第42話「外れ不幸スキルで地獄を見ています」
[その人とは絶対に視線を合わせてはならない]
[その人には絶対に生身で触れてはならない]
[その人には絶対に殺されてはならない]
外れ不幸スキル【すれ違い】
俺の持っているユニークスキルを見て、最初のころお姉さんは心底笑っていた気がする。
初対面時からすでに1年が経過し、
「ああ、こりゃあダメだわ、あんた。進化の兆しさえない。うんのよさ低っ。外れスキルで後退してんだな。絶対この世界で幸せになれない」
俺は目隠しをされ視界を奪われている。それでもこの女の人が手を前に出し、どうやってか俺のステータス情報を閲覧したのはわかった。
「はっ……何言ってんだ、ババア。この1年のお前との生活が地獄で不幸だ。だから俺は絶対幸せになるんだって気持ちがさらに増した! 手助けしろ!」
日は暮れていて、肌寒い風が体を冷やす。ここは一体どこなんだろ?
山奥か、深い森の中か? この目の前の人いがいいない、最悪な場所。ゆっくりとお風呂に入ることもふかふかのお布団で寝ることも許されない。
「このままじゃなれねえって言ってんだよ!」
「俺は過去の記憶がないが、たぶん前の世界でも幸せじゃなかったと思う。だからこんな世界にいるし、目の前にお前みたいなのしかいないんだよ」
「視線上げんじゃねえ、ババア言うな、みたいなのとか言ってんじゃねえ」
続けざまに無抵抗な俺をババアは3度木刀で殴り、
「よけろ、のろま」
と、罵声を浴びせられる。やっぱ不幸だ。
「言ったろ。今のお前と視線合わせたら、あたしまで不幸になるんだよ」
「だったら、なってもらおうじゃねえか」
俺はもう完全投げやりで、されていた目隠しを強引に、包帯された手で取ろうとした。
目隠しに触れる前に皮手袋をした手に俺の手首を掴まれ、羽交い絞めにされ、動きを封じられる。
「馬鹿野郎が! すぐ頭に血を上らせやがって。それがお前の最大の欠点だっていうのがわかんねえのか」
「上らしたのはお前だ!」
「静かにしろ。魔物が寄って来るだろ。ただでさえ不幸纏ってんだからな。手のかかるガキだ……ちっ、思ってたよりもずっと厄介だな。お前の外れ不幸スキル……あたしの当たり幸福スキルより影響力がでかくて、その状態でやっと五分ってとこだぜ。視覚も触覚も奪ってんのにな」
「お前が少し我慢すれば大丈夫みたいに言ったんだろ。こんな目隠し状態で剣術とか死ぬわ!……スキルのことに関しちゃ俺は能無しだ。頼むから、なんとかしてくれ。お姉さんって呼ぶから」
「そう呼ぶのが当然なんだよ! まずお前、危機感が絶対的に足りてねえ。外れ不幸スキルの力が強くても、それを上回る強さと精神でまず抑え込めって何度いえばわかるんだよ」
「こっちはやってるつもりなんだよ。強くだってなってんだろうが」
「だいぶマシにはなったが、まだ痣があるだろ」
体中にある。最初より数は少なくなってはきているが。
「当たり前だ。あんたが強すぎなんだよ! 最初のころはマジで死ぬかと思った」
「限界っていうのは、死ぬ気で引き出すもんなんだよ。あたしとのこの今に感謝するときが来ればと思って心を鬼にして鍛えてやってのがわからねえのか! おまけのスキルの方はすでに覚醒させてんだからよ。もう少しギア上げてやるぜ」
これ以上ギアを上げる=死ぬ……くそったれ!
「どっにしろ、お前のは戦闘用のスキルじゃねえんだから、おまけスキルをさらに極めて、限界超えて強くなんなきゃお前の言う幸せに、お前は絶対になれねえんだ。あと半年鍛えて、もし生きてて、それでも進化の兆しが見えねえなら別の手段を取る」




