第45話「形から入るのは大事です」
カチッと剣がズレないようにしっかりと前で止めた。左側の肩から譲り受けたその武器は、今か今かと出番を待っている気がする。装備するのはここに飛ばされてくるとき以来だな。
服装の方はちょっと悩んだけど、いつもの執事のような仕事着にした。俺は召使いだし、重い装備は速度を落とすからな。軽い服装の方が戦いやすい。
体調万全、あの人以外なら負ける気がしないぜ。あんまここで、いやこの世界で人と出会ったことないけど。
「準備OKですか? 行きましょう」
「ああ……て、なんだその格好?」
姿を見せたミイニャは、安物の僧侶服を着て、モフモフの空色の帽子をかぶっていた。
「形から入るのは大事です。似合いますか?」
くるりと一回転。なんで黒タイツを……
「そりゃあ似合ってるけど、ミイニャは私服で良かったのに。目立つぞ。そしてなんでタイツを?」
「素足は少し寒いので……回復魔法なら覚えていますから安心してくださいね」
「マジで! ほんと僧侶じゃないか。じゃあ大けがもすぐに」
「いえ、治せるのは数ミリ単位の傷だけです。しかもそれしか出来ません!」
すごい自慢げに、自慢できないことを言うなあ。
「絶対に前に出るなよ! 俺に助けてもらおうとか思って自ら攻撃射程に飛び込むとかしても、状況次第で間に合わないからな」
「……行きましょう」
ミイニャはえっ、そうなんですか! て顔を一瞬して、カフェのドアへと向かう。
くぎを刺しておかないとやりかねないからな。超最弱回復魔法のみじゃ戦闘には参加させられない。うんのよさステータスだけでその場にいてくれさえすればいい。
マアニャもそのつもりだろ。
☆ ★ ☆
「思うんですけど、お姉ちゃんだけ助けてもらって、守ってもらうのはズルくないですか?」
ウオーミングアップをかねて軽く走りながら城の方へと向かっている。
婚姻式は代々城で開かれるらしい。
ミイニャは俺を見て、ぷくぅっと顔を膨らませた。
「おいおい、ミイニャが俺に命じたんだろ」
「そうですよ。大切なお姉ちゃんですし……でも、優斗君は立場が逆なら私にも同じように行動してくれるんでしょうか? 私がお姉ちゃんの立場だったら背を向けたりしませんか?」
「当たり前だろ。同じように協力するさ。俺は2人の召使いで、この2ヶ月ずっと傍にいただろ。感謝してるんだぜ、幸せだったからな」
「……じゃあもっと幸せになってください」
「ああ。その為にも身近な不幸は絶対に回避する」
これは正しい選択だ。女の子の頼みを聞けない男の子は男じゃない!




