第35話「過去に起きた出来事について」
「ふう……私も小さかったので、記憶が曖昧なのですが……その日1人の女性が訪ねてきました。20代だと思います。綺麗な人で……邸に招き入れ、両親が戻ってくるまで私たちでお相手をしたんです。カードゲームをして、たわいない話をしたのだと思います。数時間して、両親が城から戻ってきました。二人は彼女と知り合いみたいで、訪問してくれたことを喜んでいた……と思います。少なくとも小さな私はそう思いました。夕食を終えると、大人だけで話がしたいからと、子供の私たち3人は自分の部屋へと戻りました」
ミイニャは少し疲弊した表情でこっちを見る。嫌な記憶を掘り起こさせてしまっているが、マアニャやミイニャについての過去を俺は知らなすぎる。ここらでちゃんと教えておいてもらいたいからなあ。
「その女っていうのが、俺が知っている。2年も一緒に居たあの人なんだな?」
「ええ。匂いがするので間違いはないかと」
「うんのよさの他にも、嗅覚も獣並みに鋭いんだな……」
「少し違うと思います。私たち3人は夜10時には休みました。大人たちは遊戯室で遊んでいたんだと思います。声は聞いていますから。翌日、いつも起こしに来るはずの母が部屋に来ないので、私とお姉ちゃんは着替えて自分たちの部屋を出ました」
「ちょっと待った! お姉ちゃんっていうのはマアニャのことか?」
「ええ。サーシア姉さまは別部屋です」
「それからバートンさんはどうしたんだ? そのころも執事だったんだろ?」
「バートンはその日は不在です。数日前からぎっくり腰で近くの村で静養していたんです」
ぎっくり腰……
「そうか……続けてくれ」
「そのころ働いていた召使いは女性2名。私たちが下に降りていくと、酷く慌てた様子で……どうしたの? と尋ねたら父と母がどこにもいないと……サーシア姉さまも降りてきて、騎士団員も総動員で探しました」
「見つからなかったのか?」
「いえ……父と母の姿は城に……」
ミイニャは下を向いて、両手をぎゅっと握り締める。
「思い出させてごめんな。でも、最後まで聞かせてくれ。頼む」
俺はミイニャの手を軽く握った。
「ええ……父と母はアイルコットン城の地下にいました。氷漬けにされて……」
「氷漬け?」
「決して溶けず、溶かせない呪い。禁忌術なのだそうです。今まで呪いの専門家や名のある僧侶がアイルコットンを訪れ、呪いを解こうとしましたが、誰も解除できていません」
「てことは、生きてるのか?」
「はい。ただ動くことも出来ず反応も出来ませんけど……私もお姉ちゃんもあれ以来、たまにお城に2人を見に行く程度で、長居することは無くなり、城に居た騎士団は邸の方で訓練などしているようです。たまにお姉ちゃんがクレアに掃除を頼んでいるみたいですけどね」
それでクレアは城で俺を見つけてくれたのか……
「確かにその話だけ聞くと、訪ねてきたお姉さんは一番怪しいな……あの人の顔も呪いなんてできたかも思い出せないのは、申し訳ない限りだけど……けどなあ……」
「なにか?」
「いや、俺をここに飛ばしたのはお姉さんだ。それは確定要素。もし自分が呪いをかけた張本人だとして、俺をなんでここに飛ばしたんだ?」
「私もおかしいなと感じて来ています。優斗君は間違いなく善人ですから」
「その時に邸に居たのは、マアニャとミイニャ、それにサーシアってお姉さん。それとご両親とあの人だけか? クレアみたいに召使いは寝泊まりしていなかったのか?」
「召使いは近くに泊まり部屋が別にあったので、私たちだけです」
「騎士団は? 自由に出入りできるんだろ?」
「いえ、それは昼間だけで夜に顔を見るとすれば団長くらいです」
「団長か……まだ会ってないからな。その呪いだけどさ、どうして術者はミイニャのご両親にかけたんだろ?」
「わかりません。何か都合が悪かったと考えるのが普通かと……あとはお姉ちゃんに補足してもらってください。私から呪いの話を聞いたと言っていただいて大丈夫です」
「ああ。そうするよ。その呪いだけどさ、解く方法はほんとにわからないのか?」
「かけた本人なら解除は可能だと思いますが……あの女の人もあれからずっと捜していますが、情報すらなかった始末です。優斗君が現れるまでは」
「俺も都合の悪いところは何にも覚えてないからな。どっかの人気のない山奥にいたとしかいえないし。とにかくまずはザビア家との婚姻をなんとかしよう。明日、マアニャと話をしてみる」
ミイニャは鋭い視線をこっちに向け、
「……二人きりを良いことに、エロいことはダメですからね!」
「はい……」
マアニャにそんなこと出来るわけがないだろ。
異世界には外れスキル【すれ違い】とおまけスキル【両利き】を覚醒させて~俺は双子姉妹の召使い(スローライフ)から成りあがる~の番外編を別投稿しました。ミイニャとマアニャ、クレア視点を少しだけ書く予定です。読んでいただければ嬉しいです。
https://ncode.syosetu.com/n1930fb/




