第31話「クレアのターン・例のあれです」
玄関前に立ち、認証確認してもらいカギのロックを外してもらう。
もう8時だし、クレアは部屋かな? もしやお風呂かも。
クレアの部屋の前で立ち止まり、軽く2回ノックする。
「はい……」
中からは可愛いクレアの声が。
「優斗だよ。今、ちょっといい?」
少しなかでばたばたしている音が聞こえ、それからドアが静かに開いた。
「ごめんね。ちょっとノート書いてたから、すぐに出られなくて」
例のマル秘ノートかな?
「いや、俺の感覚ではすぐ出て来てくれたよ」
「どうぞ入って……っていうのも可笑しいよね。優君の部屋でもあるし」
この部屋にこの時間にいるのはいつ以来だったか?
ミイニャの命で一緒に住むことになったのは……15日くらい前だったかな。
「久しぶりな気がする、こうやって優君と夜に一緒にいるの」
「俺も同じことを考えていたのだぜ」
「すっかりミイニャ様にも気に入られてたね。でも、クレアの方が先に気に入ったし、クレアが一番優君を好きになっていると思ってるんだけど、本人自覚ある?」
頬をピンク色っぽい赤に染め、クレアは恥ずかしそうな視線で俺を見た。
「……」
まて、マテ、待て……クレアが俺を好き!
「好きって言った?」
「言ったよ。クレアは優君が好き」
ほらみろ! 完全に外れ不幸スキルさようなら。覚醒させればこの通り。2年の地獄は無駄じゃなかった……あれ、プロポーズを待っているとミイニャは言っていたよな……これマズくない?
覚醒しても扱いずらいスキルか……修羅場とか俺、嫌だぜ。
「クレア、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、一夫多妻っていいの?」
「よくないよ。重罪」
おう重罪……やべえじゃないか、これ。
「ちょっと頼みたいことがあって来たんだけど……」
「その前に優君、クレアをどう思ってる?」
「可愛い、綺麗、美人」
「じゃあ好き?」
「好き……」
まずいよ……
「一番好き?」
「突っ込んでいくの?」
「そりゃあ突っ込むでしょ。もう逃がさない」
今のもう~は可愛くないとさえ思ってしまう。
「クレア、俺は召使いだ!」
「クレアも召使いだよ」
ナイスな切り替えし。
「俺、貧乏だから今の俺じゃクレアを幸せにしてあげられない」
「クレアはお金持ってるから、紐になってもいいよ。それにお金で幸せは買えないもん」
なんていい子!
「いやヒモはさすがにカッコ悪い」
「優君の良妻にクレアはなる!」
そんな何かのフレーズみたいに言って貰っても……可愛いけど。
「ごめん。男らしくないのはわかっているけど、少し保留させてくれないか? その間にクレアがもっと俺をちゃんと見て判断してくれ」
「じゃあ眼を閉じて。保留してあげる代わりに、一つ言っていたことする」
なんのことだかピンときた。
「例のあれですか?」
「そっ。優君がしてくれって言ったようなもんでしょ」
ミイニャとは違い、抱き合うようにして口にチュとしました……
どんどんと泥沼に足を踏み入れている気がしてならない。




