ほんとに楽しかったぜ。
あのババア、いやお姉さんは俺にカシムを止めること、そして呪いを解いてくれと言ってるんだと解釈した。かけたのが闇の教団なら、全員倒してくれってことだな。なぜ自分でやらないのかはわからないけど。
術者が死ねばたぶん呪いは解除されるだろうし。
「なによ、こんなところ呼び出して……はっ、まさか愛の告白! それかいきなりプロポーズ! いちおうムードとか考えてるの。少しだけ感心してあげるわ、召使い」
テンション異様に高いな。まさか呼び出されて舞い上がってくれているのか?
「違う。闇の教団について調べてたんだろ。知ってること教えてくれ」
「……なんで今? 別にいつだっていいでしょ」
「かけたのが、その教団なら片っ端から倒してゼロにすれば解けるんじゃないかっていうのが、馬鹿な俺の考えだ。どうなの?」
「仮にそうだとしたらどうするのよ?」
「ゼロにするよ、俺が。召使いは強いから、そんな教団員に負けないし、それが一番手っ取り早いからな。ミイニャからご両親の呪いの話を聞いた時から、なんとなくここを出てくことになると思ってた」
「まさか今すぐこのアイルコットンを出て行く気?」
「いや、ここには愛着があるし、可愛い双子姉妹とメイドさんが気がかりだから。団長さんっていうのが帰還したら出るつもりだ。俺自身、その団長っていうのをこの目で見てみたいし」
「そう……」
マアニャは口元を緩める。
「うわ~、俺が居なくなるのがそんなに嬉しいのかよ! せっかく命令を全うしたのにマジでショックだぜ」
「そんなわけないでしょ! あんたさ、勘違いしてんじゃないの! あたしの思惑、作戦はまだ終わってなくて継続中。あとでわかるから度肝抜かれなさい……それから、今日はほんとにありがとう!」
やっぱこいつの性格、見た目、中身……全部ひっくるめて可愛いな。
「今までで一番素直だ」
俺も素直になってマアニャを褒めてあげる。
「はあ! あたしはいつだって素直でしょ。キスの時だって素直だったでしょ……やべぇ、すげえ可愛いなとか思ってんでしょうが!」
「……」
「なに沈黙してんのよ、はは~ん、さては図星だった?」
「うるせいなぁ……」
マアニャは俺との距離をゆっくりと縮めてきて、肩に埋もれるようにもたれ掛かってきた。
赤髪目立つな。
「……怖かったのよ、ほんとは……カシムが! でも、前に進むためにはああするのが一番いい方法だと思ったの。あなたが来たから、ああしようと思ったんだからね。あたしの召使いなら、負けないって……」
「そこまで信用、信頼されているとは思わなかったぜ。うん、それは嬉しい。もっと早く聞ければもっと仲良くなれたのに」
「あなたは見事に期待に応えてくれた……だからご褒美をあげるわ! キスして!」
大きな瞳で俺の顔を捕え、訴えるような眼差しが向けられる。
「えっ!」
なんでいつもこいつは予想外のこと言ったり、したりしてくるんだよ!




