第51話「2人の大事な命令は果たしました」
「なんなんだ、お前は?」
「越谷優斗。団長が居なくても俺がいるんだよ。2年間地獄を経験した。24時間警戒を解くことを許されず、気を抜けばたぶん死んでたと思う回数は数えきれない。だからこそ手に入れた剣術と武術。卑怯なお前の剣じゃ俺に傷1つ付けられねえよ。闇の教団、強い奴いるんだろうな?」
「調子に乗るなよ、カスが。お前なんか幹部には歯も経たないだろうぜ」
「それを聞いて安心したよ。俺が1人残らず片づけてやる」
気絶させようと再び剣に手を伸ばしたときだ、ぼっと紫の炎がカシムを覆うように燃えだし、一瞬にして広がったかと思ったら、跡形もなくなり、残ったのは焦げ跡のみという……
「なんなんだよ?」
完全に肩透かし状態だ、これからって時に……まだ全然力出してないのに……
「やっぱり……」
状況を見ていたマアニャがゆっくり近くに来て、軽く俺の背中を叩く。
「闇の教団員はね、自分が負けを悟ったら命を燃やすように呪いをかけられてるらしいの。団長が倒した人もそうだっていうのを聞いてた。今回のことで、闇の教団が呪いに関わっていると証明できたものだから一歩前進よ……強いわねぇ、召使い。まさに圧勝だわ」
「また俺を褒めるところが出来たな。あんなのにキスされそうになりやがって。俺はみていて気が狂いそうだった」
「あらなに? この唇は自分だけの物とか思ってんの!」
マアニャは自分の口に触れ、可愛らしく微笑む。
またまたまたからかわれてるな。可愛いな、こいつ……
「当たり前だろ。現実にしたんだから……」
言っていて自分が恥ずかしい……顔もものすごく赤く染まっていることだろうな。
「じゃあもう一度してみる? 今度はそっちから……」
おいおい何を真っすぐな女の子みたいなこと言ってんだよ!
「お姉ちゃん! 優斗君は私だけの優斗君なの! 横取りとかしないでよ!」
ミイニャが喧嘩腰に向かってくる。
「ミイニャ、わからないの? こいつ、あたしにメロメロなのよ」
「そ、そ、そんなことはないと思います。クレアと優君だって仲がいいと評判で……」
どこで評判なんだ、クレア。
……あっ、やべえ。マアニャとのキスをばらしてしまった……
「あの、お取り込み中にすいませんけど、俺はバートンさんの様子を見てくるから」
少しずつお三方から後退し距離を取る。
「取り込ませてるのはあんたでしょ! まさか、二人ともしたんじゃないでしょうね! この大馬鹿やろう」
「優斗君、あとで殺します」
ミイニャの眼は本気だ。
「クレアは最後に選んでくれればそれだけで……」
クレアはいい子で、怒ったりしていない。
「おやおや、賑やかですね。こっちも片が付きましたか?」
バートンさんは涼しい顔でゆっくりと近づいてきた。見た目傷なし、服に破れもなし。汗すらかいていなかった。
「大丈夫ですか?」
「ええ。執事業務に支障が出ないように、多少運動しましたが。その燃えあとは……やはり闇の教団員でしたか、カシムは」
この人、気づいてたな。しかしあれだけの数を制するとは、やるねえ。
「らしいですね」
「越谷君……いや、優斗さま。お嬢様をお守りいただき何とお礼を言えばいいか……ありがとう」
バートンさんは背筋を伸ばし、俺に一礼した。
「よしてくださいよ。俺は2人の召使い。命があれば全うするまでです」
俺は少し慌てて、自分でもちょっと恥ずかしいことを言ってるなあと思う。
褒められていることになれていないので、照れまくってしまった。




