第37話「マアニャのターン・あたしのが不味いわけないでしょ!」
クレアに2人きりは気を付けろと散々くぎを刺され、今俺はその部屋の前に来た。
書物保管庫。
俺はこの部屋が結構好きだったりする。本の匂いが好きと言うか、本棚に本が埋め尽くされているその光景は見ていて何か安心するのだ。数百、数千、いや数万冊もの書物が保管された場所。
たまに整理を頼まれたりしていたし、昨日はマアニャと……まあここに悪い思い出はないな。
一度、何か読んでみようと思って近場の本のページを捲ってみたが、俺には難しすぎてまるで分らなかったので、それ以来手に取っていない。
脅かしてやろうかと、ノックをせずにドアをなるべく音を立てずに引く。この時点で召使い失格だが気にしない。
ドア付近から見て、姿は見えないな。
奥に進んで行くと、マアニャは脚立に足をかけ、最上部にある本に手を伸ばしているところだった。
下から見上げると……
「パンツ見えそう」
つい口に出てしまった。
「えっ?」
こっちを見て、バランスを崩してマアニャの体は宙に浮く。
俺は冷静で、落下地点を読んで落ちてくる彼女が怪我をしないように抱きしめたが、勢いで床にそのまま倒れ、少し背中を打った。あと床に積みあがっていた本が少し崩れた。
「いててて……」
「大丈夫? ケガしてない?」
意外にもマアニャは慌てた様子で、俺の体を心配してくれる。
てゆうか、馬乗りされてて動けない。
「そっちは? 召使いの心配なんかしなくていいんだよ」
「平気。言っとくけど、あんたがいきなり声かけたのがイケないんだからね! パンツ見えそうとか……幼児じゃん」
「わかってるよ。どいてくれ、動けん」
「ほんとに痛いところはないのね?」
「ああ。頭は打たないようにしたから」
「ふっ、なら……」
マアニャは俺の両手首を動かないように押さえる。
……何か昨日もこんなことが……
「あんたがそんなに欲しいって言うんなら、特別にあげるわよ! 目閉じると、また笑っちゃいそうだから開けたままでいなさい! あと抵抗したら殺すから!」
「いや、でもさっき俺から言っておいてなんだけど、まずく……」
「はあ、何言ってんの! あたしのキスが不味いわけないでしょ!」
そういう意味で言ったんじゃない!
抵抗する間もなく、ゆっくりじゃない、素早くさっと唇を塞がれ、ちょうどいい間でマアニャは立ち上がり、俺は解放された。
柔らかい口だなあ……ミイニャにまたバレたら、今度こそ殺されてしまうのでは……
マアニャに上書きされたとは口が裂けても言えないな。
「言っとくけど、あたしは勢いとか、自分の気持ちを偽ったりして、今みたいなことはしないから。覚えておきなさい!」
俺から視線をぷいっと逸らし、顔を紅くして偉そうなことを言う。
ちょっとデレてますね……覚醒したスキルのおかげで生きていてよかったとは思うけど……この先、大丈夫かな……




