第49話「主役はワンテンポ遅れて登場するんだよ」
「なにしてるんですか! 出るタイミングでしたよ。もう手はどけたのに」
ミイニャは俺を叱ってくるが……
「あのくらいなら大丈夫だ。かなり手前で止められてる。それに……訳ありでな」
「早くあんな人、やっつけてください。これは命令です」
わかってるさ、そんなこと。
グランドは強い。
だから奴の申し出は条件付きで受けてやった。
☆ ★ ☆
「マアニャのお相手カシムは強い剣士だ。名もあげてる。だからこそ……明日、もし戦いになったら僕にやらせてくれないか? 団長としてお嬢さんを守るのが仕事なんだ」
「本音じゃないだろ、それ……俺が気づいてることをお前は気づいてる。だからわざわざそれを頼みに来た。惚れた女の子にはいいとこ見せたいもんな……いいぜやってみな、騎士団長代理。やばくなったら俺が代わってやるよ。だから全力でねじ伏せろ。お前だって不安だからわざわざ俺とミイニャに話したんだ。俺を頼っているなら、お前の気持ちにもほんのちょっと答えてやる。マアニャとミイニャ優先だけど」
「どのタイミングで手助けを?」
「自信ないのかよ……そうだな、片膝を着いたらかな」
☆ ★ ☆
カシムの剣捌きは速く、最初は互角にやり合っていたが、徐々にグランドの方が押されてきていた。
「弱いねぇ。お前が仮の団長か……おらっ!」
少し剣圧を強くしたその一撃で、グランドは片足を斬られ膝をつく。
「騎士団が数十人束になっても僕にはかなわないよ……剣には自信があるんだ。死ぬ前に見せてやるか」
カシムの握っている剣が闇の光(紫色の光)を纏う。
「ここんとこにさ、増幅魔法がかけられてる。負の感情が大きくなれば大きくなるほど力を増す。今、僕が考えているのは、マアニャを早く抱きたいってことだけだ」
カシムは胸のあたりを指さし、またも俺をイラつかせることを言う。
感情を抑えないと……熱くなるのは悪い癖で、最大の欠点だってあの人は言ってた。
「演技とはいえ、よくお嬢さんはこんな者の近くに居れたもんだ」
「ばあか、これからはずっと傍にいるんだよ! 洗脳してでもな」
グランドの頭をかち割るように、その剣は振り下ろされる。
すでに飛び出した俺は、ギリギリのところで剣でその一撃を止めた。
「あぶねえ……間に合った」
「優斗、助けが遅いぞ。片膝着いた時点で割って入る約束だろ」
「あれは約束じゃなく、俺が勝手に言ったことでお前は同意しなかった。助けてる最中に四の五の言うな」
「想像以上に強いぞ。おまけに魔力も宿している……それでも勝てるんだな?」
男に見つめられても全然嬉しくない。
「ああ。全然問題ない……けどいいのか、俺がこの場を救ったら、マアニャはさらに俺に惚れちまうぞ」
「いいさ、君なら……僕の思いもぶつけてくれ」
「お前がそういう奴でよかった。イケメンは伊達じゃないな……了解だ!」




