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第47話「その唇を奪われてたまるか!」

 時刻は9時ジャスト。時間通りで予定通り。


 城内、婚姻を執り行うその場所は、ただっ広いホールのようだった。すでに主役の2人は向かいあっているのが遠目からでも見える。


 あいつがザビア家の息子か。エロそうな顔してるな……

 あっ、グランド、ベストポジションにいるじゃねえか。

 仮団長のイケメンはマアニャから少し後方で警戒するように視線を左右に動かしていた。


 あそこなら何か起きればまず間に合うな。


「もっと頭を下げてください。お姉ちゃんに見られたら反応されて、お姉ちゃんの目的が失われます」


「はいはいはい」


 マアニャの野郎。肌の露出した赤ドレスなんて着てやがる……そんなのあるなら俺の前で着てくれよ!


「優君、ミイニャ様……」

 クレアが俺たちを見つけ、小走りに駆けてきた。


「よお、クレア。俺が居なくて淋しくなかったか?」


「淋しかったよ……あっ、剣を持つとさらにカッコいいね」


「そうかな?」


「持ってなくても優斗君はカッコいいです」


「そうですね。カッコいい」


 なんなの、この二人……俺のテンション上げしてくれてるのか。


「こっちへ」


 クレアは中腰になり、マアニャの視界に入らないように主役の2人に近づいていく。


 クレアはたぶん俺が剣を使えることを随分前から気づいていたはずだ。


「勘違いされてない?」


 あの問いは、騎士団の方が向いていたのに、マアニャには勘違いで召使いにされてってことなんだろうけど、俺が召使いを選んだんだ。クレアと一緒の使用人を。


「ここでいい?」


 マアニャからは死角になり、状況を把握できる場所。マアニャとの距離30メートルってとこか。


「うん。なんかあると危ないから、一緒にここに居たほうがいい」


「クレアも守ってくれるんだね! わかった」


「あの、手は繋がないように。その時動けませんから!」


 ミイニャはこんな時でも威圧する。


「はい……」

 クレアは俺に伸ばしかけていた手を引っ込めた。


「では婚姻を執り行いたいと思いますが……」


 ザビア家息子の付き人がマアニャを見て、確認する。


「婚姻ではなく、この場でマアニャには僕のワイフになることを宣言してもらい、この後ハネムーンはどうだろうか?」


 ザビア家の息子は俺をいきなりイライラさせた。


「カシムさま、ということは、この場を結婚式にすると言う意味ですか?」


 付き人は確認を取る。


「ああそうだ。待てないんだよ、僕は」


 カシムという男はマアニャを見て、舌を回す。欲望だらけの野郎だ……俺は抑えられるか!

 もう飛び出したい気分だぜ。


 野郎、剣を下げてるってことは、まじで扱えるのか。グランドの事前話じゃ強いらしい。


「いかがでしょう、マアニャ様?」


「そうねえ、お姉ちゃんもいないけど……キスが上手かったら考えてもいいかな?」


 マアニャは誘惑するように口元に指に触れた。

 なんて可愛い顔しやがるんだ!


「塞いであげるよ。腫れるくらい強く吸い尽くして」


 あの馬鹿、何を考えてんだよ!

 飛び出そうとする俺をミイニャは左手で制す。


「まだです。お姉ちゃんはまだ秘めた何かを明かしていない」


「そんなこと言ったって……」


 カシムはマアニャの肩に触れ、少し引き寄せるとゆっくりと顔を近づけていく。


 俺はもうはらわたが煮えくり返り、どうにかなりそうで柄に手をかけた。


 その瞬間、

 ぼっとカシムの手首が紫に燃え出した。

 奴は慌てて手首の火を消そうと振りまくる。


 俺は力を入れていた柄から、手を離すことにした。

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