第39話「よかったでしょ?」
「なに、そんなにあたしが婚姻しちゃうのいや?」
物凄い笑顔で、からかうように聞かれる。
「……そりゃあ嫌だろ……相手がどうしても敵わねえ奴ならあきらめもつくし、いい奴なら任せられるけど、そのザビア家のはそうじゃなさそうだし」
「あんたさ、自分で言ってて気づいてるの? それってあたしにプロポーズしてるみたいなもんじゃん」
「……はっ?」
俺は盛大にぽかーんと口を開けた。
「つまりあんたはあたしが大好きで誰にも渡したくないんでしょ。素直にそういえばいいのに……」
「完全否定するつもりはないが……まだそれを言うのは早いし、俺は……ここに何をしにきたのかわからない」
「はあ~、男の子らしくないわね。せっかくキスしてあげたのに。まあこっちも婚姻を控えている身だし、告られたりしても困るんだけどさ」
何か言い方がむっとするなあ。
「告白……してやろうか?」
「調子に乗るんじゃないわよ、召使い。気持ちが入ってないそんなもの聞くに堪えない……それに今あんたの頭の中はあたしの婚姻問題でいっぱいなんでしょ? やべえ、取られちゃうとか思ってんじゃん」
「かもな」
「いつもと違って本音かどうかわかりづらいわね。じゃあ後もう一つだけ話してあげる。闇の教団は知ってる?」
「少しだけ。悪人の組織みたいなもんだろ。それがなに?」
「団長……あっ、グランドじゃなくて今不在の団長が教団の1人を倒してるのよ。それで……」
「それで何?」
「……あんたバカだから言ってもわかんないわ……もういいから、仕事に戻りなさい」
中途半端なところで切り上げるのかよ。
しっ、しっ、と邪険にされたので、仕方がないので部屋を出ようとマアニャに背を向けると、
「あっ、良かったでしょ。あたしのキスは?」
少し前の感触が蘇り、なんとも言えない嬉しさとドキドキをまた思い出した。
「……まあまあ……」
「まあまあ……蕩けたとか、もう一度したいとか……褒めてあたしを喜ばせようとか思わないわけ! せっかくのファーストキスを何だと思ってんのよ!」
いつも通り怒鳴られて、俺は書物庫を出て行く。
「優斗、ここにいたか。どうした、顔が赤いぞ……」
書物保管庫を出ると、イケメン騎士がまた話しかけてきた。
「どうやら今俺はついているみたいだ。舞い上がるのを抑えてるんだよ……それよりなんだよ、話ならもう聞いただろ」
「ちょっと頼みがあってね」
グランドは心底真面目顔に。
ずるいな、イケメン。その顔で告られでもしたらグラっと気持ちが傾いちまうんじゃないか、女の子はさ。




