第43話「地獄から覚めたら、可愛い天使がそこにいた」
それから半年が過ぎてもスキルは進化せず……
「やっぱババアって呼ぶぞ」
「所持してんのはお前だ馬鹿! 1年半も付き合ってやってんのになんてざまだ」
「……お姉さんの言葉は、マジでぐさぐさと心に突きささる。もうちょっと優しくできねえのかよ?」
「甘えんな! 仕方ねえ。このままじゃ埒があかねえからな……もし死なれたら後味わりいな」
「なんだよ? 何か手が他にもあるならやるよ」
「ほんとに死ぬかもしれねえぞ。今のお前でも……でもこれしかスキル進化の可能性はない」
「もう1年半も死線をくぐってきたんだ。どっちにしろ不幸なら……やるしかない」
「よし……今からあたしの幸せスキルをちょっとだけお前に貸してやる。借りている間に、お前の外れ不幸スキルを自力で進化させろ。前にも言ったが、その外れ不幸スキルは影響力がデカすぎる。あたしのスキルはすぐ飲み込まれるかもしれない。やれるのはほんの一瞬だ。あたしのスキルを飲み込まれでもしたら、殺すぞ!」
「……どうやって自力で進化させるんだよ?」
「あたしの当たり幸運スキルで、一瞬幸せを見せてやる。その幸せをお前自身で肥大させて、てめえの不幸スキルを打ち負かせ。想像しろ、そうありたいと願え! もともとユニークスキルだ。感情の影響を受けやすい。負の感情に囚われるな。ネガティブは要らない。いるのはポジティブ思考のみだ。ここまで耐えてきたお前なら出来ると信じてるぜ。飲み込まれたら死ぬぞ……だから絶対に死ぬんじゃねえぞ」
「うん……」
「いいか、やるぞ」
目隠し状態だから、ただ頷くしかないが、
「ありがとう」
たしか俺はそう言った。お前なら出来ると信じてるぜ、絶対に死ぬんじゃねえぞ。ってその言葉が少しうれしかったんだ。
ずっと優しい言葉なんてかけてくれたことなんてなかった。信頼してくれてるとも思ってなかったから……その瞬間によくわからないけど、俺は幸せになれると本気で思ったんだ。
☆ ★ ☆
そうか、顔を覚えていないのは見ていないからだったのかもしれないな。
あの2年が俺にとって地獄だったのは確かだが、だからこそこうして俺はここにいられるのも事実。
目を開けると涙があふれて来ていた。死ぬんじゃねえぞと言われたあの瞬間と同じように。
「泣いているんですか?」
ミイニャが俺の顔を覗き込む。
「いや……ちょっとつらい2年間の1部を夢で見てさ。カッコ悪いとこ見られたな」
俺は涙をごしごし擦り立ち上がる。
午前6時半。今日は邸での召使いの仕事は初めてお休みなんだ。
「カッコいいですよ、いつでも……お姉ちゃんの言ったことはわかりましたか?」
着替え始めた俺にミイニャは尋ねてくる。
「いや寝る前に考えてみたけどな。さっぱりだった」
「では一つヒントを……お姉ちゃんは恥ずかしがり屋です」
それがヒント?




